jams_business
未分類

第3回 善木 麻依子 氏 日本政府観光局シドニー事務所次長

 

日本政府観光局(JNTO)はインバウンド(訪日外国人旅行者誘致)の専門機関として海外14都市に事務所を設置し、訪日旅行の促進をはじめ、旅行会社・メディアとの連携、現地のマーケティング情報の収集・分析と情報発信を行なっている。善木麻依子(ぜんき・まいこ)氏は、東京都出身で、JNTOに2009年に入社。初めての海外駐在がオーストラリアで、2012年4月からJNTOシドニー事務所次長として駐在。2016年3月の帰国を前に、4年間の駐在生活を振り返ってもらった。

初めてのことばかりで赴任当初は大変でした

父親の仕事の関係で小さい頃にスペインに住んでいて、帰国子女です。当時は日本のことを知らない人が多く、日本のことを知ってもらいたいと思っていました。バルセロナオリンピック当時にスペインに6年間、イタリアにも少し住んでいました。オーストラリアとは違う魅力がありましたね。

オーストラリアはもちろん、南半球にも行ったことがなく、海外駐在の希望としては太陽がある国ということを言っていましたが、オーストラリアはまったく予想外でした。これまでヨーロッパにしか住んだことがなく、両親がアメリカに行っていたので、私としてはヨーロッパかアメリカと思っていました。オーストラリアに来て結果的によかったのですが、当時はオペラハウスやウルルなど観光のイメージしかありませんでした。

 

海外事務所では、人事から会計、総務などすべてしなければいけないので、日本にいたときより大変です。メインの仕事は日本の観光プロモーションなのですが、その前にオーストラリアでの生活の基盤をしっかりすることはもちろん、オーストラリア市場について知ること、プロモーションを行なっていくうえでの会計や労務など初めてのことばかりで、とにかく赴任当初は大変でした。

過去最高のオーストラリア人訪日客

2015年はオーストラリア人訪日客が過去最高の37万6200人でした。オーストラリアは口コミ文化なので、こちらから発信すればするほど情報が拡がって、結果につながっているのかなと思います。オーストラリア人訪日客の特徴は、90%がFITと呼ばれる個人旅行ですが、欧米諸国はビジネス客が中心なんです。その意味では一般観光が多いということで、JNTOが意識する英語圏ではオーストラリアは有望な国です。

 

2020年までに2000万人の訪日客の受け入れという目標を掲げていましたが、2015年に1973万7400人を達成し、想定以上の伸びです。ところが訪日客の大半が大都市圏に集中しているため、東京、京都、大阪などは100%以上の宿泊率ですが、他の地方都市ではそこまで達していません。これからはオーストラリア人にも地方の魅力を知ってもらい、ゴールデンルート(東京=大阪=京都)から足を伸ばして、地方への誘客、地方での受け入れ体制を高めていけたらと思います。

 

また、日本の魅力は四季折々の美しさだと思うので、グリーンシーズンに出かけてもらいたいですし、紅葉のシーズンとか、もっと色々な季節の魅力を知ってもらいたいです。オーストラリアはどこに行っても同じような観光魅力や食べ物が多いので、日本の四季の違いや地方の魅力、食文化の違いなど多様で豊かな文化を伝えたいですね。北は北海道から南は沖縄まで、本当に多様な魅力があります。例えばスキーをしたあと沖縄に行ってダイビングをすることも可能ですし。

 

オーストラリア人観光客は消費意欲も高くて、一番お金を使うのは食事や宿泊ですが、他の国の方に比べて多いですし、滞在日数も多く平均2週間です。それに「ノーウォーリー」で済ますことが多いので、非常に扱いやすいお客さんですね。文句も少ないですし、小さなことにも素直に喜んでくれますので、本当に優良顧客です。日本人のおもてなしなどホスピタリティーを喜んでもらえるのが魅力ですね。それにオーストラリア人は基本的に朗らかで優しい人たちですので、ギスギスしていないところが仕事をするうえでもやり易いです。

心に残る青い海と青い空、そして人との出会い

こちらでゴルフを始めましたが、近くにきれいなゴルフ場があり、それも安価で楽しめるのはよいですね。それに近場でシュノーケリングが楽しめてきれいな海を楽しむこともできます。とにかく海がきれいなところがよいですね。やはりオーストラリアは海が素敵です。

 

釣りに行くことが何度かあったのですが、釣ったお魚をその夜に調理して食べたのは初めてで、日本ではそんなことをしたことがなかったので、より自然にアクティビティが楽しめる国だと思いました。自然体でいられるオーストラリアは本当に素敵だなと思います。

日本では同じ職場や同じ大学の人としかコミュニティーができないのですが、こちらでは日本では出会えないようなさまざまな方と出会うことができました。色々な企業や年齢の方と知り合いになれて、さまざまな考えを持つ方と知り会えて、すごくよかったと思います。

色々な国の料理が楽しめるのもオーストラリアの魅力のひとつだと思います。日本だと外食といえば和食やイタリアンなど決まったものになりがちですが、こちらでは本当に色々なものが楽しめますね。食マインドが満たされます。多文化、多民族の国オーストラリアの特長ですね。

オージー流ワークライフバランスを大切にしたい

幼少期に住んでいたスペインやイタリアも同じですが、オーストラリアのワークライフバランスは大切にしたいなと思います。自分自身できていたとは残念ながら言い切れないのですが、仕事もしっかりやり、定時には会社を出て、夏であれば海にいったり、美味しいご飯を食べたり、運動したり、家族との時間に費やしたり、など人間らしい生き方が大事だなと当たり前のようですが強く感じた4年間でした。

オーストラリアの場合ご家族で赴任されると、きれいな景色だとか、おいしい食事とか、同じ時間を共有できると本当に最高だと思います。小さいお子さんがいる場合は子育てにとってもよいですし、オーストラリアで「豊かな人生の過ごし方」を学んだ思いがします。

オーストラリアは男女差別があまりなく、男女問わずさまざまな機会が公平に与えられていると思います。また制度設計自体がそうなのかもしれませんが、女性が活躍できるように企業のバックアップもすごくあり、産休や育休もとりやすく、その点オーストラリアは結構、寛容だと感じます。

日本の魅力もJNTOも、もっと日本人に知ってもらいたい

日々思うことですが、オーストラリアの政府観光局であるTourism Australiaは、オーストラリア人にかなり認知度が高いと感じています。それに比べて日本人の方の間で日本政府観光局(JNTO)はまだあまり知られていないように感じるのですが、日本はこれからもっともっと外国の方を受け入れていかなければと思いますし、その際に真っ先にJNTOが思い浮かぶような組織になれればと思います。オーストラリアに来られる日本人観光客のための組織と思われている方もいますので、JNTOをもっと知ってほしいですね。

日本は経済大国と言われても観光ではまだまだ低いレベルですし、もったいないと思います。日本の地方に住む方には、外国の方にご自分の地域の魅力を知ってもらいたいという意識をもっと持っていただきたいです。わたし自身、日本に住んでいたときよりも海外に住むようになって日本の良さをさらに知るようになりました。日本にずっと住んでいる方が周りの風景や日常の暮らしを当たり前に感じてしまっていて、その魅力に気づいていない方が多いと思うんです。そのためにこちらからオープンマインドしていくことが必要だと感じています。

日本に帰国したら…

日本に帰国したら、真っ先に温泉に入りたいですね。お湯につかって身体をほぐしたいですし、追い炊きしたいですね。お湯をためるだけのバスタブでは満足できません。あと、おいしいお寿司を食べたいですね。

次の海外は…いつかは自分が住んでいたことのあるスペインやイタリアに行って、その国の人と触れ合いたいと思っています。でも、東南アジアの国々もチャレンジングで面白みがありますね。次回の赴任先がどこになるのか、楽しみにしています。

連載『オーストラリア駐在員物語』の過去記事一覧はこちら
>>https://www.jams.tv/author/jams_businessをクリック

この記事をシェアする

この投稿者の記事一覧

概要・お問い合わせ

その他の記事はこちら