未分類

海外で年金暮らし

ひところ、オーストラリアで退職生活を送る日本人が増えた時期があります。定年退職後、快適な暮らしを目指してオーストラリアに来る高齢者の方が多くいました。日本の年金で、こちらで暮らすというわけです。円高で、オーストラリアの物価が安かったので、まさに快適な暮らしが送れました。

ところが時代が変わり、円安に加えて、オーストラリアの物価高で、快適な暮らしなど吹き飛んでしまいました。

それに、オーストラリアの退職者向けのビザも条件が厳しくなりました。現在のInvestor Retirement visa(投資退職者ビザ)は、75万ドルの州債券投資と、年間6万5000ドルの所得保証が条件です。

(注:シドニーやメルボルン、ブリスベン、ゴールドコースト、パースなどの都市部に居住する場合で、それ以外の地域に居住する場合は条件が緩和され、50万ドルの投資と5万ドルの所得保証。)

当然、日本の年金暮らしでこの条件を満たせない方の場合、もっと物価の安い国を選択することになります。いまでは、海外年金暮らしの場所は東南アジアにシフトしています。そんな年金暮らしは日本人の話しかと思っていましたが、オーストラリア人も最近では、東南アジアで年金暮らしをしているようです。

現在、海外で年金暮らしをするオーストラリア人は約8万人。2012年までの5年間で30%以上増えています。さらに、ベビーブーマー世代(団塊の世代)が退職年齢となり、今後25年間に65歳以上の高齢者は800万人になると予想されます。

そんなオーストラリアの高齢者が退職後の年金生活を海外、特に東南アジアで過ごしているわけです。

その理由は? もちろん物価の安さです。オーストラリアに比べて50%〜80%の生活費で暮らしていけるのが魅力となっています。

■シドニーと東南アジアの物価比較

バリ(インドネシア) チェンマイ(タイ) ペナン(マレーシア)
物価 57% 物価 65% 物価 59%
家賃 79% 家賃 86% 家賃 87%
外食 68% 外食 77% 外食 71%
食材 56% 食材 60% 食材 58%

※シドニーを100とした場合の割合。

また、格安航空の参入や、インターネットの普及なども後押しして、海外での年金生活が特別なことではなく、選択肢のひとつとして身近なものとなっています。

どうやら、東南アジアで年金生活を送る日本人と同じく、物価の安さ、気候の良さ、などでアジアを目指す退職者が増えているようです。

オーストラリア人にとって魅力なアジアの地のひとつに、チェンマイ(タイ)があります。オーストラリア人に限らず、ここには日本や米国、英国、北欧、ドイツから多くの人がやってきます。プーケットもビーチライフスタイルを満喫するオーストラリア人に人気の地です。

■海外で年金暮らしをする際の注意点

もちろん物価が安いからといって、バラ色の年金暮らしかというとそうでもありません。治安も言葉も不安になります。

また、オーストラリアの年金やスーパーを海外で受給することができますが、注意しなければならないことがあります。

(1)最初の年金はオーストラリア国内で受給すること

年金の受給には、資産審査、所得審査のほかに、居住審査があります。65歳の年金受給開始年齢時に海外に住んでいた場合、年金は受け取れません。受給するには受給時にオーストラリア国内に最低2年以上居住していなければなりません。

(2)居住不動産の資産・所得審査への影響

長期に海外に居住する場合、そこが自宅となります。となるとオーストラリアの自宅は、空けていれば資産審査が、貸し出していれば資産審査と所得審査が適応されます。

また、海外に居住している間、自宅を賃貸していた場合ですが、その後自宅を売却する場合のキャピラルゲイン税の適用に、非課税適用がされない場合があります。(賃貸期間が6年以内の場合は適用されます。)

(3)租税条約締結国かどうか

オーストラリアと二国間の租税条約を締結しているかどうかは大事な点です。二重に税金が課されることのないように、居住する国の税制度を知ることが必要です。また、税務上、引き続きオーストラリアの居住者でいるのか、非居住者となるのか、しっかりと確認が必要です。

(4)医療保険制度

人気のマレーシアとタイは医療保険制度や医療機関が充実していますが、インドネシアやカンボジア、ベトナムは異なります。それらの国に居住する場合は医療保険の加入が必須です。これは海外旅行者保険だけでは不十分です。加入の保険会社が居住国で認知されているかどうか確認しましょう。

また、メディケアは基本的にオーストラリア国内に住むオーストラリア人のためのものです。長期にわたって海外に居住したオーストラリア人が帰国した際には適用にならない場合があります。(2年以内の場合は適用される可能性がありますが、5年以上海外にいた場合は適用されません。)

(5)ビザ制度

東南アジア各国は、退職者向けのビザを発給しています。インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピンはRetirement Visaを用意しています。特にマレーシアは10年有効の「My Second Home Visa」を、またフィリピンは永住できるものなど4種類のRetirement Visaを用意しています。

快適な海外年金暮らしを実現するには、しっかりと調べて準備しましょう。

(水越)

この記事をシェアする

この投稿者の記事一覧

その他の記事はこちら