相撲嫌いの私・・♦
私は”相撲”が嫌いである。
まるで頑固親父のような言い回しだが、”相撲好き”の読者の皆様も、”相撲協会の会長様”も、私の個人的なエッセイブログだと思って聞いて頂きたい。
まず私が相撲嫌いな歴史は、かれこれ30年以上で、相撲嫌いの中でも”大ベテランの相撲嫌い”である事をまずここに述べさせて頂こうではないか。
そんな私に、プロダクションの山中さんは案の定、”どうしてそんなに相撲が嫌いなのですか?” と尋ねられた。 私は待ってましたとばかりに、テンプレート的な答えを山中さんに案内する事にした。
先ず私が幼い頃、我が家にはテレビが1台しかなかったので、私と姉の間でテレビのチャンネル取り合戦は頻繁に勃発していた。
そんな中、私と姉が ”ヤッターマン” や ”あさりちゃん” などのマンガが見たーいと泣き叫んでいても、私の父は、”あほー!日本人は相撲みなあかーーん!日本の国技やぞーー!” と、幼い私と姉の”多数決勢力”を力づくで押さえつけていた日から、私の”相撲嫌い” は始まった言えよう。
”ぎゃぁーっ!ヤッターマンみたーーい!” ”ちがーーう!あさりちゃーーん!” とギャーギャー泣き叫ぶ私と姉をよそに父は、”うおぉーーっ!今日は押し倒しかーーっ!!やるなぁーーー、千代の富士ぃー!” と、テレビのアナウンサーと同じコメントをつけ、毎日同じようなせせりあいと、似たような結果に手を叩く父を見て育ち、その後私の相撲嫌いはますます勢力を増したのである。
そんな家庭で育った私が、中学生になっても、パンチパーマ姿で近くの商店街をオートバイクで乗り回したり、ソリコミを入れて問題ばかり起こす不良少年にならなかった事は、今でも我が家の7不思議の1つだと叔母は言う。
話は脱線したが、私の相撲嫌いには他にも理由がある。
例えば、相撲をとるにしても、スーパーモデルのお姉さんや、カルバンクラインのモデルのような若い男性が、悩ましいコスチュームで土俵にあがって戦うのならば、まだ見栄えも良いかも知れないが、デブのおっさん2人が長髪を結い、垂れたお尻をブルブルさせたかと思うと、ボテッという鈍い音を立ててひっくり返り、30秒程度で決着が付いてしまうなんて、いいとこ無しとしか言いようがない。
その上、ほとんどの場合が、力士の足がもつれ、自分で勝手に転倒しただけに見えるもんだから、あきれたものである。
”はっきょーーい!のこった、のこったーー!”と言うフレーズも、海外に住んでいると特に、”ねぇ、あれってどういう意味?”と外人さんに質問され、”んーー、何だろうねぇ・・・” と余計なところで私の教養の無さをさらけ出す機会が増えたりして、大迷惑を被ったりするのである。
勝負が終わった後も、勝った力士が”わはははーーっ!勝ったぞぉーー!バンザーーイ!”と喜ぶわけも無く、負けた力士も”あっそ・・、じゃまた今度・・”とばかりに無表情で退散していく姿は、勝負のやる気の無ささえ感じさせる。 我が家のプレイステーションのキャラクターの方がよほど表情があると言うものである。
相撲では、サッカーや野球のように途中経過も延長中継もないのだから、夜中のニュース速報のダイジェストで充分じゃないか。 新聞でもコマ送りの写真を5枚ほどつければ勝負は全て見れるじゃないか。 ヤッターマンやあさりちゃんでさえ、ストーリがあるというのに、相撲のストーリーの無さは4コママンガ以下じゃないか。
こうして、私の相撲嫌いの理由は永遠と続いたのである。
そんな中、”そろそろ撮影の用意が・・・”という山中さんの一言で、ふと我にかえった私は、”じゃ、今夜は我が家で相撲について語りましょう”と提案してみた。
”ま、まだあるの??”と言わんばかりに驚きの表情で私を見た山中さんは、真顔で私にこう言った。
”野尻さん、本当は相撲が大好きなんじゃないですか? だって、私も相撲の事全然興味ないんですけど、野尻さんの方がよっぽど相撲の事ご存知ですよ。 それに相撲のことでそんなに話せる方に初めてお会いしましたし、嫌も好きなうちとかいいますしねぇー”
山中さんはいつもこうして、新たな私を発見してくれるのだ。
”なるほど、そう言われてみれば、長い間相撲なんぞ見てないな。 あれから随分時間も経ったし、相撲が好きになったかもな。あのお尻も今見たら、可愛いと思えるかもな” そう思わせてくれるのが、山中さんの凄い所だ。
”山中さんって、凄い方ですねぇ。 山中さんの発見力はコロンブスくらいありますよ。”
そんな私からの最高の褒め言葉に、山中さんは静かにこう言った。
”いえいえ、そんな事ありませんよ。 私も野尻さんほど突発的で、エジソン以上の発想力をお持ちの方は始めてお会いしました。”
山中さんは発見力もすごいが、どうやら人を困惑させる事はもっと上手いようである。
”エジソン以上なんて凄いよなぁー・・ でも突発的なところは朝青龍と似てるかもな・・・ エジソンはいいけど、やっぱり朝青龍はやだなぁー・・・”
どうやら私の相撲嫌いは、これからも続いていきそうである。
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