エンタメ/スポーツ

祭りを通して見た、オーストラリアと日本の国民性

12月9日(土)にダーリング・ハーバーのタンバロン・パークで開催された「Matsuri Japan Festival 2017(以下祭り)」にボランティアスタッフとして参加してきました。1カ月前にシドニーにやってきたばかりで、祭りスタッフとしてはイベントの2週間前から加わったにも関わらず、スタッフの皆さんに快く受け入れてもらい、イベントはもちろん翌日の打ち上げBBQまでしっかり楽しむことができました。

当日は12月のシドニーらしい最高の天気のなか、予想を遥かに超える5.5万人の来場があり、史上最大規模での開催となりました。私が担当していた出展ブースでは「あまりにも忙しくて、まったく休みがとれなかったよ」という出展者のうれしい悲鳴が聞こえるほどで、大変な一日になりましたが、同時に大きな達成感を得ることができました。

じつは、日本で8年程イベント会社で勤務していた経験があり、今回イベントスタッフとして働くなかで、日本とオーストラリアでいくつか違いがあることに気づきました。そのなかで特に印象的だったことを3つに絞って紹介したいと思います。

 

①来場者の高いモラル
イベントのゴミ問題は深刻です。特に野外や入場無料のイベントで、飲食ブースの出展がある場合は徹底的に対策をしないと、イベント会場はゴミに溢れ、不衛生なうえに処理にかかる費用も膨らみます。

日本人は高いモラルを持つと言われていますが、実際には日本国内で大規模なフェスティバルを開催する際は、これでもかというほどにゴミ箱を設置し、各所に配備された係員がポイ捨て禁止を呼びかけ、捨てられたゴミの処理に追われます。

今回の祭りでは日本の基準を下回るゴミ箱の設置数だったので、始まる前は会場がゴミだらけになるのではと不安に陥りました。しかし、実際にはポイ捨てをする人はほとんどおらず、会場は終日きれいに保たれ、オーストラリア人のモラルの高さに驚きました。

 

②厳しい規則と管理基準
衛星管理、環境汚染対策、酒類の販売において、徹底したルールが法律ベースで作られており、高い基準で管理されていました。

飲食ブース付近には調理や配食作業に従事する方が、すぐに手洗いできるように、一定間隔で移動式の手洗い場が設置されていました。環境汚染対策としては、飲食ブースや日本文化体験ブースで出た汚染水を専用の樽に回収し、専門の業者が回収していました。酒類の販売は警察に申請をし、許可が下りた時間内で販売され、販売エリアは鉄柵と警備員によりしっかりと管理されていました。

日本とはまた違った規則が制定されているので、運営やブースを出展された方は苦労されたと思いますが、非常に合理的でエコなシステムだと思いました。参加する人たちのマナーやモラルに委ねるだけでなく、問題が起きにくい環境づくりをすることで、さらに安心・安全なイベントを運営することができるのだと思います。

 

③リスペクトされるボランティア・スタッフ
今年は120名を超えるボランティア・スタッフが参加し、祭りの成功に大きく貢献しました。メインステージでは何度も祭りがボランティア・スタッフの協力によって運営されていることがアナウンスされ、ブース出展者、出演者、来場者の方にも声を掛けていただき、ボランティア・スタッフが感謝され、リスペクトされていることが伝わってきました。

日本のイベントでもボランティア・スタッフは活躍していますが、業界が未だ縦社会のため、理不尽な対応をされたり、能力をきちんと判断することもなく、経験になるような仕事を与えないといった問題をよく耳にします。

しかし、今回の祭りに参加したボランティアスタッフの中には、留学生やワーホリメーカーの方でも、セクションのリーダーとなって、数カ月前から企画や運営に関するミーティングを重ね、イベント当日もバリバリと働いている人がいました。重要な仕事を任されるのは大変ですが、将来の糧になる経験ができ、人脈を作ることのできる環境が整っていました。

また、イベント前日に会場で打ち合わせをしていた時には、「シドニーに来たばかりで英語も全然話せませんが、なんでもするので手伝わせてください」と、音響志望の青年がスタッフに懇願し、なんとイベント当日には音響のステージ・ハンドとしてオーストラリア人スタッフに混じって働いていました。音響は花形ポディションのひとつなので、日本だと考えられない程に良い待遇です。

これらはオーストラリアというよりも、オーストラリアに住む日本人のスタンスなのかもしれませんが、何にせよここでは目的と情熱を持って取り組めば、バックグラウンドやステータスは関係なく、手を差し伸べてくれる人がいるということですね。

 

その他にも今回の祭りを通して様々な発見がありましたが、長くなり過ぎてしまうので、また次の機会にしたいと思います。

「イベントなんて人が作ってるもんやから結局は人と人の繋がりがすべてやねん」
これは私が大阪のイベント業界にいた時代に師匠から聞いた言葉です。

観客、演者、裏方の3つの要素が上手く融合し、掛け算的にエネルギーが膨れ上がっていく瞬間が好きで、私はイベント業界で働いていました。祭りが終わった今となっては、来場者数を始めとする数字に注目が集まりがちになっていますが、現場で感じた生のバイブスや参加した人たちの声も同じくらい大切で、そういったところに目を向けても今回の祭りは成功だった感じます。

自分が生まれ育った日本の文化が、海外で爆発的に広がりを見せている渦中に飛び込み、当事者として盛り上げられたことは本当に良い経験となりましたし、たくさんの人たちとの出会いは自分を取り巻く世界を大きく広げました。
もし、この記事を読んで興味を持った方がいれば、来年はスタッフとして働いてみてはいかがでしょうか?

最後になりますが、関係したすべての方に感謝するとともに、来年の更なる発展と成功を心から祈ります。

 

文:德田 直大(編集部)
写真:伊藤 麗

この記事をシェアする

この投稿者の記事一覧

概要・お問い合わせ

その他の記事はこちら