♦ひねくれタクシー♦
先日、仕事の打ち合わせで東京に行く事となった。
京都の田舎育ちの私には、東京の地下鉄乗換えが全くわからないであろう事はだいたい予想していたので、「電車なんて乗ってられるかー!くそ寒いし、人も多いし、乗り換えもややこしいからタクシーでいくぞー!わはははぁー!」と当初から決めていたのだ。
そんな意気込んだ私は、渋谷駅付近で一台のタクシーを停め、早速後部座席に乗り込みバタンとドアを閉めた。
私はとりあえず運転手さんに行き先を告げ、シートベルトを着用しようと、シートの間に隠れているシートベルと無理に引き出そうとしていたところ、
「あのぉ、お客さーん、安全運転しますから安心して下さい。あとドアは自動ですからもう触らないでもらえますか・・・」丁寧ながらも、どこか皮肉っぽい一言である。
「あぁ・・すいません・・・」となんとなく謝りながらも不思議な気持ちが抜けない私は、これに負けじと「どれくらいで着きますかね?」と質問すると50代半ばの運転手はこう言った。
「はぁー?時間?それともお金ぇーー?まぁ、どっちにしても交通状況によってかわるんじゃないのー」
もっともな答えである。
くだらない質問をした私が馬鹿であったと錯覚しはじめたが、ここでくじけないのが私の長所ともいえよう。
「あぁーそうですかぁー・・・ んーー 東京も結構寒いんですねぇー」と、どうでもいいコメントを述べ、運転手の返答を待つと、運転手はこう言った。
「お客さんどこの人?日本語達者だねぇー・・」
「はっ・・・・・・・? ど、どこって・・・ へっ・・・・?」
「きょ、京都ですけど・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・。」
「へぇーー、そぉーーー・・・ ふーーーーーん・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「1860円ですー どうもお気をつけてー」
「はぁ、ど、どーーもぉ・・・・」
完敗とはこのことであろうか。
おつりを返す運転手の顔には、何故か勝ち誇ったような含み笑いを見たような気がした。
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