今回JAMSスタッフが行ってきたのは、シドニータウンホール駅から徒歩2分のところにある、Metro Physiotherapy and Injury Clinic(メトロフィジオセラピー)。
中に通されると、日本の小物もかざられ簡素ながらもなつかしい、そしておしゃれな雰囲気~
そして登場したのが、メトロフィジオセラピーの奥谷(おくたに)先生。
過去にも取材させて頂きおなじみですが、今回は施術の取材ではなく、そもそもフィジオセラピーとはなにか?ということを含めてお話を伺いました。
過去の取材記事はこちら!
あなたのアゴは大丈夫!? “コキッ”と音がする人は必見です。
◆ひろ~い分野で活躍するフィジオセラピスト
JAMSスタッフ: さっそくですが、フィジオセラピストって、どんなことをするのですか?
奥谷先 生: 日本では「理学療法士」、オーストラリアでは「フィジオセラピスト」とよばれています。フィジオセラピストは、体の痛みや、さまざまな体の悩みを、問診 や体の動きをみながら原因を見極め、診断していきます。
フィジオセラピストが最も活躍しているのは、やはりスポーツ疾患の分野ですね。オーストラリアは特にスポーツが盛んなので、プロのチームから地元のアマチュアのチームまでチームフィジオを持っている事もあります。また、病院ではひざや 股関節のリハビリや、プレリハビリ(手術の前か らトレーニングをすることで筋力を高め、術後の回復を早くするというも の)を主に担当してます。
その他に病院では、骨折など怪我による痛みから、バイ パス手術などによる肺の機能低下に対する呼吸器系 のリハビリがあります。脳卒中な ど神経系疾患のリハビリは、体を動かすこと から始めて、何カ月も患者さんに寄り添っていくということが多いです。
プライベートクリニックでは急性の腰痛や頭痛の治療や、スポーツ障害の治療やリハビリをおこない、筋肉や関節の運動機能を改善していきます。
JAMSスタッフ: つまり、フィジ オセ ラピストは筋肉や骨格系の治療だけではなく、神経系のことまで扱うということですね?
奥谷先生: そうですね。体を動かすためには、神経・筋肉・関節、すべてがうまく噛み合う必要があるんです。体がきちんと機能しないということは、何か原因があるのです。体を動かしつつ、 脳か らの体への信号の伝わり方など見ながら、何が問題なのかを見つけていくんですよ。
日本ではよく「骨盤がずれる」などといいますが、実 際に骨がずれているわけではなく、筋肉 がアンバランスな状態なんですよね。筋肉の左右の張 りが違うと、骨盤が歪んでいるように見えるんです。 長い月日をかけて筋肉がアンバランスになったものを、骨の歪みを治療することで、急に治る、ということはないんですよ。わたしたちフィジオセラピストは、神経、筋肉、骨格、関節すべてのバランスを見ながら、正常な 機能 に回復するように治療していきます。
◆フィジオセラピストを志したきっかけは祖母とオーストラリア
JAMSスタッフ: まず、何がきっ かけでフィジオセラピストに興味を持ったのでしょうか?
奥谷先生: 私が小さいころ、祖母が脳卒中で倒れたんですが、その当時田舎に住ん でい たこともあってちゃんとしたリハビリを受けられなかったんですよね。しばらく入院したあと田舎に戻ったのですが、身体機能は完全には戻っていませんでした。そして、ある日神社の掃除当番がまわってきた んです。その時、まだ歩くのに違和感を感じていた祖母が階段を踏み外して、スネを骨折してしまったんですよ。そこからまた入院の繰り返しで。 リハビリをしなかったことによって、そのあとも色んな怪我をすることになったんです。そこから、リハビリ、そしてリハビリをする「フィジオセラピスト」と いうものに興味を持ちました。
JAMSスタッフ: いま、ここシド ニー で開業されて活躍されているわけですが、どういう流れで「オーストラリア」で「フィジオセラピスト」になられたのでしょうか?
奥谷先生: その頃から「フィジオセラピスト」という職業は知っていたのですが、 「リ ハビリをする人」という認識しかありませんでした。具体的にフィジオセラピストを目指そうと心に決めたのは、オーストラリアに来てからです。 高校からオーストラリアに来ているのですが、ある日、新聞に載っている1枚の写真を見たんです。それはグランドで怪我をしたサッカー選手 の元 に、救急バッグを持ったフィジオセラピストが駆け付けている、という光景でした。自分がサッカーにのめりこんでいたこともあって、大好きなスポーツと、興味があったフィジオセラピストが合致して、これだ!!と。また、オーストラリアはスポーツ大国なので、これからチャンスもある だろ うということで、フィジオセラピストを目指しました。
JAMSスタッフ: では、オーストラリ アのフィジオセラピストは、スポーツ好きが多いのですか?
奥谷先生: そうですね。オリンピックを目指していた人や出場経験者がフィジオ セラ ピストには多いですね。そういうセラピストは、スポーツフォーカスの方が多いかもしれません。
学生時代、サッカーに打ち込む奥谷先生。ポジションはフォワード。
◆真っ暗なトンネルの中にいた学生時代
JAMSスタッフ: オーストラリア で フィジオセラピーの勉強をされたということですが、英語も含めて実際大変じゃなかったですか?
奥谷先生: 問診をして必要な情報を聞き出し、それをもとに診断するわけです が、 ちゃんとした英語を使えないと、それが患者さんに伝わってしまい「 この人に治療を任せて大丈夫?」といった不安を抱かせてしまいます。患者さんに不安があると、治療もうまくいかなくなってしまうんですよね。 会話できる程度ではなく、 しっかり患者さんから情報を引き出してを理解してあげるというレベルまで英語力を上げるよう努力しました。
シドニー大学の卒業式。苦労もあったが最後は笑顔で!
JAMSスタッフ: JAMSユー ザーの中にも、これから英語を頑張っていこうという人もいると思うのですが、どうやって勉強されたのですか?
奥谷先生: 私はモノマネが好きなので、同僚や先生が使う英語の言い回しをひたすら真似して、だんだんと習得していきましたね(笑)
JAMSスタッフ: たしかに、英語の発音やリズムの勉強に、モノマネはすごく役に立ちそうですね(笑)。それはフィジオだけではなく一般的な英語力を上達させる上でも役立ちそうです!オーストラリアでの学校生活はどうでしたか?
奥谷先生: 学生というのは、筆記テスト・実技テストなど、絶えず評価をうけている ので、タフな状況にいるんですよね。学生の時はずーっと先の見えないくらいトンネルを走り続けているというかんじでした。今思えばよくやった なと思いますね(笑)でも、トンネルの先に、小さな光が見えてからは夢への実現は早かったです。
日本ですでにフィジオセラピストとしての経験があるという方は、日本でやってきたことと比較ができるので、最初は多少英語に慣れていなくてもオーストラリアでは違った学びができるとおもいますよ。
こちらは西シドニー大学の大学院で学んでいた時代。大学院の仲間と。
◆病棟での経験が仕事観を変えた
JAMSスタッフ: 学生のあとは、実際にオーストラリアの病院で働かれたのでしょうか?
奥谷先生: そうですね。インターンを終えて、プライベートクリニックで1年間勤めたあと、セント・ビンセント病院で働きました。数か月ごとに整形外科から心臓移植後のリハビリ、脳卒中などの神経リハビリ、老人病棟など、色々な病棟を経験するのですが、緩和ケア病棟での経験が、私の「フィジオセラピスト」の仕事観を変えましたね。
JAMSスタッフ: 緩和ケア病棟というのは?
奥谷先生: 主に、ガンによる痛みや吐き気、心の苦しさを緩和する病棟です。ここでは、 痛み緩和できる範囲で運動をしたり、ベッドからトイレに歩けるようリハビリしたり、ということをしていました。今までは「人の命を助ける」という観点から医療に携わってきましたが、ここでは、「心地いい人生の最後をすごすために」とうことで患者さんに接してきました。まったく逆の医療を経験したことで、今のフィジオセラピストとしての幅が広がったと思います。
◆謎に包まれた関節「顎関節」のスペシャリスト?!
JAMSスタッフ: 奥谷先生は、顎関節に特化した知識も豊富だそうですね。
奥谷先生: 顎関節は、【謎の関節】とも言われていたくらいケアが遅れている分野なのですが、トレーニングを受けて特化した専門知識を得ているのはオーストラリアの中で もごく少数だといわれています。顎に悩みが あっても、どこに治療にいったらいいかわからない。いろいろ試したがなかなか症状が良くならず、もう手術しかない、といわれ当院に来院されて治っ た患者さんもいらっしゃいます。顎は関節と筋肉から成り立っているので、筋骨格系を専門とするフィジオセラピーというアプローチで治療することは、理にかなっていると思います。
JAMSスタッフ: 確かに顎に悩みがあっても、どこに相談していいかわからないですよね。手術を避けられるのであれば、それは誰もが願うことです(笑)
奥谷先生: まだ顎関節に関する情報も少ないのが現状で、これから啓蒙に力を 入れ ていきたいと思っています。来月8月、 日本のフィジオセラピストを対象に顎関節の講習会を開く予定なんですよ。
JAMSスタッフ: すばらしいです。他にも今後力を入れていきたいことはありますか。
奥谷先生: 既に何度か機会をいただき実現したのですが、シドニーの日系の高齢者の方を対象に、運動療法や体のケアについて講習会を実施していきたいと思っています。フィジオセラピーの魅力やご自身の肉体の可能性を、日系コミュニティーの方に知って頂きたいという思いで行っています。でに行っているのですが、シドニーの日系の高齢者の方を対象に、運動療法や体のケアについて講習会を実施しています。フィジオセラピーの魅力を、日系コミュニティーの方に知って頂きたいという思いで行っています。
◆フィジオセラピストに向いているのは、意外にも「人に興味がある人」
JAMSスタッフ: 将来フィジオセラピストになりたい、スポーツ大国オーストラリアでフィジオセラピストを勉強したいという人がいると思いますが、どんな人がフィジオセラピストに向いていますか?
奥谷先生: 問題解決をお手伝いするがフィジオセラピストの根本的な役目です。 です ので、その患者さんの悩みや問題がどこにあるのか、患者さんへの興味がとても大事だと思います。また、ナースやドクター等、他の医療従事者との連携ができな いと、患者さんのケアもうまくいかないので、コミュニケーション能力も欠かせないですよね。
◆早期回復の秘訣は、本人の強い意志!
JAMSスタッフ: 普段先生が患者さんを診るときに気をつけていることはありますか?
奥谷先生: 問診や、体の動きを診ながら、どこがどうなっているのか、どうしてそのような現象が起きるのかを患者さんにちゃんと理解してい ただ く、ということを大事にしています。というのも、症状や原因を理解して頂いて、「症状を良くしたい」と患者さんに思っていただくことが早期改善に繋がるからなんです。 一方的にこちらが治すのではなく、改善していこうという強い思いの方が症状が良くなるのも早いんですよ。
JAMSスタッフ: 病は気から、といいますが、【治療も気から】ですね!奥谷先生とお話していると、患者さんも「改善しよう」「一緒に良くしていこう」という気になりますよね。そういう信頼感を持てるクリニックだという印象を強く受けました。本日はお忙しい中ありがとうございました!
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