エンタメ/スポーツ

音楽ライブをベストスポットで観るならシドニーが穴場?

以前、「ハリウッドスターとセルフィーするならシドニーが穴場?」とお伝えしましたが、音楽ライブにも言えるような気がします。

けっこう前ですが、イギリス人シンガーソングライターのジェイク・バグのソロアコースティックライブを観に、マリックヴィルのThe Factory Theatreへ行きました。

©︎Jake Bugg

ジェイク・バグと言えば、ハリウッドスターほどの認知度はありませんが、若干18歳にしてストーン・ローゼスや元オアシスのノエル・ギャラガーのヘッドライナーも務めた、ブリティッシュロック好きなら知らない人はいない(と思われる)現在24歳のギタリストです。2012年のデビューアルバム『Jake Bugg』は全英チャート1位を獲得、イギリスの男性ソロアーティストとして最年少の快挙を成し遂げ、ダブルプラチナの売り上げを達成、マーキュリー音楽賞の候補にもなりました。

今回のライブは、昨年9月に通算4作目のアルバム『ハーツ・ザット・ストレイン』のリリースに伴うソロアコースティックツアーでした。オーストラリア公演の次はすぐに日本公演も控えていました。


©︎Factory Theatre

当日は午後7時からボックスオフィスとバーがオープンし、ヘッドライナーのタイン・ジェームズ・オルガンの演奏が午後8時45分からというスケジュール。私は少し遅れて午後8時50分くらいに到着しましたが、そこに列などなく、階段を上がった先の会場はガラガラで、階下のバーの方ができあがった人たちで激混み。本命のジェイク・バグは午後9時30分から開始ということで、まあ、会場の入りがまばらなのも頷けました。

会場自体はスタンディングの箱ですが、ほとんど人がいなかったので最前列にいそいそと陣取りました。すでに午後9時近く。「もう始まってるの?」と隣の女の子に話したところ、30分前くらいに着いたけど何も始まってないよ」とのこと。同じ趣味なので音楽の話に花をさかせつつ、ヘッドライナーの演奏を聴き、ジェイク・バグを待っている間にも、最前列と後ろの方にちらほら観客が集まっている程度……。「あれ、ジェイク本当に来るのかな?」と私たちは不安になりました。

しばらくして音響に問題があったらしく、スタッフが音声チェックを繰り返す中で、予定はどんどん遅れて午後10時。ようやくアルコール片手の観客がわらわらと階下から集まってきました。東京や大阪ではあり得ない進行で、のんびりと過ぎてゆくのでした。


©︎Jake Bugg

そして、いよいよジェイク・バグが登場!

途端にうしろから半狂乱の絶叫(男女同比率)が聞こえてきました。異様に時間をかけただけあって音響はバッチリ。アルペジオもコードストロークもさすがのミュージシャンシップの高さで、ブルースからポップ、フォーク、カントリーとギター一本での表現の豊かさに改めて驚かされました。観客は酔っ払っているので、「愛してる」コールや大合唱の嵐。それでも、メディアを通すと若干柄が悪そうなジェイク・バグは、こまめに観客とコミュニケーションを取ってくれていて、物腰やわらかな姿が印象的でした。荒削りのデビューアルバムからメロウな最新作に至るまでの楽曲を、アコースティックギターのみで歌いあげる、ギミックなしの90分間+アンコールは震えるほど良かったです。

結構エピックなライブだと思うのに、当日のカメラマンは2人しかいなかったし、セキュリティなんか途中から現れて途中で消えてしまったし、写真(フラッシュなし)も動画も取り放題で、観客ほぼ全員が酔っ払っていたシドニー公演。ギターを取りに普通にステージへ戻ってきて水を飲んでいるジェイク・バグ、「愛してる」「最高だ」と連呼していた割に即帰宅しはじめる観客たち。この日の散乱するビールの空き瓶と缶、熱狂から日常へのテンション切り替えの速さが忘れられません。隣の女の子は家が遠くて開始時間が遅れた分、最後の曲を聴く前に帰ってしまったし……。

シドニーの何が穴場なのかというと、最前列に行こうと思えば苦労なく行けること、ノリで公演後のミュージシャン本人とも話せるということです。東京のリキッドルームや大阪の梅田クアトロのライブよりずっと楽チン。ジェイク・バグの公式Instagramでは、オーストラリア公演は見事にスルーされていて、直後の日本公演の楽しそうな様子がポストされていました。オーストラリアに感想は何もなかった模様!

これまでに、同じくマリックヴィルのCamelot LoungeやLazy Bones、ニュータウンのThe Enmore Theatre、ダーリングハーストのOxford Art Factory、シティのFrankie’s PizzaとThe Metro Theatre、チッペンデールのThe Lansdowne Hotel、ボンダイビーチのThe Beach Road Hotelなどへ音楽ライブを観に行きましたが、音楽レベルは高いのに総じて「音楽 ≒ 居心地 ≒ 食事」というゆるい印象。じつは音楽ライブでもシドニーは穴場かも?


©︎Metro Theatre

文:武田彩愛

この記事をシェアする

この投稿者の記事一覧

概要・お問い合わせ

その他の記事はこちら