2024年日本人会ゴルフ部9月度例会を開催しました
2024年日本人会ゴルフ部9月度例会リポート 開催日:2024年9月15日(日) 開催場所:Windsor Golf Club 参加人数:12名 …
先日、帰宅途中に見かけた光景。シティレールの車両に「Fu*k Cops!」とグラフィティが描かれていますが、果たして作者はそんなに警察に恨みでもあるのでしょうか?
犯罪行為である違法なグラフィティを用いてでも、そのメッセージを発信したいなら、交番の壁やパトカーに描けばよいのに(それも犯罪!)、なんて思ってしまいましたが、そういう問題ではありませんね(笑)。
じつはNSW州では違法のグラフィティの数は年々増加傾向にあり、年間おそよ3億ドル以上の被害があるんだとか。オーストラリアは「クリーンで法律を遵守する」といったイメージを個人的に持っていたので、これにはびっくりです。
グラフィティとは1970年代にニューヨークで発祥したアートフォームで、ヒップホップ4大要素(ラップ、DJ、ブレイキング、グラフィティ)のひとつとして知られています。エアロゾールやフェルトペンを用いて、無許可で壁や電車などにメッセージを芸術的に描く前衛的な芸術として発展し、そのカルチャーの中からはキース・へリング(Keith Haring)やバンクシー(Banksy)といった世界的な芸術家も輩出しました。
1983年に公開された映画「スタイル・ウォーズ(Style Wars)」によってメディアを通して初めてグラフィティが発信されましたが、そこにはグラフィティのありのままの姿が描写されていたこともあり、公共空間において無許可かつ匿名で行なわれる芸術活動(要は犯罪)としての部分も含め、世界中へ広まることになります。
景観を乱す、犯罪行為を助長するなどの多くの問題を持つグラフィティは、世界的に問題視されている一方で、シドニーの街を歩くと美しくも力強いパワーを持つ魅力的な芸術作品を目にすることも多いので、グラフィティそのものを否定することができないのも事実です。
そういったグラフィティが持つ問題を解決すべく、ライターたちが自由にグラフィティを描くことができるリーガルウォールというものがあります。じつはオーストラリアならびにシドニーのリーガルウォールの数は多く、グラフィティライターを取り巻く環境は世界的に見ても悪くないようで、ここシドニーでも多くの作品を見ることができます。
シドニーで最も有名なグラフィティスポットといえばボンダイ・シー・ウォール。ビーチ沿いにある遊歩道には数百メートルに渡って、様々なグラフィティアーティストの作品が描かれています。
中にはグラフィティとは少し違ったポップでキャッチーな壁画もありますが、アートを楽しみたい人や写真を撮りたい人にとってはよいかもしれません。©︎Bondi Beach Graffiti Wall
規模としては大きくありませんが、天井までみっちりと作品が描かれており、グラフィティ作品の密度が濃いのが特徴。
ベトナム戦争に対するメッセージをシドニー大学の学生が描いたことに由来しており、今も多くの政治的なスローガンが描き込まれている、グラフィティライターの魂を感じることができるスポットです。
現在もシドニー大学の構内の通路として使われています。©︎gottoesplosivo
シドニー南部の郊外からシティへ通勤している人にとっては、毎日電車内から目にすることができるグラフィティエリアで、広大な工業地帯の横道沿いに多数のグラフィティ作品が描かれています。
無骨で廃れた雰囲気を持つ工場とグラフィティの相性は非常によく、作品が持つニュアンスを際立たせます。©︎hiveminer.com
もともとは犯罪行為であるグラフィティですが、時を経て、徐々にその芸術的価値が認められるようになってきました。それは才能あるグラフィティライターたちがクリーンな芸術活動を通して勝ち取ってきたものであり、このグラフィティ文化を発展させていくうえでこれから先もずっと必要なものだと思います。
その一方で「許可された場所で描くのはリアルじゃない」という声もあります。確かに、無許可でグラフィティ作品を描くには綿密に作戦を練った上で、大きなリスクを背負って創作活動をしないといけないので、作品とは別にその活動内容自体がエキサイティングであり、見る人の想像力が掻き立てられるのも事実です。
歴史を振り返るとゲリラ的に描かれたグラフィティ作品の中には、人々の心を動かすような強烈なメッセージを含む芸術と評価された作品も少なくありません。そもそも反政府的なメッセージを掲げる場合は、ゲリラじゃないと意味がないという考えもあるので、倫理と芸術の間で人々の意見が揺れ動いているのでしょう。
周囲に迷惑をかけて、大きなリスクを背負ってまでやらないといけない使命があるのであれば、もしかしたらそれも必要なことかもしれません。でも、度胸試しのゲーム感覚でやってるのであれば、政府や国家権力だけでなく、歴史を作ってきたライターへのディスリスペクトにもなります。
表現の自由は誰しもが持っています。でも、街の景観を乱すだけなら……、それはただの迷惑行為だし、やるなら覚悟を持って描ききれよと言いたいですね。
文:德田 直大
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