日系コミュニティ

日本人として、女性として、自分にしかできないサポートを待つ人のために奮闘する毎日、ベリー佳子さん(QLD州警察 シニアポリスリエゾンオフィサー)

2007年、クイーンズランド州で初の日本人ポリスリエゾンオフィサーになったベリー佳子さんは現在、ケアンズの交番に勤務するシニアポリスリエゾンオフィサー。

明るい人柄で何よりもコミュニケーションを大切にする彼女のもとには、短期滞在者から永住者まで多くの日本人たちからの相談が寄せられる。

アジア人としての苦労にも直面しながら、日本人として、女性として、奮闘する毎日。彼女にしかできなサポートを待っている人たちのために今日も彼女は奮闘し続ける。

 

日本からアメリカ、そしてオーストラリアへと移住

父は、日系アメリカ人、母は日本人です。日本で生まれてすぐに、父の仕事の関係でアメリカに渡りました。学生の頃に初めて旅行でメルボルンに来たのですが、そのとき日本とオーストラリアの間でワーキングホリデーの制度があることを知って。アメリカに帰って学生生活を終えてから、日本でワーキングホリデービザを取ってケアンズに来ました。ケアンズでは、通訳の仕事をしながらビザを更新して、そのうちにオーストラリア人の男性と結婚、離婚を経験。日系旅行会社に勤務したあと、2007年に警察に入署しました。

 

2007年、クイーンズランド州初の日本人ポリスリエゾンオフィサーが誕生

日系旅行会社ではとてもお世話になったのですが、もっと先を長く見ていける仕事が他にあるのでは、とだんだん考えるようになって、それで何がいいんだろうと思ったときに軍関係の方に行きたいのかなと考えるようになったんです。父が軍に勤めていたので、制服を着ている人が身近にいる環境だったこともあって、自然と頭に浮かんだ感じだったと思います。軍か州警察かでずいぶん悩んで、実際に軍の入隊テストも受けたりしました。でも、ちょうどそのときに州警察で日本語を話せる人を募集するというのを聞いて、州警察の方により興味が向いていきました。

2007年当時、クイーンズランド最北部(ケアンズを中心とするカードウェルから木曜島のエリア)の地域には、日本語が喋れる人が州警察にはいなかったんです。当時のケアンズの日本人永住者は3000人弱くらい。ケアンズという小さな街に3000人というとわりと大きな人数なんです。短期滞在者の方を含めるともっと多くなりますし。犯罪に関わっている人数が多いということではないのですが、やはりニーズがあるということだったんだと思います。

 

日課のパトロールでは、多くの人と触れ合う機会がたくさん!

ケアンズの「Cairns Esplanade City Police Beat」という総勢25人のちょっと大きめな交番に勤めています。徒歩以外に、車や自転車、ATV(四輪バギー)、セグウェイなど、いろいろなものを使って管轄地域であるケアンズ市内を警邏(けいら)します。

夜になると酔っぱらいや薬物乱用者もいますが、観光地なので日中はいろんな人と会えたりして楽しいですよ。歩いたりすると「いっしょに写真を撮ってください」と言われたり。道を教えたりすると、ツアーガイドのような感覚になります。他の警察署にくらべて多くの方と触れ合う機会がすごく多いので、それもあってここの勤務になったんだと思います。

 

日本人だからこそ任せられた特別な業務

一般業務にプラスして、日本語ができるということで、語学学校や大学で行なわれる安全についてのオリエンテーションも担当しています。これは日本人だけではなく、海外から来ている学生さんたちも全部ひっくるめたオリエンテーションです。それから病院からヘルプが必要であれば呼ばれます。残念ながら犯罪に巻き込まれてケガをしてしまった人たちで日本語が必要であれば協力します。

2014年にはすごく貴重なお仕事をさせてもらいました。木曜島には60年、70年代にたくさんの日本人が住んでいて、厳しい仕事で亡くなられた日本人を埋葬した300以上ものお墓があります。5年に一度、遺族会の人たちが木曜島に来るのですが、日本人の警察官がいることを耳にした木曜島の市長さんからお話をいただき、遺族会の方たちに同行して安全面のケアや通訳をしました。

木曜島の市長さんは「僕たちにとっても大切な木曜島の歴史のひとつだから」と、日本のことをとても大切に考えてくださっているんです。市長さんの奥さんが日系で、その奥さんのおじいちゃんが木曜島生まれだということもあるようです。体全体で「あぁ、オーストラリアはこんなにも日本のことを大切に思ってくれているんだ」と実感して、涙が止まらない一瞬がありました。この仕事をしていてよかったと思う、一生忘れられない仕事になりました。

 

日本語でのサポートを必要とする、他州からの連絡も歓迎!

警察にちょっと聞いてみたいなと思うことがあったら、ためらわずに聞いてみるのがいいと思います。州が違えば法律も違ってきますから、自分の住んでいる州の警察に聞くのが一番だと思います。でも、もしどうしても日本語で聞きたいことがあったら、他州からでも私に連絡していただいて構いません。他州の場合は、州法律が違うので答えられないこともありますが、その点をご承知いただければ、対応させていただきます。お電話でご連絡いただいたものに関しては、留守にしている場合もありますが連絡先を残していただければ必ずご返信しますので、ご遠慮なくお問い合わせください。

日本は世界的に見て安全な国です。でも、その日本の感覚のまま行動することで狙われやすくなりますね。例えば現金を持っていることをあからさまにしないなどの注意は必要です。「郷に入っては郷に従え」、ここは日本ではなく海外だから違うという認識が大切ということだと思います。

 

日本人女性警察官だからこそできるサポート

家庭内暴力は人種に関係なく、オーストラリア中で大きな問題になっています。もし問題に直面しているなら自分の心の殻のなかに閉じこもっているのが一番よくないことです。まずは友達や警察など、誰かに話してみてください。

「NOといえない日本人」という表現がありますよね。でも、”NO”と言う事は失礼なことではない、言ってもいいんだよと、状況にあわせながらお伝えしています。永住して長い方も言えないで我慢している方がたくさんいるんです。そういった人も、私でよければ話をしに来てください。女性の方が話しやすいこともあるかと思いますので。警察では対応できないケースであっても、問題を解決してくれる適切な機関をアドバイスできると思うので。緊急でなければEメールでもどうぞ。

 

奮い立たせるのは「あなただからこそできることがある」という声

苦労は毎日あります。アジア人だから、女性だからと甘く見られて、ターゲットになりやすいですね。酔っぱらった人たちに「お前ここで生まれてないだろ」と言われたりもします。勤務中であれば、’相手も酔っぱらいだから’と真剣に考えないようにはしますが、やっぱり嫌ですよね。

楽しいことは、みなさんとお話しすることですね。長く永住している大先輩の方々に「あなたがいるから警察を頼りにしてくれる人たちもいると思うから、がんばりなさい」って言われると「もっとがんばろう」と思います。

 

多忙ながらもしっかりと仕事と私生活を両立

仕事と私生活の切り替えは大切です。

たまに緊急事態が発生して出動要請がきたりもしますが、不思議なもので仕事とプライベートもちゃちゃっと切り替えられるタイプなので、あまり大変だと思ったことはありません。

オフの日は、もともと好きだったフィットネスをしています。体を動かすのはすごく大切だと思うし、やっぱり自分の自信につながると思うんです。力がない、走るのが遅いなどと思われないようにすることが、同僚の安全にもつながるので。同僚は私がアジア人だからと特別扱いはしませんが、(ケアンズには)アジア人警察官は私を含めて3人しかいないので良くも悪くも目立ってしまいます(笑)。

 

それぞれのニーズに合わせた犯罪防止活動を

もっとみなさんの力になれるように、いろんなところに行ってみなさんにお会いできるようにしたいです。電話やメールではなく、直接顔を見てお会いするのは本当に違うと思うんです。場所が変わればニーズも変わりますから、みなさんのニーズに合わせた犯罪防止活動をしていきたいですね。

 

 

ベリー佳子/シニアポリスリエゾンオフィサー

クイーンズランド州初の日本人シニアポリスリエゾンオフィサー。生まれてすぐに家族でアメリカに移住して、20代で来豪する。2007年にクイーンズランド州警察に入署。現在はケアンズのエスプラネード地区の交番(Cairns Esplanade City Police Beat)に勤務している。

 

他州からの問い合わせも受付中

■電話番号:(07) 4048-1277

■Email:Keiko.Berry@police.qld.gov.com

 

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