ジョージストリート沿い、チャイナタウンすぐ側の日本語総合医療センター「ワールドシティ日本語医療・歯科センター」内にあるシドニーこころクリニックでは、日本人サイコロジスト・やのしおりさんによる日本語での心理カウンセリングが受けられます。
日豪であわせて25年以上のキャリアを持つやのさんは、心理カウンセリングのできる資格はいくつかありますが、サイコロジストの大きな特徴は医療資格であること。一般開業医GPの紹介があれば、各種保険(海外旅行保険や学生保険、メディケアなど)のバルクビルやキャッシュレスサービス(自己負担なし)で心理カウンセリングを受けることができます。やのさんはシドニーCBDにあるクリニックでのカウンセリングの他、最近ではキャンベラやゴールドコースト、バイロンベイやケアンズなどの他都市でも定期的に出張カウンセリングを行っており、オーストラリア各地で日本語での心のサポートをしています。
心理カウンセリングに興味はあるけれど、実際どんな風に相談に乗ってもらえるのだろう? と思っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、やのさんのご協力のもと、ロールプレイ(疑似体験)を行ない、実際のカウンセリングの雰囲気を体験レポートしていきます♪
通常は問診からスタートするのですが、今回はさっそくカウンセリング本編に移っていきましょう!
カウンセリングを受ける際の最初の手順は、スタッフHによる昨年の「JAMSスタッフが行ってきました♪」の体験レポートをご覧ください。
なお、今回のロールプレイにおける架空の人物は、スタッフSの経験を元にフィクションを交えて設定しました。
スタッフSがロールプレイで演じるクライエントの設定:
ワーキングホリデーで渡航して3、4ヵ月目の20代後半の女性。海外での長期滞在は初めて。夢を持ってワーキングホリデーにやってきたものの、なかなか英語が伸びず、言葉が壁となって日本人以外の友達を作るのにも気が引けてしまう。仕事を辞めて渡航してきたこともあり、帰国後のことも不安。語学学校を終えて、現在仕事を探している最中。カウンセリングを受けるのは今回がはじめて。
スタッフS:最初はなにもかも初めてで、とにかく走ってきました。でも、なにかしら会得したいという思いで来たのに、語学学校に行ってもなかなか英語が伸びてないし、ワーキングホリデーという限られた時間なのに、自分の毎日はこれでいいのかなと思うようになってきたんです…。
やのさん:3、4ヵ月くらい経ってくると慣れてきて、最初のフレッシュさもなくなってだんだんと“生活”にもなってくるし、いろいろなことを考えはじめますよね。今はちょうど、そういう時期なのかもしれないですね。大きな夢を持ってきたのね。すごく思い切りが必要だったでしょうね。でもそのくらいはっきりとしたやる気と期待がワーキングホリデーに対してあったんですね。
…「そうだったのね」などとスタッフSが話したことを受け止めながら、「それでどう思ったの?」とやさしく問いかけてくれるやのさんに、どんどんと自然に自分の抱いている不安や悩みを語り続けていました。
スタッフS:それに、自分よりも短い期間で英語が伸びている子を見るとつい比べてしまうんです。自分が努力不足だから、できないんだと思って自己嫌悪になってしまったり。今のしんどい精神状態や現実の状況を抜け出すのになにか方法はないかと思って、先生に相談したいと思ったんです。
やのさん:頑張り屋さんなところはすごく素敵なところですね。本当に、高い目標を掲げていつも頑張ることのできる方なんですね。…ただこの世のことはなんでも、一見矛盾する二つの価値がある程度十分にあって、その二つのバランスが取れていると良い具合になる、ということがあると思いませんか?…その二つの価値とは今のSさんの場合は、「〜であるべき」と理想を掲げて自分を叱咤激励して頑張るところと、現実をありのままに受け入れてその現実の中で楽しめるところ。理想を目指して頑張るところはすでに十分にある良い点のようなので、今意識して増やすべきなのはどちらでしょう? …自分自身の状態を含めて現実をありのままに受け止め、その現実の中で楽しみながら、無理をせずにマイペースで頑張っていくことではないのでしょうか?
また、つい人と自分を比べてしまい、自分が十分ではないように思ってしまうという話がありましたけど、そういった家族環境の中で育ってきましたか?
…スタッフSは、特段、親や周囲から「姉たちと比べられている」と感じるような家庭環境ではありませんでした。ですが、三姉妹の末っ子という境遇のなかで、同性の姉たちを自分でも気づかないうちに意識していたのではないか、また自然と「がんばらなきゃ!」と思ってしまうのも、しっかりした姉たちを見て育ってきたことで、自分もしっかりしなければ相手にされないという思いがあったのではないか。ほかにも、成果を出せるしっかりした自分になることに強いモチベーションがあり、「超頑張り屋」の自分ができてきたのではないかなどと、これまで考えてもみなかった視点がやのさんと話していくなかで生まれていきました。育ってきた環境がこれほど自分の性格や価値観に影響を与えているのだなと実感したのです。
やのさん:「~するべき、〜であるべき」ばかりにとらわれないで、頑張るなら現実に適応していけるようにリラックスもしながら頑張りたいですね。あまりに頑張り過ぎると、時に自分も周りの人も辛くなってしまったり、息苦しくなってしまうこともありますからね。理想に向かって頑張るとともに、理想を現実に落としこんでマッチさせる努力もできるようにすると良いですよね。
そのようなことを意識して、「認知行動療法」の考え方で見てみましょう。(認知行動療法の「私たちがやってしまいがちな考え方のクセ」というプリントを渡される)。認知行動療法の自動思考(その状況に反応して自動的に自分の中に湧いてきてしまう考え方)の一つに、「べき」思考があります。「こうあるべき、こうするべき」と考えて、そうじゃない自分や他人に対して違和感を覚えてしまったり、責めてしまったり。まずこういった自分の陥りやすい考え方の傾向を知って、それを意識し、どのように考えるとより現実的・客観的で自分の気分を落とさない考え方なのかをいっしょに探していきます。結構、白黒はっきりつけないとすまないタイプでもありますか?
スタッフS:以前は白黒はっきりしていたんですけど、最近はグレーもあるんだなと思うようになりました。でも、だれかとケンカをしたときには、たとえ相手に非があったとしても、自分にもすこしでも非があったら、自分が悪かったなって思っちゃいます。
やのさん:グレー、良いですね〜!! それが現実の私たちですよね。でも、自分を批判しやすい傾向もあるのね。この紙(先ほどわたされた認知行動療法の「私たちがやってしまいがちな考え方のクセ」のプリント)に「自己関連付け」という項目もあるでしょう? 何か良くないことが起きると、何でもかんでも自分が悪かったと思いがちな認知のクセです。自分を追い詰めて苦しめないためにも、そして日本で叩き込まれてきた謙遜だけでなく、グローバルスタンダードな考え方や態度ができるようになるためにも、どうやったら自分を責めないで物事を考えていくことを身に着けることは、とても価値があることではないでしょうか?
今のワーキングホリデーの生活についても、自分の理想どおりにいかず戸惑っている自分もいるのだなと、ひとまずそこに置き、そのありのままの自分を観察していく能力。このように、体験している自分から距離をとって、自分自身を観察する視点を持つことは、「マインドフルネス」(またはマインドフルネスを応用するアクセプタンス・アンド・コミットメント・セラピー)の考え方で大事にされていることです。観察している自分(観察自我)が、実際に何かを体験している自分(体験自我)を、ただ見つめている。悩んでいたりとまどっていたりする自分がいるときでも、それをジャッジして攻撃してしまうのではなく、観察までにとどめ、そういう自分がいることを受け入れて、置いておくことが大事なのです。…でも私たちはつい、うまくいかない現実や自分に苛立ち、責め立ててしまいますね。そしてどんどん気分も自己評価も落ちていく。その結果、さらに機能も落ちていき、悪循環になりがちです。
どんな自分も評価せずに、その自分を観察しながら置いておいて、自分で自分に共感し、次にとるべき行動や変わっていく方法を、観察自我と体験自我がいっしょに考えていくのです。共感的な良いサイコロジストなら、ジャッジをせずにありのままに観察・受容し、変わっていきたい方向をいっしょに考えることをカウンセリングの中でやってくれるはずです。その機能を自分の中に取り込んで、自分でもうまくできるようになってほしい、といつもクライエントに話しています。
次に、PAC理論という交流分析の自己の理論からも考えてみましょう。PAC理論は心の状態を、親(Parent)、大人(Adult)、子供(Child)的な3つの機能部分に分けて考え、自分の心がどういう状態にあるかを知る理論です。Pが「〜するべき」という規律的な機能の部分、Aが大人的で合理的、現実的な思考機能の部分、Cが快楽主義で子供的な感情の機能部分を表しています。
やのさん:Sさんの場合、P、A、Cのなかでどれが大きいとご自分では思いますか?
スタッフS:体験しているのはCだと思うんですけど、観察しているPが評価している感じでしょうか。
やのさん:図で見てみるとわかるんですが、頭でっかちになりがちなのかも知れないですね…(3つの丸が縦に連結している中で、一番上にあるPが最大に描かれている)。リラックスしたり、たまには頑張りたくないと思う本音のC機能の自分がいることも認めてあげる。オーストラリアに来て3、4ヵ月経って、想像していた理想どおりにはなっていない現実を認めてあげて、そこからどう工夫していくかを、自分を責めずにA機能で合理的に考えていきたいですね。
スタッフS:頭でっかち…。そうですね、頭の中でばかりグルグルと考えていて、現実の自分を見ていなかったように思います。まずは現実の自分を認めて、受け入れてあげることが大切なんですね。
(カウンセリング終了)
ロールプレイングを終えて・・・
今回のロールプレイングは架空の設定だったにも関わらず、いつのまにか自分よりになってきて、思いがけない自己分析の機会となりました(笑)。育ってきた環境が性格や価値観に与える影響にも、理解が進みました。
漠然と抱いていた不安感が、どんどんと口から溢れ出してきたのは、やのさんの親身になって聞いてくださる姿勢から安心感や信頼感が生まれて、気持ちよく話すことができたからだと思います。
カウンセリングにより、先生にに伝わるようにともう一度自分の状態を深く考えることは追体験になります。先生にもいっしょに体験してもらい、「こんな風に私には思えるんだけれど、Sさん的にはどうですか?」とフィードバックを得ることで、「あぁ、言われてみればそんな部分もあるかも」と、自分では考えることすらなかったことがどんどんとわかってきました。最初は漠然としていた問題や不安感が、やのさんと話をしていくことで本当の現実の状況を理解し、実態が見えてきたことで、地に足をつけて問題に向き合う姿勢となったことが大きな変化だったように思います。
また、やのさんは概念や考え方を紹介する際にも押し付けることはなく、「こんな風に考えるとわかりやすいかと思いますが、◯◯さん的にはしっくりきますか?」と、相談者のスピードや感じ方に合わせながら、あくまでも相談者を主体として進めてくれるのも心地よく感じました。先生とクライアントとして、教え学ぶ関係ではなく、私の話を聞きながら、やのさんも感性を総動員していっしょに考えてくれ、押し付けがましくはないけれども思ったことを率直にフィードバックしてくれました。いっしょに「自分にとって本当だと思えること」を明らかにしていく、自己分析の「探検の友」といった感じでしょうか。
サイコロジストであるやのさんは、「(短期)カウンセリング」で今起きている目の前の問題に対処するとともに、「長期心理療法(サイコセラピー)」的な機能により、悩みの種を性格や行動などの根本的なところから解消(改善)する手助けをクライエントにあわせておこなってくれるので、悩みの解消が一過性ではなく、根本的に自己を理解していくことができるのも大きな特徴だと感じました。あなたの抱えている”もやもや”を、まずは無料のトライアル・カウンセリング(45分)で、相談してみませんか? また、カウンセリング以外にも、さまざまなワークショップやイベントを行なっていらっしゃいますので、まずはお気軽にお問い合わせしてみてくださいね。
●心理学ワークショップ
毎月、さまざまなテーマの心理学ワークショップを開催しています。ワーキングホリデー・学生の方は参加費無料!
http://jams.tv/BlogPosts/post_list/japanesepsychology/3886
●お子さんの発達アセスメントについて
日本語での発達・知能検査の実施、発達アセスメントと、英語と日本語両方でのアセスメント・レポートの作成もしています。
●心理学ウィーク
オーストラリア心理臨床学会(Australian Psychological Society)主催で、毎年11月に全国的に行なわれているイベント。シドニーを中心とする日本語コミュニティに向けてのイベントも開催されます。
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★ シドニーこころクリニック(臨床心理士:やのしおり) ★
所在地:Level 1, 722 George Street, Sydney (ワールドシティ日本語医療・歯科センター内)
電話:0416-006-835 (受付時間:毎日8:00-22:00)
診療時間:月~金、隔週土曜 9:30-20:00(完全予約制)
Email:sydney@cocoroclinic.com
日本語Web: http://cocoroclinic.com
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