大事な人が亡くなる、別れを告げられる、慣れた環境が変化するなどで、それまでその方にとって大事であった対象を喪失した時、私たちは反応性のうつ状態におちいることがあります。
その「喪の作業」をグリーフと呼びます。それには一定期間をかけたこころの作業が必要だと言われていますこの作業はご自分でも可能なことはありますが、カウンセリングに来て、安全な環境の中でご自分の気持ちを何でも表現できることによって、その作業を刺激・促進することができます。
こんな例をお話することがあります。グリーフのプロセスを進めて行くのは、独学でピアノをマスターするのと、先生についてマスターするのに少し似ている。独学でも不可能ではないが、グリーフ・カウンセリングに来ることによって、定期的に刺激されて、プロセスはより確実に進みやすいと言えるような気がします。
グリーフには一般的に次のようなプロセスがあると言われています。パークスの提唱した四つのフェーズです。
1.心の麻痺:それが本当に起こったということが、どこか実感できない。
2.探索と切望:探しまわり、亡くなった人や状況のことばかり考え、高い覚醒状態で怒る。
3.混乱と絶望:失ったものが取り戻せないことを確認して、うつ症状が続く。
4.回復と再編:アイデンティティ、外界把握の見直しと再編。変化を受け入れ活力が戻り、社会性が向上。
これらは段階ではなくphaseと呼ばれており、一個一個進むのではなく、いくつかが同時進行したり、行ったりまた戻ったりして少しずつ進んで行くと言われます。このプロセスの進展に共感的な理解で伴走するのが、グリーフ・カウンセリングです。
20年以上にも及ぶ長い心理臨床活動の中で、グリーフ・カウンセリングは何度も経験しています。クライエントと本人は「こんな取り乱したところを見せて情けない。つきあってくれるのも大変でしょう」などと言ってくださるのですが、いつも基本的に私の胸にあるのは、「人生の大きな困難があった時に、それを乗り越えてだんだんと前に進んで行こうとされるプロセスにおつきあいさせていただいて光栄だし、人間ってすごいなあというのを見させていただける」という気持ちです。
人生の中では何回か経験するのも避けられないグリーフ。私にだって何回もありました。そのプロセスに、もしよろしければ喜んでお供します。
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