2024年日本人会ゴルフ部9月度例会を開催しました
2024年日本人会ゴルフ部9月度例会リポート 開催日:2024年9月15日(日) 開催場所:Windsor Golf Club 参加人数:12名 …
アスリートらしい爽やかな出で立ちとハツラツとした受け答えが印象的な、NSW州のサッカーチーム『Gladesville Ravens(通称:レイヴェンズ)』でゴールキーパーとして活躍する有川枝里さん。
小学生の頃にサッカー選手としてのキャリアをスタートし、中学・高校時代には全国大会BEST8という輝かしい成績も残した。しかし、大学時代には思うような結果が出ずに悔しい思いをしたことも。そこから選んだ進路は、女子サッカー強豪国であるオーストラリアでサッカー選手として活動することだった。
日本からポートフォリオと映像をオーストラリアのクラブチームに配信し、自らチームに交渉して新たな道を切り開いた。シーズン通してレイヴェンズの正ゴールキーパーとしてプレーした彼女に、サッカーやチームに対する熱い思いと、現役引退後のキャリアパスの描き方について話しを伺った。
有川枝里(ありかわえり)、23歳、千葉県出身です。サッカーは小学校2年生からはじめました。小学生のころは地域のクラブチームで男子に混ざってプレーをしていて、中学生からは女子のクラブチームに入部しました。
中学2年生の時までのポディションはフォワードでしたが、ゴールキーパーの先輩がチームから卒業したタイミングで、ゴールキーパーに転向しないかという打診を監督から受けて。たぶん、チームで一番身長が高かったという理由だと思うのですが(笑)。
最初は痛そうだな、怖いなと思いながら練習していましたが、キーパーのポディションを任されるようになってから、どんどんのめりこむようになって。
高校卒業後は、教育大学の体育学科に進学し教員の免許を取得したので、体育の教師になろうと思っていました。しかし、高校時代はインターハイと高校女子サッカー選手権で全国ベスト8になるなど、頑張っていたぶん結果もついてきたのですが、大学サッカーではいい成績を残せずに悔いがあったので……、まだやめられないなと。
その他にも、昔から海外で暮らしてみたいという気持ちがあったので、海外生活とサッカーの両方できるのは今が最後のチャンスかなと思い、オーストラリアでプレーしようと決意しました。
海外でプレイヤーとして活動することは、サッカー選手として貴重な経験になるだろうし、将来私が教員になった時にも1人の人間としての深みを持てるんじゃないかなと思ったのも大きな理由です。
まずは英語圏であること、そして女子サッカーのレベルが高いことでオーストラリアを選びました。オーストラリアの女子サッカーは、ワールドカップで優勝した経験を持つ日本とも互角で戦えるような高いレベル(FIFAアジアランキング1位:2018年8月時点)なんですね。
もしかすると、これが選手としては最後のサッカー人生になるかもしれないと考えた時に、自分のサッカーが海外でどのくらい通用するか確かめるためにも、レベルの高いところでやりたいと思いました。
アメリカも英語圏でサッカーの強豪国として知られていますが、現地でプレーするには大学院などに進学する必要があるんですね。学費のことや、ビザの関係で仕事ができない、サッカーが仕事にならないことを考えると、現実的ではないかなと思いました。
大学を卒業しているので、家族のサポートに頼らず、自活していくことに決めていたので、生活費を稼ぎながらサッカーができるオーストラリアでプレーしようとなりました。
実はオーストラリアにはサッカーチームを紹介してくれるエージェントがあることは知っていたのですが、教員になる前に人生経験を積むことも一つの目的だったので、自力で挑戦しようと決めました。
まず、JAMS.TVなどのオーストラリア情報を発信している日系メディアの記事を手当たり次第に読んで、サッカーに関係している人を探しました。そこで伊藤さん(伊藤瑞希さん)がシドニーでゴールキーパーコーチをしているというワーホリお仕事図鑑の記事を見つけ、コンタクトをしてみました。
そこからオーストラリアの1部・2部リーグの全チームに履歴書とこれまでの自分の成績、プレー映像をまとめた動画をメールで送りました。そこにレスポンスをいただけたのが、今のチームであるレイヴェンズ(Gladesville Ravens)です。国際電話がかかってきて「一軍で迎えたいと思っています」と言われ……、「行きます!」と即答しましたね(笑)。
そこからは怒涛の日々でした。ちょうど大学の卒業前だったこともあり、友達と卒業旅行の計画などもしていましたが、チームからは3月から始まるリーグの1試合目から来て欲しいと言われて。自分もプロとして迎え入れてくれるんだから、すぐに行かないと!という感じで、ビザを取得し、身辺整理をして、卒業旅行も卒業式も全部キャンセルして、オーストラリアに飛んで来ましたね。
一時期、アメリカの大学院への進学を考えたこともあったので、TOEFLの勉強をしたこともあるのですが、活きた英語ではなかったので、チームに加入した当初は全く話せないような状況でした。
それでも、チームに馴染むためにチームメイトや監督と、とにかくコミュニケーションを取るようにしました。練習や試合の時には「グダイメイト(G’day mate)」っていう感じで大きな声で挨拶をして。
逆に試合中の指示や要求に関しては、一生懸命ジェスチャーなどを使って伝えようとすれば、向こうも理解してくれますね。普段から監督が使っている言葉を同じように使ったり、必要であればホワイトボードを使って説明もします。でも、やっぱり気持ちですかね。声のボリュームとか気迫で伝えることが重要です(笑)。
言葉が通じなくてもサッカーで繋がっていると思います。リーグ戦の初戦で、自分のプレーをチームメイトが認めてくれたなと実感できて。そこからは、みんなの態度ががらりと変わり、一気にウェルカムになりました。
チームメイトや監督によくしていただいてるので、そこまでナーバスになることはありませんでした。しかし、怪我をした時には心が折れそうになりました。
捻挫をしてしまって、サッカーもアルバイト(副業)もできない状態になった時に、まさに生きる希望を失いました。「オーストラリアにいる意味がない」って。
唯一オーストラリア人と繋がれる手段であるサッカーができなくなった時、孤独と自分の無力さを感じました。チームのために何もできないのがもどかしくて。自分が出場できなかった試合でチームが負けて、悔しくて涙を流すこともありました。
芝生のグラウンドが多いことです。キーパーは他のポディションよりも地面を体に打ち付ける頻度が高いので、打ち身や擦り傷がどうしても多くなるのですが、芝生(または人工芝)のグラウンドだと、それが軽減されるので嬉しいですね。逆に土のグランドはほとんど目にすることがありません。
キーパー目線からオーストラリアの選手を見ると、やはりシュート力が違います。最初の練習でチームメイトから受けたシュートが強烈だったことを覚えています。ボールが速すぎて、自分の体が追いつかないのがわかりました。体格や骨格が違うので、スピードもパワーも男子レベルだと思います。
メンタルの面では、オーストラリア人はすごく楽観的ですね。日本人は、良くも悪くも自分のプレーや練習に対しての強い責任感を持っていますが、それが原因でミスをしたり衝突をすることもしばしばあります。
オーストラリア人はサッカーが楽しいからやっているんだろうなって思います。スランプの時やミスをした時、チームが負けた時でも泣いている人を見かけることは、あまりないですね。
サッカーはチームスポーツですが、キーパーは練習も別メニューだったりと、個別で動くことも多いので、「私は私」という感じで周りに流されず、自分のスタイルを変えずにやっています。チームの雰囲気がオーストラリアらしいゆったりとした感じなので、もしかしたら、日本人の私を入れることで、今の流れを変えたいっていう思いがあり、オファーをいただけたのかもしれません。
オーストラリアでプレーする一番のやりがいは、日本よりもサポーターの反応が大きいことですね。良いプレーをした時の歓声がすごいんですよ。監督やチームメイトも、試合に勝った時には、すぐに駆け寄って来てハグをしてくれたりと、オーストラリア人のダイレクトなリアクションに何度も後押しをしてもらいました。
来シーズンもレイヴェンズでプレーしようと思っています。ファミリーみたいな今のチームが好きですし、唐突に履歴書とビデオ送ってきた私をよく一軍で拾ってくれたなという恩があるので。今シーズンは、惜しくもファイナルに行けなかったので、来シーズンはNPL1に上がって恩返ししたいと思います。
それとユースチームのゴールキーパーコーチなど、指導者としての道も考えています。オーストラリアでしかできないことに挑戦をして、精一杯学んでいきたいと思います。きっとそれが日本に帰国した時に、自分を助けてくれると思うので。
難しい質問ですね(笑)。自分の武器が海外でも通用するということがわかったので……、70%くらいでしょうか? 渡豪する前は、1シーズン目からドーンと活躍して、チームもNPL1に上げてと、夢ばかりみていました。
でも、実際にはこちらでオーストラリアのパワーとスピードを体感して、もっと技術面や精神面でのレベルアップが必要だと痛感しました。理想に近づくためには、もっともっと頑張らないといけないですね。
プレー以外の面では、自分の力で今の環境を勝ち取ったことをとても良い経験になりました。やったことは全て自分の責任になるぶん、学べることもすごく多くて。1人の人間として成長できたと思いますし、今後の人生で大きな自信になると思います。
取材:德田 直大 文:村田 悠夏
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編集部アドレス:editor@jams.tv
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