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美容/健康

Farewell

 

 

 年明け早々暗い話になりますが、いろいろとお世話になったドライバーのことを、感謝と追悼の意を表すべく、ブログで書かせていただきたいと思います。

 

去年の5月に今の仕事場へ移って以来、ずっとお世話になっていた運転手の方が、先日突然、心臓発作のため他界されました。70歳も目前に迫っていたので、決して若いとはいえない年齢だったのですが、にんにく卵黄のCMに出て来てもおかしくないぐらい筋肉質で、まさに健康を絵に描いたような人でした。会えばいつも冗談を言って周りの人たちを笑わせているような明るい性格で、心臓発作とは全く無縁にみえた人だっただけに、未だに信じられません。

 

 彼は本当にナイスなオージーで、いつも周りの人のことを気にかけている人でした。

最寄り駅まで歩いて帰るフォックスのこともいつも心配してくれていて、雨の日は必ずといっていいほど、駅まで車で送っていただいていました。

 とにかく話をするのが好きだった彼は、駅に着くまでの15分間、私の話などは全く耳に入らないかのようで、自分の喋りたいことを永遠と話し続けていました。

始めの頃は冗談ばっかりを言い合っていたのですが、いつの頃からか話の内容がプライベートで深刻な話題になることが多くなっていました。

普段会社では、みんなの前で冗談ばかり言っているのに、車で駅へ向かう時にはよくそんな重たいことを話しだすのでどうしたんだろうとは思いながらも、あまり重苦しい内容の話はしたくなかったので、そういう時はできるだけ冗談を言って話題を変えて逃げるようにしていました。

 

お葬式は彼の家の近くの教会で行われました。

平日にも関わらず、250人は座われる教会の席は満席で、パイプ椅子も通路に並べられていたのですが、それでも足りず、フォックスは教会の後ろの壁にもたれて立つことになりました。

これだけ多くの人が集まるのは彼の裏表のない明るい性格のなせる業で、生前の彼の交友関係の広さが垣間見れました。

中央左手、棺の上のスクリーンには、彼の家族が選んだであろうと思われる写真がスライドショーで映し出されていました。

ほとんどの写真は彼の若い頃のもので、私が知っている恵比寿さんにそっくりの姿ではなく、まだ髪の毛もふさふさとしていて、誰だか見わけもつかないものばかりでした。

彼の家族にとっては、写真の中にいる若い頃の彼の姿の方が、より鮮明に思い出の中に残っているのだろうなと、スライドショーを見ていて思いました。

 

お葬式が始まると、生前彼と親しくしていたという進行役の牧師さんが、彼との思い出を話し始めました。しかし牧師さんはすぐに鼻声になってしまって、突然風船が割れたかのように泣き出してしまい、少し落ち着きを取り戻したかと思うとまた大泣きを繰り返して、いったい何を言っているのかわからなかったのですが、聖書の一節を朗読する時はさすがは牧師様、スラスラと泣くこともなく読みあげていました。

その後、家族の方々が次々と彼との思い出を話されたのですが、どれも面白いエピソードばかりで、その話が面白ければ面白いほど教会に集まった人々は、彼がいなくなってしまったことに胸が締め付けられる思いになり、あっという間に教会が涙で包まれてしまいました。

泣き虫の牧師さんや家族の方が彼について話をする中で、フォックスには気になることがありました。それは、彼にはとても複雑な内面の問題があって、いつも心の中に深い悩みを抱えていたということでした。

その話を聞いているうちに私はいたたまれない気持ちになりました。私を駅まで送ってくれる車の中で、彼はいつもこのことについて話をしようとしていたんだと気付いたからです。

 彼は心に抱えた悩みを私に話すことによって、少しでも自分のことを理解してもらいたかったんだということに、この時初めて気づきました。いつも重苦しい話になりそうになると、私は冗談を言って話を変えてしまっていたので、彼の本当の悩みを真剣に聞くことは結局一度もありませんでしたが、何となく彼の心の中には、ティムバートンの映画、「シザーハンズ」に出てくる主人公と同じ問題が潜んでいるようには感じていました。

そのことが、家族の方や牧師さんの口から語られるたびに、これまたティムバートンの映画、「ビッグフィッシュ」のエンディングを見ているようで、もう少し真面目に彼の話を聞くべきだったと後悔の念に襲われました。もう今となってはどうすることもできませんが……

しかし、泣き虫の牧師さんが、お葬式の最後を締めくくられる時にこんなことを言っていました。「これはほんのひと時の別れでしかなく、またどこかで廻りあうだろう」ということで、もしそのような日が来るとすれば、今度はもう少し真面目に話を聞くことにしようと思います。

そういえば彼に初めて出会った時、なんだか昔から彼のことを知っているような不思議な気持ちがしたように思います。

 

大変お世話になりました。

 

フォックス

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