2024年日本人会ゴルフ部11月度例会を開催しました
2024年日本人会ゴルフ部11月度例会リポート 開催日:2024年11月17日(日) 開催場所:Bayview Golf Club 参加人数:11名…
シドニーの日本食レストランや各種イベント、路上演奏などで愛用のギターを弾き続ける星野尚紀さん。
日本からオーストラリアに拠点を移し、ライブステージ上の演奏とレストランのバックグラウンド演奏の両極端な音楽を一本のギターで弾きこなす。日々高みを目指しながらシドニーの日系コミュニティにおいて人と人とのつながりを常に大事にしている。
穏やかな性格とは裏腹に激しいヘビメタにも応えられるという星野さんに、独自の音楽にある幸福論を訊いてみた。
星野尚紀、28歳です。6歳から10歳まで親の仕事の都合でシカゴに住んでいました。17歳の頃ギターに目覚めて、日本の音楽大学を卒業。オーストラリアに来るまでは、地元横浜のインターナショナルスクールの生徒に英語でギターを教えていました。
オーストラリアは学生ビザで来豪し、1年間シドニーにある「Australian Institute of Music(通称AIM)」という大学のコンテンポラリーパフォーマンス科で学びました。僕の学科は楽器ならなんでも勉強できたので、ギターを選んでディプロマを取得し、学生ビザからワーキングホリデーに切り替えた後、現在まで音楽活動を続けています。
世界の国際語が英語になっている世の中、音楽の分野でも英語圏に飛び込めば、僕の音楽を聴いてもらえる人の分母がすごく増えると思ったんです。日本でもライブサポートをしたり、ギターレッスンと並行して演奏活動はしていましたが、日本国内のレストランで演奏してもお客さんはあまりチップを出したがらない。何も一晩で100万ほしいというわけじゃありませんが、収入ゼロでは食べていけませんよね。そんな当時、たまたま父親がシドニーに住んでいたこともあり、父親を訪ねてオーストラリアを旅行しようかと思ったのがきっかけ。今から4年前のことでしたが、いざスーツケースにギターを入れて飛び出してシドニーで3週間過ごしてみると、とっても開放的な街でした。
旅行中は、セントレナーズ駅前やストリートモールの路上で演奏活動もしました。「Jazushi」*という日本食レストランのオーナーとも出会う機会もあり、彼のレストランでも1度ギターを弾かせてもらいました。そうした交流の中で、オーストラリアは日本よりもライブミュージックが多いし、路上演奏をしていても警察に止められないし、チップをくれる方も多いし、「オーストラリアこそ音楽的に可能性があるんじゃないか」と思うように。日本から拠点を移すため、一度日本に戻って身辺整理をしてから、2016年に改めてオーストラリアへ渡ってきました。
僕はちょっと小心者なので、オーストラリアに行く前なんてギターを持って行くのも「どうしよう〜どうしよう〜」ってまごついていたんです。ですから、シドニーの街を実際に見るまでは「海外に出るよりも先に日本でがんばって、どうにかキャリアを掴もう」と考えていました。そのはずが一気に飛躍しちゃいましたね(笑)。
*毎晩日替わりミュージシャンによるジャズライブを開催しており、生演奏を聴きながらフュージョンジャパニーズを味わえる。
アメリカのドリームシアターというバンドのジョン・ペトルーシが好きで。そのバンドはヘビメタですが、1枚だけディナーショーのCDがあるんですよ。これがとても両極端! いつもはやたら激しい音楽をやっているのに、ディナーショーに合う音楽もやっちゃう。僕は日本の大学の専攻がジャズで、もともと好きだったのはロックということもあり、ちょうど間をとるような音楽はないものかと思っていたところ、彼の音楽に出会ったんですね。「あ~これは僕が生涯聴き続ける音楽なんだろうな」と影響を受けることになりました。メガテスというバンドのブラジル人のKIKO・LOUREIROも、自分のソロアルバムだとブラジリアンジャズやボサノバのスタイルをしていて、この2人は本当に僕のヒーロー。両極端な音楽が1つのギターだけで弾けちゃうっていうのがすごい。彼らの音楽を聴いて、僕もこうなりたいと思ったんです。それで、レストラン演奏というのを個人的にもやってみたかった。
シドニーの音大生をしていた頃は、月に2回ほどレストランで演奏をして。店内で音楽の実践をするという感覚で演奏したところ、意外とウケもよかったのでそのままソロギター形式の方向になりました。レストランでの演奏は1回3時間。与えられた時間でいっぱい弾き続けて自分の音を聴いてもらいたいので、休憩は10分くらい。その日の雰囲気によってセットリストを変えたり、日本人のお客さんがいたら日本の曲を入れたり。ストックは全部持っていて、会場を見てから演奏するセットを決めるようにしています。
レストランはお客さんと至近距離です。ライブハウスならみんな音楽を聴きに来ているから、ステージでいくら弾いてもいい。一方のレストランでは食事をしながら音楽を聞いたり、会話が成り立っている空間でのバックグラウンド演奏になります。ですから、ライブとはまた違ったアプローチ方法があって、うるさすぎないよう空気を読んだり、緊張感の綱渡りというものを学びました。「一音の重み」とでも言いましょうか……。例え正しい音を弾いていても、油断したらその油断が音に出てしまうんです。
例えばシンガーと共演する時には、そのシンガーが歌いたいものを優先的に決めています。シンガーにとって気持ちよく歌える曲の方がいい結果になると思いますし。よく共演させていただくYuki Hime**さんとは、結構ハードロックなもの、レストランでは演奏しないような激しいものを一緒にやっていて楽しいです。
日本の大学在学中は、お化粧もしてビジュアル系バンドをやっていまして(笑)。その時期いろいろ学ぶこともあり、普段の自分は「ボーカルが引き立つような演奏をしなきゃ」と思っています。バンドは要するにチーム戦。みんなが全力で目立つよりもタイミングを見てうまく合わせてあげるのがいいかな〜と。
**シドニーを拠点に長年活動するシンガーソングライター/コスプレイヤー。
ええ〜(笑)。あのステージは日本のBABYMETAL(ベビーメタル)というバンドのカバーで。本物のベビーメタルのバックバンドは顔を白黒に塗るコープス・ペイントという化粧をするんですよ。で、僕もその見た目に近づけようと思い(笑)。ところで僕、暑いのが大好きなんです。日本でも汗だくになってギターを練習するのが好きで。「MATSURI」は、炎天下の中で演奏できて、とても楽しかったですね。
昨年末からオーストラリア人とのバンド活動が始まりましたが、当日そのオーストラリア人の1人が体調を崩してライブをキャンセルする事態になったことがあります。音楽で食っていきたいなら、這ってでもステージに上がるくらいの決意がないと。彼らははリハーサル当日まで練習もしてこなくて、言い訳ばかり……「それでいいのか?」と少し残念になりました。
それでも常にオープンにでいて、チャンスがあればどこへでもアグレッシブに飛び込んでいくようにしています。僕はそこまでアレもコレもやりたいわけじゃないので、やっぱり人間関係ですからバランスのとれたバンド活動ができれば、それが理想。シドニーで本当にいろいろな方から演奏機会の声をかけていただけるので、予定さえ合えば「イエス」と答えるようにしています。
今は旅行の時からお世話になっていた「Jazushi」と、ニュートラルベイにある「Tamagetaya」という日本食店の2軒で3日に1回くらいレストラン演奏をしています。ある日は短時間の演奏、翌日はレストラン演奏、その翌日はホームパーティーとか、そういうスケジュールですね。QVBの前で路上演奏を毎日のようにしていた時期もありました。今でこそ生活できるだけの収入になっていますが、オーストラリアという土地柄のおかげというのもあります。日本はライブハウスで演奏するにしても、ふらっと聴きにくる方は多くない。オーストラリアのレストラン演奏となると、その店自体にも固定のお客さんがいて、音楽目当ての方以外にも、いろいろな客層に聴いてもらえる機会があります。路上演奏も同じで、自分の目の前に誰かが来るまで大体10秒くらい、その10秒で勝負ができる。レストラン演奏も路上演奏も、お金を稼ぐことの他に、聴き手の反応を見ること、つまり「自分のギターは大丈夫かな」と確認するためにやっている部分もあります。
ギターを持っていると本当に幸せなんですよね。毎朝起きて「あ〜今日も幸せだな」と思いますし、いっぱい練習した日は、寝る時に「あ~、今日も無事に終わった。明日も早く起きてギターを弾きたいな〜」と思います(笑)。あんまり落ち込む日がないんです。きっと皆さんが演奏に呼んでくださるからでしょうね。もしそれがなかったら、寂しい毎日だったんだろうな~と思います。
最近は、大学時代の先生が「経験を重ねると自分の音楽は外を向き始める」と言っていたことを思い出します。レストラン演奏をして、自分の出した音が1曲目からなんとなくお客さんに伝わり始めていると実感できるようになったからかもしれません。ある日レストランに電話が来て、「あのギターの子がいるなら食べに行く」と言ってくれた方がいたりとか、一緒に歌ってくれる方がいたりとか。ギターの音って、簡単に聞き流せちゃうじゃないですか。それをじっと聴いてくれているんですよね、うれしいですね。
最近、飲食店のオーナーから就労ビザに切り替えるお誘いをいただいて、もう少しシドニーにいられそうです。唯一悩んだのはその時くらいですね(笑)。今はビザの調整をしてもらっている最中。今後も飲食店で働きながら、音楽活動を続けていきたいです。だから忙しくはなるけど飲食業との両立が目標ですね。
↑ナオキさんのオリジナル楽曲
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