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日本のプロ野球選手が単身豪州へ! 不屈のピッチャー/中島彰吾

「NPB戦力外通告」プロ野球選手にとって最も受け入れがたい挫折をバネに、海外に活躍の幅を広げる中島彰吾選手。

東京ヤクルトスワローズを退団したのち、台湾・オランダ・オーストラリアと3カ国にも渡る経歴は、プロ野球界でも異彩を放つ。一度は航路を完全に見失った野球人生を「海外」という新たなフィールドに舵を切ったのは、たった一つの出会いだった。

台湾育成チームでの選手兼コーチ経験を経て、野球人生は一変。オランダの一部リーグでは開幕投手を飾り、そして現在は大きな変革期を迎えるオーストラリアン・ベースボール・リーグ(以下ABL)で、シドニーブルーソックスのピッチャーとしてマウンドに立つ。

快活な笑顔を浮かべ「死ぬこと以外何も怖くない」と語る姿から、紆余曲折の選手生活を乗り越えてきたバイタリティを感じずにはいられない。様々な国でのプレー経験を経て、たどり着いた野球に対する向き合い方、そして日本野球機構(以下NPB)戦力外通告からABLへの躍進に至る系譜を伺った。

航路を見失った野球人生、ある出会いが「海外」という新たな世界に舵を切る

去年NPBから戦力外通告を受けました。それからトライアウトを経て、いくつかの企業チームや独立チームからオファーを頂きましたが、僕はNPB以外のチームには入らないと決めていたので全てお断りしていました。元々NPBでプレーしていたのに、レベルを落としてまで野球を続ける意味はないと思っていたんです。

NPBに戻れないのであればもう野球を辞めようと思っていたときに、台湾のトライアウトチーム「アジアンアイランダーズ」創設者の色川冬馬氏に出会いました。彼は台湾で海外選手を20人ほど集めて、台湾のプロチームと対戦しながらプロを目指す育成チームをつくっていて、僕をそのチームの選手兼コーチとして誘ってくれました。

僕としても目標を見失いかけていたところだったので、「海外」という新たな世界に飛び込めばまた何か新しい目標が見つかるんじゃないかと思い、その話を受けました。英語をプレーや実生活で使うのは初めての経験でしたが、スポーツとは不思議なもので、お互い野球をやっているとお互い何を言いたいのか何となく分かり合えるんですよね。僕も英語に自信がなくても、とにかく積極的にコミュニケーションを取ろうと意識しました。

海を越えた先に、指示待ちの「プロ」はいない

海外で野球をしてみて日本の野球と比べて感じた大きな違いは、選手が何事に関しても自ら考え、実行していることですね。

たとえば食事に関しても日本にいた時は、住んでいた寮にプロの栄養士さんがいて、自分が何にもしなくてもバランスのとれた食事が摂れていました。一方、海外だと自分に必要な食事はもちろんん、トレーニングも自分で考えます。プロテインやサプリメントに関しても自分たちで選んで買っていますね。

自己管理という意味では、日本の野球選手は「プロ」という感覚はあまりなかったかもしれません。海外の選手はやはりハングリー精神があって、一緒に生活していると僕もとても感化されます。今選手生活がすごく楽しいですね。

野球人生でたどり着いた、自分らしい生き方

僕は基本的に死ぬ以外怖いものはないし、失敗しても死ぬわけじゃないと思っているので、何でも挑戦して、失敗しても次に活かそうと思っています。部活生時代もよく「~しなさい」と指示されることが多かったのですが、それに対して僕は逆らってきた問題児でした(笑)。

たとえば必要以上にランニングさせられたりとかすると「何の意味があるのか」って疑問に思うじゃないですか? それでもみんな監督やコーチの顔色を伺って、その指示に黙って従う人が「デキるやつ」となる風潮が理解できませんでした。どの選手も同じ練習メニューをこなしたところで、ほとんどの人が突き抜けた結果を出していないのが現実です。

僕は監督やコーチに結構自分の意見をぶつけていたので、日本で僕は周りからは少し変わった奴だと思われてきました。でもその結果プロまでいくことができたし、自分の力で成功を掴んだという実感もその分感じました。どうせやるなら自分がやりたいことをやって、その上で失敗した方が納得がいくじゃないですか。

台湾での経験をステップに、オランダへ

台湾で活動していたときに、オランダ一部リーグのオースターハウト・ツインズからオファーを頂きました。僕は迷わず承諾しましたが、まさか日本を出るときは台湾からオランダに行くとは思ってもいなかったです(笑)。

人生って分かれ道の連続で、その時々に舞い降りたチャンスを得ていくのが僕にとってはベストなのかなと思いました。オランダはワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で2大会連続ベスト4のイメージや、元チームメイトのバレンティンの出身国というイメージがありましたが、行ってみると実際に技術のある優秀な選手もたくさんいました。

オランダに関しても、日本との大きな違いはやはり練習スタイルです。オランダだと集合時間もバラバラで自分が好きなタイミングでアップして、自分で必要なトレーニングをして…って感じで、本当に「個」の要素が強いですね。

海外でのプレーで気づいた、野球との向き合い方

オランダでは「楽しむ野球」ができたなと思っています。日本にいたときは中学あたりから、野球は自分の中で無意識に「楽しむもの」から「勝たないといけないもの」に変わってしまっていました。

特に強いチームにいればいるほど、勝ち負けに思考が偏ってしまう気がします。選手が楽しそうにプレーする姿を見て、お客さんも楽しくなる、それが本来野球のあるべき姿だと気づきました。

もちろん海外の選手も勝ち負けにはこだわりますが、たまにおちゃらけたムードになったりするんですよ。でも日本の野球は常にシリアスでいないとならない。海外の方が自分は素を出して、チームと一緒に野球を楽しむことができてるなと感じています。「野球」と「Baseball」はやっぱり違いますね。

あと日本だとプロ一本で確立している選手が多いのですが、オランダだと副業している選手が多いんですよ。日本人だと野球に関わらず、仕事一本って人が多いと思いますが、海外の選手は仕事とスポーツのバランスの取り方がすごく上手いと思います。人として尊敬しますね。

さらなる高みを目指してオーストラリアへ

オーストラリアに来たのは、先ほど話した台湾アイランダーズの色川さんが、シドニーブルーソックスのマネージャーのトニーにつなげてくれたことがきっかけです。僕自身日本、台湾、オランダ、オーストラリアとどこにいてもあまり感覚は変わりませんが、ブルーソックスのチームはめちゃくちゃ雰囲気が良くて楽しいです。

今のブルーソックスは元メジャーリーグの選手もいたりして、僕がオランダでプレーしていたチームよりも全然レベルが高いと思います。特に僕のように海外から来た選手は自分ら積極的に練習するし、意識が高いですね。周りのモチベーションが高いと自分も引き上げられるので、切磋琢磨しあえています。

できる限り高いレベルを目指して常に野球をしたいと思っていてます。まだまだメジャー・ベースボール・リーグ(MLB)も目指していますし、そういった意味ではオーストラリアはチャンスがたくさんある場所です。自分がやれる限りトレーニングして、さらに上のオファーがもらえるように試合で結果を出していきたいですね。

人生常に真っ向勝負。後先よりも今この一瞬を大切に

野球を辞めた後のことはまだ考えていませんが、今野球と全力で向き合っていれば何かしら道は開けてくると思っています。特に海外での人との出会いって、自分の人生においてなんだか特別な気がしますね。自分が今まで知らなかった道を知れたり、一生ものの出会いがあったりとか。

もちろん目標をもって、そこに向かって努力して達成していくことも大事ですけど、僕は結構行き当たりばったりです(笑)。これは色川さんに教わったことですが、野球を通じていろんな経験を積んで、自分自身のブランドを高めていくことが大事です。様々な国で経験を積んだ人間の方が、説得力もあるし、もっといろんなことを教えられます。

だから野球ができる間は後先を考えるよりも今を大事にして、いろいろなところで野球を経験していこうと思っています。僕は今死んでも後悔しないくらい、今が最高に楽しいっすね!!

プレーだけじゃない、野球の魅力を一人でも多くの人に届けたい

オランダもそうでしたが、オーストラリアは野球が強いのに、認知度は国内でも結構低いんです。オーストラリア人がもっと野球の魅力を知ってくれれば、オーストラリアのリーグも大きくなるし、そしたら日本でNPBが叶わなかった選手も海外に目を向けてくれるようになります。

一野球人として、どの国でも野球が認知されていくのって嬉しいじゃないですか。僕自身も日本で、海外でのプレーを経験してる元NPB選手としてトークショーなどもやっていますが、海外で野球をやりたい人は結構たくさんいます。オーストラリアリーグももっと大きくなってほしいですね。

野球の試合はプレーを見るのはもちろんですが、その他にもお酒を飲んでヒットが打たれたときに「ワァァァ」ってみんなで盛り上がる球場の雰囲気なども魅力の一つです。みなさん知らないだけで、見に来てみれば野球は意外と誰でも楽しめるものなんですよ。ぜひ一度足を運んで、野球の楽しさを体感してほしいですね。

取材:千葉雛

シドニーで野球を見に行こう!

「シドニーにもプロ野球があるなんて知らなかった」「オーストラリアでも久しぶりに野球観戦をしたい」という方に。シドニー郊外に本拠地を構えるプロ野球チーム「シドニーブルーソックス」の試合を観戦してみませんか?

オーストラリア野球の魅力は選手との距離が近いこと。 シドニーブルーソックスの中島彰吾投手のほか、日本の有名なプロ野球選手もABLに派遣されており、日本人野球選手のレベルの高いプレーを間近で楽しむことができます。

野球のルールを知らないという方もご安心を。野球場にはピザやアイスクリーム、ポップコーンなどのスタジアムグルメのほか、イニング間に行われる珍ゲーム大会やマスコットとの触れ合いなど野球以外のコンテンツも充実しています。ビアガーデンも完備されているため、ビールやワインを片手に仲間とワイワイ観戦するのもOK。

12月14日(金)〜16日(日)には、埼玉西武ライオンズより派遣されている高木勇人投手と齊藤大将投手が所属のメルボルンエイシズとの試合を記念して、「JAPAN FAMILY DAYS」を開催。キッズは無料招待。16日(日)の試合後には、選手とのサイン・撮影会の他、キッズ向けの「Slip and Slide」も登場するので、友達やファミリーで球場に足を運んでみよう!

JAPAN FAMILY DAYSの日程

第1戦:12月14日(金)18:30開場 / 19:30試合開始(打ち上げ花火あり)
第2戦:12月15日(土)14:30開場 / 15:30試合開始
第3戦:12月15日(土)18:30試合開始(レディースナイト開催)
第4戦:12月16日(日)12:00開場 / 13:00試合開始

※15日はチケット1枚で2試合ご観戦いただけます。
※キッズ招待条件:大人1名様のチケットをご購入につき、最大3名までのお子さまの入場が無料になります。
※チケット購入の際には、無料招待コード「MATSURI」の入力をお忘れなく。
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シドニーブルーソックスFacebook:https://www.facebook.com/sydneybluesox.japanese
シドニーブルーソックスinstagram:https://www.instagram.com/sydneybluesox_japanese
シドニーブルーソックスウェブサイト:http://web.theabl.com.au/index.jsp?sid=t4069

 


 

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