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目標は英国のパブ!舞うように働く笑顔のバーテンダー/柴田花純

オーストラリア・シドニーを中心に7つのバーを展開しているMALONEY HOTEL GROUPの「ST JAMES HOTEL」と「STAR BAR」でバーテンダーとして働く柴田花純さん。

大学時代にパブに魅了されて以来、大手英国風パブ「HUB」、ニュージーランド・オークランドのローカルパブでの下積みを経て、オーストラリア・シドニーで3都市目となる「バーテンダー修行」がはじまった。

「すべては本場イギリスで働くため」。バレエで磨いたしなやかな動きと、チアリーディングで培った弾けるような笑顔を武器に、今日もカウンターを舞台に特別な時間を提供する。

あえて遠回りをしながらも、夢を叶えるために着実に進む彼女のひたむきな姿勢から、バーテンダーという職業への誇りを感じる。「パブには歴史と尊厳があるので」と語るその真意について伺った。

自己紹介をお願いします。

柴田花純、千葉県出身です。5歳の時からクラシックバレエを習い、高校ではバトン、大学ではチアリーディングをしていました。

大学で都市環境や地域形成について学ぶうちに、古くからイギリスでコミュニティの役割を担ってきたパブに興味を持つようになりました。卒論ではパブとコミュニティについて研究し、大学4年生の夏に日本のブリティッシュパブでバーテンダーとして働き始めました。

本場イギリスのパブでバーテンダーになることを目標に、大学卒業後は日本のアイリッシュパブで経験を積み、昨年ニュージーランドのローカルパブで10カ月、そして現在はシドニーのバーで働いています。

花純さんが思うパブの魅力とは?

パブの発祥地であるイギリスでは、どんなに田舎でも教会とパブだけはあると言われていて、誰もが行きつけのパブを持っています。人々のコミュニティの場がインターネットへとシフトしていくなか、パブは心の通うリアルでオープンなコミュニケーションを提供する数少ない場所とも言えます。

パブはPublic Houseの略で、みんなの家という名前の意味通り、人種や職業、貧富の差も関係なくみんなが平等に楽しめる自由なコミュニティであり、地域住民にとって大切な寄り合いどころ。人々の心を癒し、人々の心と心を繋げていく、そんなパブに魅了されました。

パブで働こうと思ったきっかけは?

もともとストレスをため込みやすい性格なのですが、大学在学中に所属していたチアリーディング部で東京六大学の責任者になってからは、ストレスを感じることが増えてしまって。気づいたら美味しいカクテルを飲みながら、ライブミュージックやスポーツ観戦を楽しんだり、いろんな人と話したり、パブで過ごすことがストレス発散になっていました。

そうやってパブに通ううちに、パブに訪れる人々を見守り、「みんなの家」のホストでもあるバーテンダーに憧れるようになって。日本のパブで働き始めてからは、人と話すのも人に笑顔を与えるのも好きな私にとっても、この仕事はすごく合っていると感じたので、そこからのめり込んでいきました。

いつ頃からワーキングホリデーを考えるようになりましたか?

実は中学生の時に交換留学のチャンスをインフルエンザで逃してしまって(笑)。

進学した国際高校が、自分の好きな授業を選べる選択制の学校だったので、英語の授業を選べる限り選択して週15時間くらい英語の授業を受けていました。そのあと、大学在学中にフィリピンへ語学留学もしました。

もともと留学や海外生活に興味があった中でパブに出会ったので、やりたいことも見つかったし、もう、行こうと。

イギリスではなくニュージーランドとオーストラリアへ渡った理由は?

目標はイギリスのパブで働くことですが、それにはまだ準備が必要だと感じていて。日本のパブで1年間働いただけでは、バーテンダーとしての経験も語学力も足りないので、イギリスの前にニュージーランドへ渡りました。

ニュージーランドのローカルパブで10カ月働きましたが、それでもイギリスへ行くにはまだまだ経験が足りないと感じ、ビールが美味しそうなオーストラリアでもう1年勉強することにしました。

オーストラリアとニュージーランドで働いてみて感じたのが、海外で雇ってもらうには経験が必須ということ。今のバーで働くためにも英語圏3人からのリファレンスが必要でした。

バーテンダーは資格もあるのですが、履歴書に書くなら資格よりも2年間パブで働いた経験の方が大きいとアドバイスをもらって、今は経験を積むことに専念しています。

ビザには期限があるので、イギリスに滞在できる期間を無駄にしないように、バーテンダーとしての経験も語学力もイギリスへ行く前に完璧にしておきたくて。だから今は目標に向けてバーテンダー修行中です。

海外での仕事探しは苦労しましたか?

実はニュージーランドで働いたローカルパブには、3回も履歴書を渡していて(笑)。シティのメインストリートにあるローカルパブが1店舗だけだったので、どうしてもそこで働きたかったんです。

働く前によくお客さんとして飲みに行っていたら、ある日バーテンがお酒をおごってくれて、そのまま酔った勢いで「お酒より仕事ほしい!」って履歴書を渡したら、2週間後からおいでと雇ってもらえることになったんです。

オーストラリアに来てからは、とにかく早く仕事を見つけたくて、毎日2万歩くらい歩きながらひたすらバーやパブに飛び込みで履歴書を配りました。

今働いているバーではないんですが、飲みに行った次の日に履歴書を渡したら私だと気付いたバーテンダーがわざわざ連絡をくれて。仕事探しのアドバイスやおすすめのパブを教えてくれたのは、すごく助かりました。

海外のパブで働く難しさは?

日本は「お客様は神様」という考え方なので、お客さんが欲しいと言えばお金を払う限り延々とお酒を提供していたんですけど、こちらではバーテンダーがお客さんをジャッジしてお酒を提供するかしないか決めます。酔いすぎている人には「飲むスピードおとして」とか「水を挟んで」と、お客さんに直接言う必要があるんですね。

お客さんの様子を見て判断できるかどうかというのはとても重要なことで、実は前の職場ではバーでの勤務経験やスキルはあるけどジャッジする経験が浅いからダメという理由で昇級できなかったんです。お客さん同士のケンカを止める必要もあるので女はマネージャーになれないとも言われて。それが悔しくてよく喧嘩に飛び込んだりしていました(笑)。

海外で働くには言葉の問題もありますが、生の英語が飛び交う場に身を置いたことで、学校の勉強よりも伸びたと思います。店内は音楽がうるさいので、大きな声で話さないと相手に聞こえないし、英語に自信ないなんて言っていられない状況も、語学を上達させるうえで味方をしました(笑)。

パブで働く楽しさややりがいは?

バーテンダーは、普通に生活していたら出会うことのない、さまざまな職種の人たちと知り合いになることができます。芸術家やミュージシャン、スポーツ選手、シェフ、経営者、投資家など、毎日たくさんの人にお酒を提供しているので必然的に顔も広くなります。

街を歩けば声をかけられ、店に入れば特別なサービスでもてなされ、オフの日はいろんな人に誘われと、いろんな経験をさせてもらっています。たくさんの人に出会い、大きく成長できることがこの仕事のやりがいです。バーテンダーは同業者との交流も盛んなので一緒によく飲みに行きますし、困った時には互いに助け合う家族のような絆で結ばれています。

お客さんに「日本人のバーテンダーに会うのは初めて」と言われたり、お店のメニューにないカクテルを注文されたときに、レシピを知っていて提供できたりするとうれしいですね。

花純さんにとって理想のバーテンダーとは?

「コヨーテ・アグリー」という映画の主人公に憧れていて。主人公の女の子が映画の中でへそ出しの洋服を着て、バーの上でボトル回したり踊ったりする姿がかっこいいんです。知らない地に飛び込んで生活する姿に自分を重ねてみたりして。

誰もがパブに入って最初に見るのはバーテンダー。バレリーナのようなしなやかな身のこなしで10人分のお酒を作りながら、みんなの不平を聞き、時々冗談を交え笑わせる。そんなバーテンダーになりたいです。

この仕事には長い歴史があり、大きな尊厳もあります。人としての魅力やカリスマ性を日々磨き続けなければならないと思っています。

バーテンダーとして働く上でこころがけていることは?

わたしが心がけているのは、どんな時も笑顔で接客すること、お客様の顔と名前、飲んだものを覚えること、そしてお客様の話に真摯に耳を傾けること。大学時代にチアをやっていたので笑顔には自信があって、よく笑顔を褒めてもらえます。

辛い時も笑顔でいれば不思議とポジティブになってきますし、笑顔は周りの人を幸せにし、その幸せは必ず自分に返ってきます。名前を呼んで笑顔で挨拶をし、お気に入りの飲み物を言い当てればお客様に大変喜ばれます。

お客様がバーテンダーに話しかけるときは余程話を聞いて欲しい時なので、時に牧師のように、時に精神科医のように、どんなに忙しくてもできる限り耳を傾けるようにしています。

バーテンダーを目指している人やワーキングホリデーメーカーにメッセージを!

ワーキングホリデーは目的や目標を決めていた方が充実できると思います。私自身まだ夢の途中ですが、これから挑戦する人たちも、やりたいことに目的意識を持って、それに向かって積極的に行動することが大事。

英語をやりたいなら自分から飛び込んだ方が良いし、パブってもともと良い意味で出会いの場なので、もしもパブやバーで働きたいなら実際に通って、バーテンダーやお客さんに話しかけて、友達を作るのが1番だと思います。

英語に悩んだり、どうしたらいいか分からなくなったときも、やっぱりバーに来てお酒の力も借りながら、お客さんやバーテンダーと話すのがおすすめです。学校や図書館で勉強するより、パブでお酒を飲みながら会話している方が断然楽しいですから。

自分がストレスを抱えていたときにパブに行くことでリラックスできたので、悩みやストレスがあったらパブというコミュニティの場に足を運んでほしいですね。

 

取材・文:岩瀬まさみ

柴田花純さんが働くバーはこちら

名称:St James Hotel
所在地: 114 Castlereagh Street, Sydney NSW 2000
電話: (02) 9261 8277
営業時間:平日 10:00 – 24:00、金 10:00 – 1:00、土日休
WEB:https://www.stjameshotel.com.au

名称:STAR BAR
所在地:600 George Street, Sydney NSW 2000
電話: (02) 9267 7827
営業時間:月~木 10:00 – 3:00、金土10:00 – 4:00、日12:00 – 3:00
WEB:https://www.starbar.com.au

お仕事をがんばるワーキングホリデーメーカーを大募集!

「ワーホリだから、限られた業種でしか働けないだろう」なんとなくそう思っていませんか? どんな仕事にも挑戦できるのが ワーキングホリデービザのいいところ。ワーホリお仕事図鑑では、オーストラリアで働くワーキングホリデーメーカーの方たちを応援しています。

取材にご協力いただけるワーキングホリデーメーカーの方はぜひ編集部までご連絡ください。編集部アドレス:editor@jams.tv (自薦・他薦は問いません!)

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