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ブレイキングバトル「RYUGI vol.14」をお手伝い

日本にいた頃、ストリートダンスイベントの企画・制作・運営、そして月間専門誌の発行など、ストリートダンスに関わることを幅広く手がけるプロモーション会社で勤務していました。踊り自体は高校3年生で辞めてしまったのですが、ずっとストリートダンスやヒップホップカルチャーのシーン中で生きてきたので、JAMS.TVで働いている今もYouTubeで動画を毎日チェックしたり、オーストラリアの交友関係もダンスに関連する人が多かったりします。

先日、シドニーの兄貴分であるHIDEBOOさんが定期的に開催しているブレイキング(通称:ブレイクダンス)のイベント「RYUGI」が、日本を代表するダンスグループFOUNDNATION CREWとコラボレーションし、規模を拡大して開催されると聞いてお手伝いに行ってきました。当日は基本的に搬入出を手伝っただけですが、久しぶりに体を動かして体力のなさを実感。常に誰かに「大丈夫かい?」と声を掛けられ、まだ向こうに荷物が残っているにも関わらず、私が運んでいる途中の荷物を持って行かれてしまう始末。

そんな私のポンコツぶりはさておき、イベントはすごく盛り上がっていました。今大会では、優勝者は日本の大会にオーストラリア代表として参加できる権利と、航空券や宿泊費が授与されるので、参加人数が多いだけでなく、いつも以上にレベルが高かったようです。オーディション予選、ベスト32からのトーナメントとイベントは進行し、決勝戦は優勝候補最有力、これまで世界大会で輝かしい成績を残してきた韓国出身オーストラリア在住のBLUE (所属:Extreme Crew)対、メルボルン出身のFlying Foxy(所属:Rhythm Faction Crew)のカードに。見事優勝して日本行きを決めたのは、オリジナリティーのある技でバトルの主導権を握り、最後まで闘志を絶やさなかったFlying Foxyでした。

決勝バトル後には、ブレイキングソロの世界大会「Red Bull BC One」(2016年)で日本人として初めて優勝したISSEIが、今回のイベントにはゲスト審査員として参加していたにも関わらず、オーストラリアチャンピオンのLoweからの熱い要望に応えて、スペシャルエキシビジョンマッチにも出演。日豪トップダンサーの熱い戦いに、来場者や出場者は大いに盛り上がりました。

実は、あまり一般的には知られていませんが、日本は海外から“ダンス大国”としても知られています。日本人が世界大会で活躍しているだけでなく、日本国内で子供たちや女性ダンサーの活躍も目まぐるしい上、ダンススタジオやダンスイベントの数も他国に比べて圧倒的に多く、ストリートダンスシーンのマーケット全体が成熟しているからです。

また、平昌オリンピックで注目されたフィギュアスケートの羽生結弦選手や、スノーボードの平野歩夢選手のように、大きな舞台で活躍している若い日本人ダンサーも数多く輩出しています。今回来豪したISSEIも、小さな頃から日本を背負いながら世界を舞台に戦っていて、同じ日本人である事が誇らしく感じます。

今年、アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されるユースオリンピックで、ブレイキングが正式種目に採用決定されることになりました。ユースオリンピックに採用された競技は、オリンピック競技にも採用される確率が高いので、もし正式採用されれば、近い将来日本人ダンサーがオリンピックの表彰台でメダルを獲得する姿が見れるかもしれません。

一方で、オーストラリアのダンスシーンに目を向けると、こちらは意外にも歴史が短く、まだまだ発展途上段階にあります。とは言え、世界的なダンスブームの影響や隣国のニュージーランドが世界大会で活躍している流れも受けて、少しずつ人口は増加しているようです。正直、「RYUGI」に参加する前は、もう少しオーストラリアのレベルは低いのかなと思っていたのですが、想像していたよりもずっと熱くて盛り上がっていました。

今回のイベントで個人的に印象深かったのは、「DJ TIME」と呼ばれる、みんなが自由に踊る時間帯です。音楽への感度、英語のラップや歌への理解度が日本人に比べて高く、自由に踊ったり、時には歌ったりしている姿を見て、「ストリートダンスはスポーツではなく、あくまでアートフォームであり、カルチャーなんだ」と、改めて気づかされました。

ストリートダンスやヒップホップの本質を自然の流れの中で習得、体現しているオーストラリアのシーンは、日本とは違った魅力であふれていると思いました。2月、3月のシドニーはダンスイベントが数多く開催されるシーズンなので、積極的に参加していきたいと思います。

最後に、ゲスト審査員のISSEIに少しインタビューをしたので、ここで紹介したいと思います。

「今回初めてオーストラリアに来ましたが、B-BOY(ブレイクダンサー)のシーンを見て盛り上がりを感じましたし、すごく楽しかったですね。出場者はクリエイティブで自分のスタイルを持っている人が多かったです。同時開催されていたキッズの部にも上手な子がいましたし、今後さらに発展していく可能性があるんじゃないでしょうか。

決勝戦の審査は難しかったです。BLUEは昔から世界大会で活躍しているだけあって、技術は高いし戦い方も熟知していました。相手のFlying Foxyは対照的にフレッシュなことをしていたり、音を聞いてバトルの内容を掴んでいました。最後のラウンドで駆け抜けていった感じがして、僅差でしたがFlying Foxyが少し上回ったかなと思います。

エキシビジョンマッチは体力的にキツかったですね。Loweからオファーがあったと聞いた時には、オーストラリアチャンプが直々に対戦希望だなんて光栄だと思ったし、見に来てくれる人たちの心に何か残したいと思って引き受けました。盛り上がったし、自分も楽しめたのでよかったです。

最後に、予想していたよりも日本人の出場者が多くて驚きました。オーストラリアで活動しているB-BOYの方には、シーンの成り立ちも違う両国の中で日本人らしさをレペゼンしながら、よい部分をどんどん盗んで日本に持ち帰ってもらいたいですね。語学など、オーストラリアだからできることもたくさんあると思うので、ダンスに限らず、むしろダンスを使って、どんどん自分の世界を広げていってほしいと思います!」

文・取材:
德田 直大

ダイジェスト映像:
林田 真哉

写真:
Instagram @jnywkz | @photography.jny
www.facebook.com/photography.jny

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