「今週の相場の焦点」by Joe Tsuda (津田 穣)2...
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2018年5月29日(火)に日本政府とオーストラリア政府の合意により、日本産生鮮牛肉の対豪輸出が17年ぶりに再開されました。
実はオーストラリアは日本からの農林水産物・食品輸出において第9位の輸出国(2017年財務省貿易統計)。オーストラリア国民は平均所得が高く、付加価値が高い商品への購買意欲が高いため、高品質な和牛の市場開拓に期待されています。
そうした背景から、オーストラリアを拠点とする日系輸入業者や卸・小売業者、日本食レストランをはじめとするオーストラリアの食品業界で、日本産牛肉への注目が高まりつつあり、サリーヒルズの日本食ダイニングバー『Kagura 神楽』でも、8月6日(月)に豪州産WAGYU(和牛)のセミナーが開催されました。
セミナー参加者は、人気のストリップロインの処理方法から、部位別の特徴や調理方法のレクチャーを受けた後、お酒とペアリングされた極上のWAGYU(和牛)料理に舌鼓を打ちました。
本記事では、セミナー当日の様子を写真と共に振り返ります。
セミナー会場はサリーヒルズに構える本格日本食ダイニングバー『Kagura 神楽』。厳選された食材とオーナーシェフのYOSHI氏のこだわりのもとで提供される一品は日本人はもちろん、食通のオーストラリア人を唸らせます。落ち着いた雰囲気は、隠れ家的な魅力にあふれ、贅沢な時間を堪能することができます。
*Google Map
ーー「今回はQLD州産のWAGYU(和牛)で、ストリップロインという柔らかくて、キメが細かい高品質の部位を7キログラム用意しました。卸業者から直接購入しましたが、レストランなら80〜90ドルくらいの値段がつくほど希少価値が高い肉です」
ーー「白い部分が脂と筋です。日本ではそのまま食べるのが一般的ですが、オーストラリアでは脂や筋を切り分けて掃除(肉磨き)をするのが主流です。そうすると身上がりが少なくなるので、値段がどんどん高くなるという仕組みですね」
ーー「オーストラリアの一般な牛肉は真っ白で固い脂ですが、和牛の場合は柔らかくて旨味のある脂になります。和牛の脂はすごく上質で、実はこれを捨てるのはもったいない。旨味というのは結局は動物性タンパク質のことです。なので、切り分けた脂をソースにしたり、炒め物を作る時にフライパンに落とすことで、脂の旨味を利用することができます。脂は冷凍で保管が可能です」
ーー「バランスよく赤身の中にも脂が入っているのが和牛の特徴です。100日間はグラスフェット、残りの屠殺するまでの間は穀物を食べさせて脂の量を調整しています。筋引きのコツは、筋を持ち上げながら反対方向に引っ張り、包丁をすっと通すこと。和牛は肉質が柔らかいので、オーストラリア産の牛肉に比べて、取り扱いが少し難しくなります」
ーー「端を見ると三角に筋が入っていますね。ここがランプと呼ばれる部位で、希少価値が高く、非常に人気です。この下にも分厚い筋が入っているので、そこもきれいに取り除きます。そして手前側(写真奥)の部分はカブリですね。ここも柔らかくて焼肉などで人気の部位です」
ーー「牛も生き物なので、いつも同じ状態であるとは限りません。残すところ、取るべきところは、その都度判断する必要があります。今回は身上がりが少なくなりすぎないように、ある程度は残しておきます。少し筋が残っていても、スライスする時に一緒に断ち切れば、召し上がる際に気にならないでしょう」
ーー「今回、食べてもらいたいのはステーキ、焼肉、牛筋の煮込み、ローストビーフ……、そうそう、ローストビーフはみんなが家庭でもできるように簡単な作り方を後でご紹介します。それと肉の中心部は生食もできるので、刺身も用意したいと思います」
空気に触れた部分を柵取りして、肉塊の中心部だけを贅沢に使ったWAGYU(和牛)の刺身を日本酒のぬる燗と一緒に。生臭さなどはまったく感じず、上品な旨味を感じることのできる一品で、醤油とゴマ油につけていただきました。
カブリと打ち落としの2種類を食べ比べ。やはりカブリは希少で人気部位ということもあり、肉質の柔らかさが段違い。打ち落とし肉もジューシーで味わい深く、これぞ上質な焼肉という感じ。赤ワインと一緒にいただきました。
大本命のステーキが登場。肉の脂を使ったソースとマグロの削り節が絶品。白米との相性は抜群。というか、白米もうますぎる。それもそのはず、米はなんと魚沼産のコシヒカリ。オーストラリアでは、なかなか食すことができないツヤツヤの白米に参加者全員ノックアウト。
WAGYU(和牛)の旨味を内部にギュッと閉じ込め、牛肉本来の味を100パーセント引き出したローストビーフ。ポン酢ソースやネギとゴマなどの薬味で日本風の味付け。白ワインのロゼとの相性も抜群です。
塩胡椒した牛肉の表面を強火で熱したフライパンで焼き、中の肉汁(旨味成分)を閉じ込めます。肉を取り出して、残った脂に日本酒、薄口醤油、ローズマリー、にんにくを入れて香り付けをすればソースが完成。下準備できた牛肉とソースをジップロックに入れて、空気を抜いて密閉し、約80度のお湯に浸しながら、20分ほど炊飯ジャーの保温機能で、ゆっくりじっくり熱を入れていきます。その後、取り出して冷蔵庫で保管すれば完成。
大きく切り分けた塊肉を、じっくりと火を通したWAGYU(和牛)のグリル。低温・低速調理をすることで表面は柔らかさを保ちつつ、焼き目をつけてスモーキーに仕上げます。マスタードとの相性も抜群です。。
肉磨きで取り分けた脂や筋を根菜と一緒に強火で煮込んだ牛すじ煮込み。トロトロで、舌に乗せた瞬間、脂の甘みや深みのある味わいが口いっぱいに広がります。お酒も白米も進みます。
怒涛の和牛縛り6品でしたが、さまざまな方法で調理されているので、最後まで飽きません。写真を見るだけで、お腹がグ〜〜っと鳴り、空腹感に襲われますね(笑)。
欧米豪をはじめ、世界的に注目が高まるWAGYU(和牛)市場。舌の上でとろけるほどに柔らかく、うま味が凝縮された芳醇な味わいが特徴ですが、その反面取り扱いが難しく、海外では和牛が持つスペックをフルに引き出せていないのも現状。
WAGYU(和牛)だけでなく、今後もこうしたイベントを通して日本食の正しい知識を発信し、その可能性を広げていきたいものですね。日本人でありながら、WAGYU(和牛)の素晴らしさを再確認した一夜となりました。
取材・文:德田 直大
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