♦グッピー様の価値♦
先週、某雑誌の撮影で東京に行ったときのことである。
撮影が思ったより早く終わったので、青山にある寿司屋でビールやら梅酒やらを飲みながら中田さんと話していると、中田さんのご家庭で飼っているグッピーの話になった。
中田さんには4歳と7歳のお子さんと素敵な奥様がいらっしゃって、中田さん家族の豪邸がある世田谷の豪邸には”20匹程のグッピー”を飼っていらっしゃるとお話してもらった。
”優しい子供に育ってほしい”という奥様の願いから、”動物飼育が一番良い”とどこかで聞きつけたらしく、それ以来グッピーの飼育を始めたのだという。
そんな中田さんファミリーだが、中田さんも奥様もさずがにお忙しい生活をしていらっしゃるので、そうそう”グッピー飼育”にはなかなか手が回らず、気が付けば水槽は緑色に変色し、毎月のようにグッピー達が死滅するというのだ。
その度に緑色の水槽をきれいに洗い、また新しいグッピーを購入するという作業の連続だというのだ。
”それはちょっとお子さんのイメージ的にも良くないですねぇ、お金も労力もかかりますしー” と素直な感想を述べた私に中田さんがこう言った。
”ね?そう思うでしょ?私もそうそう水槽ばかり見てられませんから・・ かといってグッピー達にとっては、私の行動は死活問題ですからねぇ・・”
とグッピー達の死活問題と、ご自分のお忙しさをてんびんにかけながらも、”グッピー達の飼育はやめられない”という決断を下した中田さんと私はいつも中田さんがグッピーを購入するペット屋さんに直行した。
グッピー達が死活問題で苦しんでいるときに、悠長にお寿司など食ってる場合じゃないというのが理由だ。
ペット屋のオーナー西村さんは”私は動物愛好家ですよ”というのが顔にあふれているくらい優しい雰囲気のお兄さんだった。
そんな西村さんのお店に入ってきた中田さんと私を見て、西村さんはすぐこう言った。
”今日も20匹ですかーー?” どうやら、中田さんは常連さんらしい。
それも”いつもあれですね?”と言わんばかりだ。 いつもの飲み屋でビールと餃子を頼む仕事帰りのサラリーマンといった具合だろうか。
”あぁ、それがーーー・・・今日はちょっとぉー・・” 勢いの無い中田さんの雰囲気を感じ取った西村さんは、”あっ、今日は10匹でよかったですか?”と追い討ちをかけるように聞かれたので、私が中田さんの変わりにこう言った。
”今日は中田さん、これでも反省してらっしゃるみたいですよ。 グッピー達を長く飼育できる方法を教えてあげて下さい”
代弁した私の横で、”そ、そうなんですぅー・・・”と中田さんはモジモジしながら言った。
そんな私達に西村さんはこう言った。 ”じゃ、私が2週間に一度、中田さんのご自宅にお伺いして、お水を替えたり、藻を入れたり、グッピーの様子を見たりしてあげましょうか?”
”おぉーーーっ!!!!”私と中田さんは狂喜の叫びを上げて喜んだ。 これでグッピー達の死活問題も解決され、中田さんのペット屋通い、奥様もお子様もハッピーと言うわけだ。 残りの問題は、勿論料金だ。
中田さんはあまりの嬉しさに”肝心な値段”を聞くのを忘れているようだったのっで、また変わりに私が代弁することになった。”ところで、それだとおいくらすか?” 私はつばをごくっと飲んで西村さんの回答を待った。
”3万5千円です。”
”・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。” 高っ・・・。 グッピー達にそんなに払えるなら、高級魚のアロワナさんが毎月買えるよ・・・ 下手したらこのペット屋まで買えそうだけど・・・ そんなにケアしないグッピーなら、もう買わない方がいいね・・・ そう思った私の横で、中田さんは突然大きな声でこう言った。
”よーーーし!その話のったーーー!じゃ、お願いします!”といって、プラチナのアメックスを差し出したのである。
「ひぃいいいいいいいいいいいいい!!!ちょ、ちょっと中田さんいいんですか、本当に?ちょっとまだ酔っ払ってるんじゃ・・・・」
そんな私の忠告を無視して、中田さんはクレジットカードの明細にサインをし、「1年分のストレスが解消された気がするよーー!」と大きく深呼吸して店を出たのである。
もし私がたかがグッピーごときに、毎月3万5千円も払わなければならないとしたら、10年分のストレスが一気にたまり、”あんたやせた??最近やつれたんじゃないの??”などといわれる日々を送ることになるだろう。
こうして私は東京で格差社会を肌で感じ、グッピー達の死活問題の解決と中田さんのストレス解消を祝うべく、ファミリーマートで180円のチューハイと100円の小魚カルシウムぽりぽりを買って、ホテルに戻ったのである。
”3万5千円あったら、このチューハイと小魚カルシウムが何個買えるかねぇ・・・” そう思うと、グッピー達よりも、賞味期限が長くて、世話の要らない小魚ぽりぽりの方がいいなぁーと思った。
|
シドニー・クリエイティブフォトグラフィーでは、ウェディング撮影を始め、DVD・ビデオ撮影を受け賜っております。 お気軽にご相談下さい。