2024年日本人会ゴルフ部9月度例会を開催しました
2024年日本人会ゴルフ部9月度例会リポート 開催日:2024年9月15日(日) 開催場所:Windsor Golf Club 参加人数:12名 …
オーストラリアとニュージーランド2カ国16チームで形成される「ナショナル・ラグビー・リーグ(National Rugby League/以下NRL)」に所属する「マンリー・ワリンガ・シー・イーグルス(Manly Warringah Sea Eagles Cheerleader “Seabird”/以下マンリー・シー・イーグルス)」で、日本人初専属チアリーダーとして活躍する富谷弥法さん。
幼少期からダンスは習っていたが、20歳でまったくジャンルの違うチアリーディングの世界に飛び込んだ彼女。チアリーダーに憧れてからわずか1カ月で、日本の「ガンバ大阪チアダンスチーム」に合格。1年目はセンターを任され、2年目にはバイスキャプテンも務めた。
その後舞台をオーストラリアに移すと、チアを始めてたった2年で、オーストラリアのNRL「マンリー・シー・イーグルス」に日本人で初めて合格するという快挙まで成し遂げた。数年前まで未経験であったにも関わらず、異例の速さで飛躍を遂げる姿には、並々ならぬ努力と目標への強く熱い思いがあった。
富谷弥法(とみやみのり)、埼玉県出身の23歳です。日本では、ガンバ大阪の専属チアリーダーと幼稚園教諭をしながら、ガンバ大阪チアキッズスクールで教えていました。オーストラリアに渡ってからは、シドニーのマンリー・シー・イーグルスで専属チアリーダーとして踊りながら、ノースシドニーを拠点に活動する日系のキッズチアチーム「サクラキッズチアリーダーズ」のレッスンも担当していました。
3歳から大学3年生までクラシックバレエとバトントワリング、創作ダンスなど、ずっと踊ることを続けてきて、20歳からチアを始めました。
友人が連れて行ってくれたサッカーの試合で、ガンバ大阪のチアリーダーを見たのがきっかけです。ガンバ大阪の試合を観戦したのはその時が初めてだったんですが、甲子園球場でビールの売り子をするくらいスポーツ観戦が好きでした。観客の人たちが盛り上がる中、近くで選手を応援しながら輝いているガンバのチアリーダーがすっごくうらやましくて。
大学卒業後は幼稚園の先生になる目標があったので、20年くらい続けてきたダンスも卒業と同時にやめるつもりが、試合を観て以来どうしても「このチームに入りたい!」と思ってしまって。翌月に「ガンバ大阪チアダンスチーム」のオーディションを受けました。
未観験で何も分からなかったので、オーディションまでの間にYouTubeでチアリーディングの動画を見ながら、ネットで基礎を調べて、ダイエットもして……ってしたら合格したんです。
チアリーディングは、チームによって見た目もダンススタイルも違って、ガンバはアメリカの「ナショナル・フットボール・リーグ(National Football League/以下NFL」のような、巻き髪で衣装もセクシー、健康的で大人な女性がテーマ。
もちろんオーディションにはみんなガンバに合わせたスタイルで来ているんですけど、私はそれを知らずに一人だけお団子に短パンとTシャツ姿で(笑)。逆にその姿が目立っていたことと、チアの経験がなくてもバレエの基礎はあるので、白紙の状態な分柔軟に対応できそうだとディレクターが可能性を感じてくれたそうです。
合格してチームに入れたのは良かったんですが、私だけが未経験だったので、先輩に怒られるし私だけいつも注意されていました(笑)。でも、ガンバが大きなチームだと知っていたし、いろんな人が見ているしプロとしてお金もいただいているので、しっかりしないと恥ずかしいと思って悔しさよりも責任感を感じていました。
毎日学校まで3キロ走って、ジムとダンスのレッスンに通ったら10キロ痩せました。最初はレッスン中に1度も先生に注意されないようにするとか、小さな目標から徐々にクリアするようにして。1年目で無謀だったけど、最終的には、センターで踊るという目標も達成できてすごく嬉しかったです。
ずっとダンスを続けてきたけど、こんなに明確な努力をしたことはなかったのと、チームの責任感とプレッシャーの中で夢を叶えられたことがすごく自信につながりました。
手の使い方や足の使い方が違うのと、筋肉のつけ方も違います。バレエでは脚の裏側の筋肉を使ってゆっくりと脚をあげて、つま先ものばして、曲線や流れをきれいに魅せるもの。練習も毎日厳しいけど、バレエでは自分で自由に表現できます。
チアは1回のカウントで早く足をあげるので、みんなで一斉に揃えてあげるにはバレエと反対に足の前側の筋肉が大事で、ヒールのあるブーツで軸がぶれないようにするにも、下半身の筋力が必要でした。
最初は手に力を入れてと言われても入れ方がわからないし、ポンポンも重いから筋力がない時はしんどくて。私は筋肉がつきにくい体質なので、今も毎日ジムでトレーニングしてます。体つくりと好き勝手踊れないのがきつかったのと、みんなで揃えて大きく見せるのが大変でしたね。
ルーキーだった時に先輩にしてもらったことを自分も後輩にしてあげたくて、バイスキャプテンを引き受けました。もともと夢だった幼稚園教諭の仕事も決まって、両親は仕事に専念して欲しかったみたいなんですが、私はチアも続けたかったので、援助なしで頑張るからと言って一人大阪へ引っ越しました。
それからは、スタジアムそばにあるシェアハウスに住んで家賃を浮かせながら、平日8時から17時は幼稚園勤務。18時以降はガンバチアキッズスクールの先生か、ダンスの練習かジムを毎日繰り返しました。
仕事もチアも覚えることがたくさんあるし、体力もお金もシビアだったけど、そこまでしてもやりたいと思えるくらい夢中になれることがあって良かったなと思います。
センターで踊らせてもらったり、サポーターの方たちに名前を覚えてもらえたりするのは嬉しかったんですが、1年目と比べるとバイスキャプテンを頑張ることくらいしか目標がなく、「自分は何してるんだろう?」と思う時があって。
1年目の方が自分と向き合って戦っていたし、時間がないことを理由に逃げている気がしていました。
アメリカのNFLチアリーダーは私がチアを初めてからずっと憧れている存在です。日本人のチアリーダーたちの中にはNFLチアを受験し、合格を勝ち取っている方もいらっしゃいます。自分自身、憧れを目標にしたいと思いつつも、アメリカのNFLに行った先輩のような覚悟はまだ私にはなくて、3年目もガンバ大阪に残るか他のチームに移るかといろいろ迷っていました。
そうやって次の目標を立てようとしていた時に、たまたまインスタグラムのおすすめ一覧にチアリーダーの写真が出てきたんです。
その写真に写っているチアリーダーの表情や楽しそうに踊っている姿、キラキラして素敵な衣装がすごく気になって。元の写真が分からなかったので、背景に写っている看板を調べたらオーストラリアの会社がヒットするんですよ。その頃、海外にはアメリカしかチアがないと思っていたんですけど(笑)。
調べるうちにシドニーのマンリー・シー・イーグルスだと分かったんです。それからはSNSを全部フォローして、辞書で英語を調べながらチームについて調べました。家族がラグビーをやっていて、父と一緒に観戦しに行くくらい私も大好きなスポーツなので、チームを応援しながらチアで活躍できるのはすごくいいなと思いました!
ダンススタイルがNFLの中でもトップレベルで別格の存在である「ダラス・カウボーイズ・チアリーダー(Dallas Cowboys Cheerleade)」寄りで、ガンバとも似ていて自分の目指しているものに合っていたし、過去にマンリー・シー・イーグルスからダラス・
ワーホリビザのことも詳しく知らなかったし、両親も半分呆れていたんですけど説得して、オーディションを受けることにしました。
2月の「ナショナル・ラグビー・リーグ・ラウンチ(National Rugby League)」という大きなチアのイベント前に、オーディションが実施されるんですが、私は12月までガンバと幼稚園の契約があったので、日程的に多くのオーディションを受けるのは難しくて。
両親には落ちるのが怖いから3チームくらい受けて受かったチームに入るよう言われたんですけど、好きなチームでないと自分が納得できないことも分かっていたので、マンリー・シー・イーグルスだけ受けたら合格しました。
オーストラリア人は、日本人と体格が違って大きいので、体つくりや大きく見せる努力をしました。例えば、私の場合は背が低いのでつま先で立って高く見せたり、指先まで力をいれて腕をしっかり伸ばしたり、なじめるようにしました。
オーディションを経験して感じたのは、ターンは上手くできないけどジャンプがすごく高く跳べるとか、アクロバットができるとか、メンバー一人ひとり高いスキルを持っているので、それに負けないような自分の強みを持っていないといけないなと思いました。
それに、オーストラリア人はちょっと間違えても絶対動じないし、自信満々に笑顔で踊るんですよ。それが受け入れられる環境でもあるし、間違えても楽しそうにしていて。フリを間違えると顔にでたり頭が真っ白になったりすることもあると思うんですけど、間違えても堂々と自信を持って笑顔でいることも大事ですね。
その頃、体が細くて肌も白くて黒髪だったんですけど、日本人は肌の色が白くて見た目がアンヘルシーと言われて。健康的な女性に見せないといけないので、髪の毛のボリュームを出して、肌を焼いてこいって言われたんですよ(笑)。
でもそんなにすぐに日焼けできないしどうしようと思ったら、チームメンバーがタンニングスプレーで染められると教えてくれたので、スプレーを塗って染めました。染めるとそれだけで結構なじむし、衣装もしっくりくるんですよね。
あとは、つけまつげをつけて、顔のパーツが大きく見えるような化粧を意識したり。近くで見ると濃すぎるんですけど、スタジアムの客席から見るとなじめるから。
オーストラリア人は寛大で自由なところが私もすごく気に入っているんですけど、日本だと厳しい部分も、こっちでは優しく受け入れられて、もっと自由だなと感じました。
例えば1番前のセンターの子がフリを間違えても「間違えたけど最後までパニックにならず踊れて良かった」って声掛けたり、誰かが急いだけど駐車場が混んでいたから遅刻したって言うと「急いだのに事故にならなくて良かったね」って声掛けたり、みんなすごく優しいんですよ(笑)。
あと、練習のない日があることや、試合がないと練習のない月があるのはびっくりでした。5月は試合がなかったので、練習がゼロで……。楽しみにしていた練習がなくなって、その時はただのジャパレスで働いている人になってしまって、私は何しに来たんだろうって悩みました。
そういう複雑な思いもあったけど、基礎練習のレベルが高いのはすごく刺激になったし、オーストラリアに来たのは間違ってなかったし、文化の違いを知れたことも英語環境でチアができたことも強みになったと思います。
まだマンリー・シー・イーグルスをSNSで見ていた頃は、厳しくてわだかまりや競争の世界だと想像していたので、そこで強くなろうと思って来たんですけど、メンバーは優しく私を受け入れてくれて結果的に楽しく終わりました(笑)。
最初の頃は指示が分からないので、私の横には絶対誰かがついてくれて常に気に掛けてくれたし、ポジションが分からない時には手を引っ張って連れてってくれて。申し訳なさと有難さがあったんですけど、あまり英語が話せない私を受け入れて助けてくれる、いい人たちに巡り合えたなと思います。
日本からこのチームに入りたくて来たと言うとみんな喜んでくれたし、受け入れてもらえて。ディレクターが初めて日本人を採用したと私のことを公式インスタグラムに載せたら、たくさんコメントがもらえて、私の両親が来た時もすごくウェルカムで(笑)。
アジア人だからとか、競争世界でとか、大変なこともあると思ってきたけど何もなかったですね。
メンバーになっても、スキルや体型、気持ちの面など見られていて、試合前の練習でちゃんと踊れないと選抜に選ばれないんです。中でも開幕戦はみんな出たいし、私はルーキーでもあったので、1戦目に選ばれず出られなかったのはショックでした。
それなので、初めて出られたのは2戦目だったんですけど、試合前にディレクターが私の衣裳のリボンを結びながら「やっとデビューだね、良かったね」って言ってくれた時は、感極まって涙しました。ディレクターが本当にいい方で、いつも「誇りに思うよ」って言ってくれるんですよ。
初めてフィールドに立った時は鳥肌が立ったし、隣に並ぶメンバーと目が合うと頷いてくれて、メンバーになれた喜びと、SNSで見ていた憧れの世界に自分が立っていることにとにかく感動しました。
「チアエクスペリエンス」という地元のキッズチームと一緒に約600人で踊るイベントに参加した時に、アナウンスで「サクラキッズチアリーダーズ」って聞こえて「あれ、日本かな?」と思ったんですけど、その時はたくさん人がいるから分からなくて。
その後、サクラキッズチアリーダーズ主催者の方がインスタで私を見つけて、キッズたちが出る日本人のお祭りに誘っていただいて、見に行ったらすごく可愛くて。
アシスタントとしてチームに入らないかと誘ってくださって、それから半年間、毎週3時間子供たちに教えてました。日本語環境だし、チアの話もできるし、子どもたちも上手くなっていってすごく嬉しかったですね。
写真:サクラキッズチアリーダーズのみんなからみのりさんへ贈られたアルバム
ガンバのチームで一緒に踊っていたキャプテンが、NFLに受かったので見に行って。同じ世界で踊ってた子が、今は8万人のスタジアムで踊っている姿を見て、すごーく感動したんですけど、それと同時に次の目標はここだと思いました。
去年見た時は、まだ英語も話せないし遠い世界だと感じたけど、もう少し近くなった気持ちで見ることができました。
私にはNFLは到底届かないと思ってたけど、オーストラリアのNRLを達成して、次は本場アメリカのNFLに挑戦したいと思うようになれました。もう、NFLのフィールドに立ってる姿しか思い浮かばなかったんです。
「小さなことからコツコツと努力して、少しずつ目標を達成していけば、大きな夢も叶う。」私は20歳からチアを始めたので周りの人に比べるとすごく遅いスタートでしたが、強い気持ちがあったからここまでやってこられたと思います。今後は日本でオーディションが控えているので一度日本に帰国して、ビザの準備やスキルアップをしたら、次はNFL に挑戦します!
取材・文:岩瀬まさみ
富谷弥法(とみやみのり)さん
公式Instagram:@minorippp
マンリー・イーグルス公式Instagram:@manlyseabirds
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