オーストラリア酒アワード協会主催による「第2回オーストラリア酒アワード(Australian Sake Awards 2023)」の授賞式が、2023年9月29日に、在シドニー総領事公邸にて執り行われた。
本アワードはオーストラリア国内外から登録された日本酒を、事前に選出されたオーストラリア人審査員が試飲して審査し、オーストラリア市場で好まれる日本酒を選出するというもの。今年より主催がオーストラリア酒アワード協会に移り、昨年主催のJAMS.TV Pty Ltdはイベント運営を委託担当した。昨年に引き続き、日本酒の多様な魅力を伝え、現地の日本酒エキスパートを育成することで、オーストラリアの日本酒市場の長期的発展に寄与する。
授賞式当日は、シドニーの「Sakedokoro Namara」と「Daiwa Food」からウェルカムドリンクとしてスパークリング日本酒とラガービールが、「MASUYAグループ」から軽食が振る舞われ、参加者にくつろぎのひと時を与えた。
写真向かって右から、徳田修一総領事、オーストラリア酒アワード協会遠藤烈士代表、小寺博文シェフ
JETROシドニー渡邉尚之所長
酒アワード審査員代表のSimone Maynard氏
オープニングセレモニーでは、主催のオーストラリア酒アワード協会の遠藤烈士代表、在シドニー日本国領事館の徳田修一総領事、JETROシドニーの渡邊隆之代表、酒アワード審査員代表のSimone Maynard氏が登壇。オーストラリアと日本の両国を結ぶ架け橋の一つである日本酒文化発展に貢献する全てのアワード出品者を讃え、映えある受賞者に祝辞を述べた。
今回のアワードでは、全国52の酒蔵から104本の日本酒類が出品され、うち45本が入選した。授賞式当日は入選した酒蔵のうち8酒造が来場していたが、オンライン参加も可能で日本から多くの酒造が配信を見守った。会場で賞状を受け取る受賞者の表情はみな晴れやかで、周囲からは惜しみない拍手と喝采が贈られた。
授与式後には今しがたの受賞酒の数々が、参加者にその場で振る舞われた。今年の受賞酒は、授賞式の翌日9月30日と10月30日の2日間にわたって、シドニーのCarriageworksで開催された「酒フェスティバル & 江戸デジタルアート展(Australian Sake Festival 2023)」と、10月2日に同会場にて開催の「飲食・小売業者向け日本酒類商談会(Sake Trade – The Japanese Liquor and Beyond)」でも同様に展示され、来場者の注目を集めていた。
今年は在シドニー日本国総領事館の計らいから美しい邸宅での授賞式となり、徳田総領事の人柄もあり終始和やかな雰囲気に。参加者は軽食と共に個性豊かな各受賞酒の試飲を楽しみ、中秋の名月が輝く星空の下、涼やかなバルコニーで受賞酒のグラスを片手に歓談する参加者の笑顔も印象的だった。
また、在シドニー総領事専属シェフである小寺博文氏のもとには、味はもちろんのこと、その卓越した寿司や刺身の技術を一目見るため、次々と参加者がカウンターを囲んだ。
授賞式につづいて、翌日以降のフェスティバルと商談会に出席した酒造も多く、この日は誉ある受賞酒を携えて参加することができる喜びや、オーストラリアの消費者への期待、主催への今後の要望などについて熱く語る様子も見受けられた。
本アワードの運営をサポートしたJAMS.TV Pty Ltdは、オンラインとオフラインの両面からオーストラリアの生活・観光情報や広告サービスを幅広く提供している。昨年に続き、オーストラリアで2度目の「オーストラリア日本酒アワード(Australian Sake Awards)」を開催できたことを大変誇りに思うと、オーストラリア酒アワード協会の代表であり同社取締役社長の遠藤烈士氏は語った。
「今宵、私達はオーストラリアの中心で、日本の最高級の日本酒が日豪の人々を繋ぐ伝統文化と相互理解の架け橋にいます。オーストラリアは日本から遠く離れているかもしれませんが、何世紀にもわたって日本で受け継がれてきた酒造りの伝統の糸を、活気に満ちた多様なオーストラリア文化のタペストリーを彩る一部として色を添えられたら嬉しく思います。当協会主催の国際日本酒アワードは、日本の酒蔵の皆様の精巧な職人技を証明するだけでなく、個性豊かで洗練された日本酒に対するオーストラリアのからの評価と認識の高まりを祝うものでもあります」
今年で創業18周年を迎えたJAMS.TV Pty Ltdは、オーストラリアの在留邦人や当地事業者、政府機関・団体と共に、今後も日豪のより共感あふれる社会作りを目指していくという。
「第2回オーストラリア酒アワード(Australian Sake Awards 2023)」受賞酒一覧はこちら。
「第2回オーストラリア酒アワード(Australian Sake Awards 2023)」の審査会は、2023年7月22日にシドニーのCustoms Houseで実施された。昨年同様、各審査員はオーストラリアのソムリエ、日本酒の小売業者、飲食業界の専門家、日本酒の資格所持者、日本酒の輸入業者および卸売業者という「消費者に一番近い」プロフェッショナルで構成。51名の審査員は、事前に審査員向けの日本酒講義を受講した上、当日はワイングラスを用いたブラインドテイスティング方式で審査を行った。
本アワードに出品可能な日本酒は、国内外問わず、合法的に製造免許を受けて製造・販売している日本酒およびSAKEであり、オーストラリア国内において販売されている、または今年度中に販売開始予定であるものに限られた。当日の審査会場は、無風で直射日光が当たらないよう配慮され、温度は20度前後、酒の温度は12度~14度程度、生酒・生原酒は5度~7度に保たれた。
審査会当日は全51名を7名または8名ごとのグループに分け、それぞれのグループが45種類の異なる日本の酒を試飲した。全ての酒は日本全国の酒蔵から提供されている。
また、前回からの改善点として、今年は審査員がラウンドテーブルに揃うことでシーンごとのディスカッションを可能にする環境づくりや、審査員間の包括的なチームワークを向上させるなど、全ての審査員がより万全な状態で審査に臨むための工夫が見えた。審査員の半数以上は前回から継続しており、日本の酒類専門の国立研究機関である酒類総合研究所からの協賛を受け、同研究所の主任研究員である織田鍵氏をゲスト審査員に招いた上で、審査に先立ち、織田氏によるオンライン講座に出席している。
本審査会について、織田氏は「素晴らしいイベントで、日本全国の酒造りにとってオーストラリア市場への本当の入り口となっている」と今後への期待を示した。
審査カテゴリーは全部で8部門。
各酒は香り、味、バランスに基づいて10点満点で評価され、さらに審査カテゴリの評価に基づいた総合得点も付けられる。また、審査員が各酒について書面でフィードバックを提供し、そこには食事のマッチング提案などを記入できるコメント欄も含まれていた。
また、各出品銘柄に対する審査スコアおよび審査員によるフィードバックは、審査後にメールにて出品者全員に送られた。これにより、日本の酒蔵とオーストラリアの酒市場との絆がさらに強化され、日本の酒蔵がオーストラリアの酒市場をより深く理解するための一助になることが期待される。
メルボルン在住の酒サムライ*であり、本審査会のリーダーチームの一人であるSimone Maynard氏は、「日本の酒蔵にとってオーストラリアの消費者から貴重なフィードバックを得る絶好の機会。こうしたイベントを通じて、今後オーストラリアにもっと日本の酒が入ってきて、Australian Sake Awardsにもっと多くの日本の酒蔵が参加することを期待しています」と語った。
シドニーにある「Wine Knight Consulting」のオーナーで、同じく審査会リーダーチームの一員であるDennis Han氏は、「これらの賞は、オーストラリアにおける日本酒の多様性と高品質を改めて教えてくれます」と感想を述べた。
*酒サムライ:全国の若手蔵元から組織される日本酒造青年協議会が、日本酒と日本文化を愛し、その素晴らしさを世界に広めようと尽力している人に与える称号。
本アワードに入賞し、授賞式のため来豪した酒造の代表者に、率直な感想を伺った。
「広島県からオーストラリアへの輸出に本格的に乗り出した頃に、ちょうど新型コロナウイルスが感染拡大してしまい、海外に対しては身動きが取れない時期が長く続きました。ようやく取り組める状態になった今、このような賞を頂戴しましたこと大変光栄に思います。今後オーストラリアで我が社のお酒を広めていく際に、現地の消費者の方々も良き判断材料にしていただけるのではないかと期待しております。ありがとうございました」
「地方にある酒蔵が世界を感じられる機会はなかなかないので、山形県の小規模な酒蔵のお酒をオーストラリアの方々にこのように喜んでいただけて、非常に嬉しく思います。日本でもオーストラリアでも弊社のお酒を飲んでいただく方々のために、新たな技術開発を進めており、既存の商品についても日々改善に取り組んでいきたいと考えております」
「3品もゴールド賞とピープルズチョイス賞を受賞することができ、大変光栄です。私共の酒蔵がある長野県の自然は、オーストラリアの方々からスノーアクティビティでも親しまれていて、我々のこともオーストラリアで温かく迎えていただきました。今後も日本酒を通じてそうした日豪間の架け橋となれるよう、オーストラリア酒アワードには期待しておりますし、次回もゴールド賞そしてプラチナム賞を受賞できるよう励んでまいりたいと思います」
「今後もオーストラリアの人々にいろいろな日本酒を楽しんでいただきたいです。また、我々も明日の酒フェスティバルも非常に楽しみにしております。日本人だけでなく現地の方々に日本酒が広まっていくよう努力していければと思っております。居酒屋の形式や日本酒のみならず日本食など、日本の文化をそのまま現地にお届けすることで日本酒産業も世界に広がるのではないかと考えております」
「このように名誉な賞を受賞できたこと、大変嬉しく思っております。来年に向けて一からしっかりとお酒造りに向き合い、より美味しいお酒でプラチナム賞を目指して頑張っていきたいところです。今後とも兵庫は神戸の『菊正宗』そして『百黙』をよろしくお願いいたします」
「昨年に引き続き今年も受賞できたことで、日本だけでなくオーストラリアの方々に評価していただけて、世界が広がっていく感じがします。弊社には先代から続く昔ながらのお酒と、現在の杜氏である兄の世代から始めたよりモダンなお酒があり、昔のオーソドックスな手法を続けながらも、現代の方々にも合うような味を追求しております。杜氏は本当にお酒造りが好きで、四六時中お酒のことを考えながら身を削って頑張っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします」
「昨年に引き続き、今年もゴールド賞を受賞することができましたが、昨年とは違うお酒が選ばれたことから、オーストラリアの人々は好みの幅の広さを感じております。異なる品で2度目の受賞は我々にとって自信になりましたし、オーストラリアは私が新潟の越後湯沢にある白瀧酒造に入社してから最初に来た国でもあり、代理店の方々と足掛け15年余りやってきましたので、来年もぜひ出品させていただきたく思います」
「我々の宮城県の蔵から受賞した2品はどちらも特徴的なお酒で、『純米吟醸 浦霞禅』は今年で50周年を迎える歴史あるお酒、『純米吟醸 浦霞 No.12』は今年で4年目の新しいお酒と、味わいが異なりますので、ぜひそうした背景ストーリーと共に楽しんでいただければと思います。海外の中でもオーストラリアは我々にとって非常に大切なマーケットで力を入れております。今後とも変わらず、もっとみなさんに飲んでいただけるように頑張ろうと思っております」
「第2回オーストラリア酒アワード(Australian Sake Awards 2023)」受賞酒一覧はこちら。
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