©︎Hiroto Yamada
2022年に創業17周年を迎えたJAMS.TV Pty Ltd。オーストラリアの在留邦人や当地事業者、政府機関・団体と共に、日豪の共感溢れる社会作りを目指し、オンラインとオフラインの両面からオーストラリアの生活・観光情報や広告サービスを幅広く提供している。
そのJAMS.TV Pty Ltd主催による「Australian Sake Awards(国際日本酒コンクール)」の審査会が、2022年9月17日(土)にシドニーにあるパディントン・タウンホールで開催された。本コンクールはオーストラリア国内外から登録された日本酒を、事前に選出されたオーストラリア人審査員が試飲して審査し、オーストラリア市場で好まれる日本酒を選出するというもの。日本酒の多様な魅力を伝え、日本酒エキスパートを育成することで、オーストラリアの日本酒市場の長期的発展に寄与する。
©︎Hiroto Yamada
各審査員はオーストラリア人ソムリエや酒販店・飲食業従事者、日本酒資格保持者、輸入・卸業日本酒担当者という「消費者に一番近い」プロフェッショナルで構成。事前に審査員向けの日本酒講義の受講が求められ、日本酒について深く学び審査会に臨んだ上、公平に評価できるよう銘柄やラベルを見ないブラインドテイスティング形式で実施された。
審査会当日は196銘柄の日本酒がラインアップされ、65名の審査員が参加。オープニングセレモニーでは、審査員代表2名、在シドニー日本国領事館の紀谷昌彦元総領事が登壇し、オーストラリアと日本の両国を結ぶ架け橋の一つである日本酒文化の発展について、それぞれ祝辞を述べた。
©︎Hiroto Yamada
本コンクールに出品可能な日本酒は、国内外問わず、合法的に製造免許を受けて製造・販売している日本酒およびSAKEであり、オーストラリア国内において販売されている、または今年度中に販売開始予定であるものに限られた。当日の審査会場は、無風で直射日光が当たらないよう配慮され、温度は20度前後、酒の温度は12度~14度程度、生酒・生原酒は5度~7度に保たれた。
©︎Hiroto Yamada
審査カテゴリーは全部で8部門あり、純米酒部門、純米吟醸部門、純米大吟醸部門、吟醸・大吟醸部門、生酒・生原酒部門、本醸造・普通酒部門、スパークリング部門、熟成酒部門。各審査員は10名ずつテーブルに着き、各自約50銘柄を試飲する中で、各出品酒に対して100点満点の加点方式で点数をつけ、各審査カテゴリーから高スコアを獲得した酒を選出した。
審査員は皆、日本酒テイスティングを各々に楽しみ、コンクールは盛況のうちに幕を閉じた。各出品銘柄に対する審査スコアおよび審査員によるコメントは、審査後にメールにて出品者全員に送られる。
本コンクールの受賞酒発表は、2022年10月1日(土)に同じくシドニーのパディントン・タウンホールで開催される「Australian Sake Festival(日本酒フェスティバル)」のステージにて、一般消費者も招いて執り行われる予定。一般消費者への認知拡大や日本酒ファンの育成などを目的とする同フェスティバルは、イベント3週間前にしてすでに完売という人気ぶりだ。
開幕の祝辞を述べた審査員リーダーのお二人に、本コンクール参加後の率直な感想を伺った。
審査員リーダーの一人、Simone Maynard氏(写真右手前) ©︎Hiroto Yamada
「日本酒コンクールはオーストラリアの酒業界にとっても新しい取り組みでした。ラインナップの中で素晴らしい日本酒との出会いもありました。今回の経験を経たASAは、今後の日本酒アワードのあり方を少し変えて、異なるスタイルの日本酒を提供してゆける立場にあると思います。コンクール全体は企画から会場までよく準備され、スタッフはとても丁寧で素晴らしい仕事をしてくれました。この日本酒コンクールがオーストラリアで初めて開催されたことを考えると、参加したことを誇りに思います」
審査員リーダーの一人、Sandra Gwee氏(写真中央) ©︎Hiroto Yamada
「全体的によく企画された、私たちの期待に応えてくれるイベントでした。成功に導いたのは、スタッフ関係者全ての働きがあってこそ。多くの日本酒を試飲する審査員のために、テイスティング構成がよく組まれ、私たちは指示に従ってスムーズに審査をすることができました。審査員の立場ながら、とても楽しいイベント体験を皆様と共有することができ、他の日豪日本酒関係者の方々ともより距離を縮めることができました」
JAMS.TV Pty Ltd取締役社長の遠藤烈士氏 ©︎Hiroto Yamada
オーストラリアでは近年、日本酒がとても人気を博している。日本酒(清酒)の日本からオーストラリアへの輸出金額で見ると、2009年には年間で0.96億円だったが、2021年には 7.30億円と7.7倍に成長、過去12年間毎年増加を続けているほどだ。これは、現地にある多くの日本食レストランや日本食材小売店、酒販店などで多様な日本酒が販売されていることからも窺える。
日本酒生産者は日本国内に1,500蔵以上あり、製品の味わいが多様である。一方で、その味の好みも消費者によって多様に分かれており、日本酒の消費は小売において情報の伝達「店員のすすめ」が重視されている。そのため、今後はより多くの日本酒消費者が、製造業者や流通業者から情報の伝達によって、自身にとって「美味しい(付加価値が高い)」と思う日本酒に出会うことで、高価格化と消費量の増加を維持することができると見られている。
そんな中、「Australian Sake Awards(国際日本酒コンクール)」はオーストラリアで初の開催となった。日本酒のコンクールをここオーストラリアで開催する意義は、「オーストラリア国内においても、消費者へ直接情報を伝達する立場にあるのは飲食店関係者や小売店関係者であり、情報伝達者を増やすこと、その情報伝達者へ日本酒知識を教授していくことが、今後のオーストラリアの日本酒市場形成に向けて最も重要な課題であるから」だと、主催のJAMS.TV Pty Ltd取締役社長の遠藤烈士氏は語る。
Australian Sake Awards審査員65名と紀谷昌彦元総領事(写真中央)、主催のJAMS.TV Pty Ltd取締役社長の遠藤烈士氏(写真右端)©︎Hiroto Yamada
「今回のコンクールは、このように安定した成長市場のオーストラリアに向けて、さらに日本酒が持つ多様な魅力を広く伝えること、高度な教育機会の創出と人材育成を促進すること、そして長期的な市場形成をしていくことを目的に開催しました。日本で心を込めて醸造された一本一本のお酒のストーリーを伝えるのは、オーストラリア国内の日本酒提供者に他なりません。
ありがたいことに、初開催ながら多くの日本酒関係者の方々が、意欲的に本コンクールへの審査員へ立候補してくださいました。このイベントは、オーストラリアでも日本酒の多様な味への理解を深めることで、日本酒に対して高付加価値を創出していくための第一歩です。人々に最も好まれている味を知ると同時に、審査会を通じた日本酒の提供者へのさらなる日本酒に関する教育、試飲の体験機会を創出し、その育成に力を注ぐために、今回のコンクールは大いに役立ったと感じています。
日本酒は日本特有のもの。今後のコンクールでも毎年50~100名の審査員を選出し、より多くの日本酒エキスパートを生み出すことを活動指針のひとつとして、日本の生産者、オーストラリア国内の提供者と消費者という、三者の距離を縮めたいと考えています。今回ご出品いただいた日本の酒蔵様と審査を担当されたオーストラリアの日本酒提供者の方々と共に、今後もオーストラリアの日本酒市場を長期的に成長させることができればと思います。
また、日本酒の多様な魅力を広く知ってもらうことは、世界でも類をみない多民族国家の象徴であり多様な文化がリスペクトされるオーストラリアとしても、国の魅力が高まることと考えています。オーストラリアは世界最高峰の食文化をもつ国であり、素晴らしい日本食、日本酒を楽しむことができる国ですから」
本コンクールを通して、日本酒情報伝達者を増やし、日本酒のさらなる認知を拡大する目的の達成について、遠藤氏は確かな手応えを感じている。「本コンクールを皮切りに、オーストラリアの消費者への情報伝達だけでなく、さらなる日本酒ファンの拡大、購買意欲喚起も目的とし、現地日本酒流通業者による日本酒即売会などを開催していく」と意気込みを語った。
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