住宅保険には、建物の保険と家財の保険の2種類があります。賃貸で入居している場合には、建物に対する保険にオーナーが加入しているのが一般的ですので、テナントとしては家財に対する保険に加入することになります。家財とはカーテンやカーペットなども含む自分の資産全てです。保険金額の設定には、家財全体の再調達価格を算出する必要があります。対象がたとえ10年前のテレビであっても、同等のテレビをいま購入すると幾らになるのか、減価償却を考えずに値段設定するのが再調達価格です。逆にパソコンなどは数年前より値段が下がっていますので、昔の価格で保険をかけていると結果的には余分な保険料を支払うことになります。また、日本から持ち込んだ物については、日豪間の価格差も考慮する必要があります。
また、貴金属や宝石、美術品、骨董品など、定価がなくてその価値に幅がある物については、保険加入時に申告した金額を証明する鑑定書や購入時の領収書などを用意する必要があります。もし書類が一切ない場合は、保険金求償をする際に保険会社ともめる原因のひとつとなります。これら貴金属や時計、カメラなどは通常、盗難被害に遭いやすいハイリスクアイテムと見なされ、一般的には補償額に限度があることが多いです。ハイリスクアイテムに実際の価額まで保険でカバーしたい場合には、事前に保険会社に物品の詳細と価格を申告し、特記物品として登録する必要があります。
なお賃貸の場合の家屋については、通常、建物に何か損害が発生した場合は賃貸契約上オーナーが自分の保険を使うことになります。ただし損害の原因がテナント側にあった場合は、オーナーは自分の保険を使わずに支払いを求めてきたり、一旦オーナーの保険を使って、後日オーナーの保険会社からテナントに損害賠償責任を求めてくることもあります。その場合、重要なのが家財保険に自動付帯されている賠償責任保険です。この保険は対物・対人の賠償責任保険で、例えば賃貸で住んでいるフラットで自分の過失でボヤを起こした場合や、お風呂の水を溢れさせて階下の部屋にダメージを与えてしまった場合など、過失が証明されれば保険求償が可能となります。「自分の資産は保険を掛けるほどたいした物はないので大丈夫」という方がいますが、他人に損害を与えてしまった場合など、その賠償額は自身の資産額をはるかに超えることも多く、そういう場合に備えて賠償責任保険が自動付帯されている住宅保険の加入を検討されることは有効です。住宅保険の加入は、個別のセキュリティー状況や住環境によって保険料も大きく変わりますので、専門家のアドバイスを求めるのが良いでしょう。
斎藤 大さん
●エーオン・ジャパン保険サービス
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