豪州最大の日本酒イベントと商談会、メルボルンに続きシドニーで...
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ワーホリお仕事図鑑
「ワーホリだから、限られた業種でしか働けないだろう」なんとなくそう思っていませんか? どんな仕事でもできるのが ワーキングホリデービザのいいところ。オーストラリアでさまざまな 仕事をしているワーキングホリデーメーカーたちに注目してみましょう!
――現在の仕事をはじめるまでの経緯を教えてください。
オーストラリアに来てすぐ、4週間のバリスタコースを受講しました。7名の少人数クラスで豆の種類から始まるコーヒーに関する基礎知識を学び、毎日のコーヒー作りはもちろんのこと、履歴書の書き方や接客英語なども教わりました。クラスメイトの仲はとても良く、よく褒めてハッピーな気分にしてくれる先生と、厳しくて怖いけど責任を持って一人前にしてくれる先生の、飴と鞭で育てられた感じ(笑)。
コース卒業後は、ボンダイからマンリーに移り、住まいの近くにあるカフェというカフェに履歴書を配って回る日々。仕事が決まらない時期はやっぱり落ち込むこともあったけれど、マンリーの自然や友達からやる気を充電しつつ、バリスタの仕事探しに専念しました。カフェ経験ゼロからの挑戦だったのでショッピング・モールのカップ・ケーキ屋でバリスタとして働けることになった時はひと安心。けれど、給料を支払わないというオーナーとのトラブルから、1カ月ほどして退職することに……。
もともと常連さんが多い地元の小さなカフェで働くことに憧れていた原点に戻り、またバリスタの求人を探していたときに、マンリー・ヴェールでとあるカフェを発見。地域に密着したその店の名前「The 2093 Postcode Project(地元の郵便番号が店名になっている)」に惹かれて応募したところ雇ってもらえました。
――オーストラリアを渡航先に選んだ理由は何ですか?
オーストラリアに来る前は、フィリピンに短期の語学留学をしていました。そこからオーストラリアのシドニーを選んだのは、本格的なコーヒーをゼロから学びたかったことが一番の理由。カフェ大国と聞いていたし、実際にコーヒーマシンを使用できるところで英語にプラスアルファでコーヒーの作り方を学ぼうと思ったんです。
最初のころは学校側から手配されたクージーのお宅でホームステイをしていましたが、たまたまクライスメイトのひとりが住んでいるマンリーを案内してもらったところ、シェリー・ビーチやサウス・ヘッドの美しさとのんびりした街に一目惚れ! 即決で引っ越しました(笑)。
――仕事を始めてみての感想を教えてください。
オーナーやスタッフの話す英語の訛りやアクセントが各自まったく違ったので、最初は英語でコミュニケーションをとることから苦労しました。カフェは常連の方ばかりで、ひとりひとりの決まったオーダーや顔と名前を覚えたりするのも大変で。オーストラリアの人たちはコーヒーに並々ならぬこだわりがあるので半端なものは出せないし……。慣れてくるに連れて接客中に世間話もできるようになりました。
そのころはスタッフの入れ替わりが多く、オーナーも新店舗の立ち上げで店を空けることがしょっちゅう。結果、人手不足になって店を自分だけで回さないといけない状況に追い込まれていました。バリスタとしてはもちろん、サーブするドリンクやランチに出すフードの調理まで、オールラウンダーとして全部ひとりで切り盛り。私しかいないので店の開け閉めも売上管理も、食材や備品をチェックしてオーダーする必要もありました。そういう状態ですから、やっぱり忙しい時間帯には行列ができて、お客様を長く待たせてしまうこともしばしば。でも理解してくれる方が多かったことと、細々としたことを手伝ってくれる常連の方々に助けられました。
土曜日の忙しい時間帯にものすごく混んでしまい、私ひとりでどうしようもなくなったことがありました。そのとき、毎日来てくれていた常連の方が、他のお客様にオーダーを聞いておいてくれたり、たまった食器まで洗ってくれたりしたんです。「次はどうしたらいい?」などと聞いてくれたりして。申し訳ないと思うと同時に胸が熱くなりました。
――仕事をする上での苦労を、どのように乗り越えていますか?
いろいろな国籍のスタッフがいましたが、大半が頻繁に入れ替わっていたので、新人が入るたびに店のシステムを一から説明したり、自己紹介から始まるコミュニケーションをうまくとったりするのに、ひどく難儀したんです。
接客の場合だと、私ひとりの時間はどうしてもお客様を待たせてしまうので、コーヒーを作っているあいだに会話をつなげたり、店にある試食を渡したりして、なるべく「待っている」と感じさせないように心がけていました。それから、店でトラブルが起こった場合や、お客さんから良くも悪くも意見をいただくと、その都度きちんとオーナーに報告して次回から改善できるように努めました。やっぱり、お客様にはコーヒーを買うだけじゃなくて「このカフェに来て良かった」と思ってもらいたいですから。
――現在の仕事を通じてよかったこと、成長したと思うことはありますか?
何も知らないところから始めたので、当然、失敗の繰り返し。そのたび、お客様に迷惑をかけてしまい、正面きって怒られるなどつらいことも山ほどありましたが、「君のコーヒーがおいしいから友達も連れてきたよ」と再訪してくれる方や、私のラテアートを見て「かわいい!」と喜んでくれる方、忙しいときに助けてくれる方。素敵な人々との出会いもあり、苦労以上にやりがいを感じました。自分で判断して責任を持って行動する、思ったことをしっかり伝えるといった部分は、自分でも特に成長したと思います。
オーナーがディーワイに新店舗「The Postcode Project 2099」をオープンした際は、他のスタッフじゃなく私に店を任せてくれて、仕事において信頼されていることが分かって本当にうれしかったです。新店舗もほとんど私ひとりで切り盛りしていましたが、だんだん毎日見る顔が増えてきたり、近所にある店の方々が店にひとりでいることを気にかけて覗きにきてくれたり、賑わうシティから離れた閑静なディーワイにあるカフェでも、人々の優しさがあふれていて、ちっとも寂しくありませんでした。
10人くらいの家族連れの方々は日本について興味を持ってくれて、最後は日本の挨拶を覚えて帰られましたし。イギリスから娘に会いにきたらしいおばあちゃんと話してみると、彼女の滞在先が私の家のすぐ隣だったと判明して、後日、彼女が他の家族を連れてまたカフェに遊びにきてくれました。郊外の小さなカフェですから、コーヒーを作るだけじゃなくて、お客様との距離が近く仲良くなりやすくて、楽しいことがたくさん! 本当に大勢の人に支えられていたことに感謝しています。
――最後に、今後の目標を教えてください!
オーストラリアに来る前は、単に英語やコーヒーが好きだから勉強してみたいという気持ちでしたが、実際に現場で働いてみると、コーヒー作りの奥深さや日本とは異なる多国籍文化を基盤にした接客の違いを身に感じて、もっとコーヒーや接客について学びたいと思うようになりました。将来は自分のカフェを持てたらとも夢見ていますが、とにかく今はワーキングホリデーも終わるので、この国で得られた貴重な経験と知識を無駄にしない、楽しい仕事をしていきたいですね!
★The Postcode Projectのホームページはこちら
取材・文:武田彩愛(写真は一部ご本人より提供)
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編集部アドレス:editor@jams.tv
連載『ワーホリお仕事図鑑』の過去記事一覧はこちら
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