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シドニーで飲食・小売業者向け日本産酒類の商談会が開催

シドニーで開催された「酒フェスティバル & 江戸デジタルアート展(Australian Sake Festival 2023)」に合わせて、飲食・小売業者向けのBtoB商談会「Sake Trade – The Japanese Liquor and Beyond」が、10月2日(月)、シドニーのCarriageworksで開催された。

また、対面商談会に先立って午前10時から、日本から参加できない酒蔵・酒造メーカーのためのオンライン商談会、午後12時から専門家を招いた飲食・小売業者向けのレストラン向け日本酒セミナーも同日開催された。

本イベントは日本政府の協力のもと、「酒フェスティバル」の主催者であるJAMS.TV Pty Ltdが主導して開催された。近年、日本政府では日本産酒類の一層の輸出拡大を図るため、海外における日本産酒類の認知度向上および販路拡大に向けて取り組んでいる。本イベントもその一環として企画され、日本酒をはじめとする日本産の酒類や食品の取引に関心のあるオーストラリアの卸売業者や小売業者、飲食店などを対象としたBtoB商談会を設けることで、オーストラリアにおける日本産酒類のさらなる販路拡大を狙う目的だ。

「酒フェスティバル」にも出展していた多数の日本の酒蔵や食品メーカーや現地輸入卸業者が参加し、200種類以上の日本酒や果実酒、ジンなどの日本酒類が展示された。そのすべてを試飲・試食することが可能で、日本各地の酒蔵・酒造メーカー、食品関連事業者、小売業者、地元の酒類・食品事業者と直接商談できるまたとない機会となった。

当日は、当地の飲食・小売事業者100名がレストラン向け日本酒セミナーに参加し、146名が対面商談会に参加、当地の輸入卸業者4社がオンライン商談会に参加。本セミナーを受講したオーストラリアの飲食・小売業者のほとんどが、午後1時からの対面商談会にバイヤーとして参加している。

会場には「酒アワード(Australian Sake Awards 2023)」の映えある受賞酒一覧も展示され、参加者からの注目を集めた。

オンライン商談会の様子

午前中に開催されたオンライン商談会は、3タームに分けて実施された。シドニー会場と日本の各酒蔵・酒造メーカーの担当者とをZOOM通話でつなぎ、あらかじめシドニー会場に搬入されていた酒蔵・酒造メーカーの商品を、当日オーストラリア現地のバイヤーが試飲し、その酒蔵・酒造メーカーの担当者と通訳を通してリアルタイムで商談を進める形式で行われた。

どのタームも終始和やかな雰囲気で進行し、オーストラリアのバイヤーからは、試飲した商品と日本食とのペアリングについての質問が多かったが、どの酒蔵・酒造メーカー担当者も一人ひとりに時間をとって回答し、どのような日本食と合うのか、どのような飲み方を希望するかなど、自慢の自社商品を丁寧に紹介。日本酒への熱意を通して現地バイヤーと良好な関係を築いていた。

レストラン向け日本酒セミナーの様子

正午から開催されたレストラン向け日本酒セミナーでは、各席に試飲用の日本酒5種とペアリングフードが置かれ、参加者は実際にペアリングを体験できた。

日本酒のエキスパートであるWayne Shennen氏とSimone Maynard氏は、日本酒のスタイル、サービスウェア、フードペアリング、販売のヒント、親しみやすい日本酒のPR方法など、さまざまな日本酒トピックについて解説し、Q&Aセッションの時間も設けられた。

東京を拠点とするWayne Shennen氏は、オーストラリア、ブラジル、日本、イギリスなど国際的に知られるソムリエ。『Wine Australia』の「50 Sommeliers of the World」プログラムに選出、「New Zealand
Sommelier of the Year competiton 2017」で2位に入選した認定ソムリエ(Court of Master Sommeliers)であり、日本の酒蔵で働いた後に著書『Demystifying Sakè』を出版した。ワインと日本酒関連のその幅広いネットワークと専門知識が高く評価され、コンクールの審査員や飲料専門家向けの教育イベントの講師として、食品・飲料業界で広く活躍している。

メルボルンを拠点とするSimone Maynard氏は、日本酒と日本文化に深い情熱を持ち、食品・飲料業界で20年以上の経験を持つ。日本酒とその豊かな歴史をオーストラリア国内外に広めることを目指し、日本酒のコンサルタント、プロモーター、教育者として活躍している。2020年からは「Taste with the Toji(杜氏と利き酒)」プロジェクトを創設・主催し、2022年には「酒サムライ(日本酒と日本文化を愛し、その素晴らしさを世界に広めようと尽力している人に与える称号)」を授与された。

オーストラリアの卸売業者や小売業者、飲食店関係者として、参加者はみな真剣な面持ちで2人の日本酒エキスパートの講義に聞き入り、今後日本酒を取り扱うための知識を仕入れていた。

今回のセミナーでテイスティングに選ばれた個性的な日本酒は以下の通り。

  1. 吉田酒造「月山 スパークリング」
  2. 桃川「桃川 ワイン酵母仕込み純米吟醸酒」
  3. 土田酒造「木もと仕込み 純米吟醸酒」
  4. 竹鶴酒造「竹鶴 純米吟醸 初しぼり 生」
  5. 木下酒造「玉川 Time Machine 2021BY」

Wayne Shennen氏からのコメント

「オーストラリアの人々も日本酒に対して多くの関心を持っていますが、それについて知識を得る機会はあまりありません。ですから、彼らが日常的に日本酒を味わったり、経営者としてメニューに取り入れたりするための方法を提供できる機会は、我々としてもありがたい限りです。飲食の中でも、お酒を飲むという体験は人々に心地良さを与えるものです。今回のセミナーで、日本酒を飲む心地良さを、参加者にも体験してもらえたかと思います。

10年前あるいは15年前、オーストラリアのシドニーで日本酒の知識を持ち日本酒を取り扱えるオーストラリア人はほとんど誰もいませんでした。メルボルンとブリスベンに1カ所ずつという程度で、日本酒を楽しむには日本まで行かなければいけなかった。それが今は国内に多くの日本食レストランがあり、日本酒を取り扱う店も増えたので、日本酒を広める活動を始めた甲斐があったというものです。私自身もより多くの人とより多くのものを手に入れることができ、5年前には日本にレストランをオープンする夢も叶いました。今後もオーストラリアでの日本酒の認知拡大に貢献していきたいですね」

Simone Maynard氏からのコメント

「今回のセミナーで、参加者のみなさんが何かしら手応えを感じてくれたことを期待しています。日本酒を理解していただくために、オーストラリアの食べ物とのフードペアリングをしたり、個性的な日本酒をピックアップして味の違いを感じてもらったり、日本酒をより楽しみより多くのことを学ぼうとするオーストラリアの人々が集まったこの機会に、さまざまな挑戦ができて良かったです。これを機に日本酒の存在が多くのオーストラリア人にもっと認知されることを願っています。そのために、今後も日本酒関連イベントのサポートをしていければと思います」

対面商談会の様子

対面商談会では、酒蔵・酒造メーカー40が一堂に会し、会場奥にはフードペアリング用の日本食も用意された。レストランセミナーが開かれたElston roomと対面商談会が開かれたBay 25は会場内で入場口を挟んで隣接しており、午後はセミナー会場で歓談や休憩を挟みながら商談会のブースをこまかく巡回するバイヤーの姿が見られた。

出展者からは「オーストラリアの場合、まだまだ日本酒が認知されていないため今後も継続的に出展を考える必要がある」、「各レストラン経営者の方々ともっと腰を据えて話してみたい」「さまざまな関係構築ができたが、次回があれば当日販売も取り入れ、さらに本気度の高い商談をしてみたい」といった積極的な意見が多かった。

4日間の日本酒関連イベントすべてに出展した酒蔵・酒造メーカーもあり、全体を通してみるとオーストラリアでは日本酒と日本食の食文化のみならず、来場者の興味が日本の伝統文化から、観光、歴史、そして現代文化まで多岐に渡っていることが窺える。そのため、飲食に限らない幅広く日本と繋がるフェスティバルおよび商談会の発展が今後大いに期待される。

対面商談会出展者の方々




全ての写真:Sayu Matsunaga

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