シドニーからサンシャインコーストのストロベリーファームに移り、オーストラリアでのワーホリ生活を再出発させた伊吹真里江さん。英語環境を求めて飛び込んだローカルの仕事場での経験を経て、今の自分に合ったベストの選択肢がファームに行くことだった。
英語に対する向上心を軸に、自ら手繰り寄せた人々の温かさと自然に沿ったオーストラリアの生活に触れ、日本に居た時とはまったく違う1日を過ごしている。
ワーホリのお仕事としては一般的に知られているファームジョブだが、意外と知らない現地での生活や仕事内容について、日の出から働く彼女に訊いてみた。
伊吹真里江、28歳。大阪出身です。日本では、大学卒業後に5年ほど化粧品会社に勤め、大阪・心斎橋の百貨店で美容部員をしていました。
オーストラリアに渡ったのは2017年の11月頃です。初めにシドニーで1カ月間ホームステイをしながら語学学校に通いました。卒業してからは、ローカルに絞って職探しを始めたのですが、50枚以上レジュメを配ってもなかなかいい仕事が見つからなくて。
その中で、なんとかカフェでの採用をいただけたのですが、働くなかで私の英語力が問題となり、他の従業員やお客様と思ったようにコミュニケーションが取れずに悩んでいました。
やはり英語習得には時間がかかるなということを思い知り、セカンドビザを取得することを決意、そして数週間で身辺整理をして、4月頃から今のストロベリーファームにやって来ました。
シドニーでの語学学校の1カ月が終わったら、もうちょっとスムーズに仕事が決まるかなと思っていたのですが、ちょうどサマーホリデーの時期に入ってしまい、なかなか面接のアポイントメントも取れないような状況でした。
また、募集しているのがパートタイムだけだったり、トライアルまで行くのですが、本採用までいけなかったりと、未経験者が最初からローカル一本に絞って職探しをするのは、かなり難しいことなんだと実感しました。
予想外のできごともありましたが、不幸中の幸いだったことは人に恵まれていたことです。シドニーの語学学校では仲のいい友人ができましたし、ホームステイ先のホストマザーもすごく親切な人でした。今のサンシャインコーストのハウスメイトも家族みたいによくしてくれるので、きつい経験をしても毎日楽しめているのだと思います。
やはりワーホリの目的が英語力の向上なので、ファームもできるだけ日本人が少ないところを選びたいと思っていました。最初は、英語の求人サイトを使って探していたのですが、調べれば調べるほどにファームの悪い噂が出てきて……。
最終的には、語学学校でできた台湾人のベストフレンドが「いいファームだよ」と、おすすめしてくれたところに決めました。「セカンドビザが取れない」、「賃金が異様に低い」、「アコモデーションが写真と全然違った」など、トラブルも多いみたいですし、やはりネットの情報だけでは不安ですので、経験者から紹介してもらえるのは安心です。
クイーンズランドのサンシャインコーストにあるストロベリーファームで働いています。ファームのオーナーはオーストラリア人です。
仕事内容は、初めはいらない茎や雑草を刈り取るトリミングからやり始め、イチゴが実ってきたら、座りながら作業できる台を使ってイチゴをピッキングします。時期によってはトリミングの作業もしながら並行してイチゴを採ることもあります。
今の時期(5月末)はしっかり週5で仕事があるのですが、来たばかりの頃(4月下旬)は週3しか仕事がないこともありました。仕事終わりに「明日は休みです」か「同じ時間に来てね」と言われ、そこで次の日のスケジュールを知ることになります。
働く時間は日によって変わりますが、長い時には朝7時から3時、早い時はお昼前に終わります。天候や栽培しているストロベリーの成長スピードなど、自然が関係することもあるので、それもその日にならないと分かりません。
ファームが管理しているシェアハウスに住んでいて、そこからはショッピングセンターに行くにも車がないと行けない状況ですので、シティでの生活と比較すると少し不便かもしれません。
最寄り駅までも車で15分くらいかかりますし、車がないと何もできないです。でも、今のシェアハウスには自由に使える車が2台あるので、自分たちで運転できれば、好きにいろいろな場所に行くこともできるので、楽しいですよ。
英語環境的には、私のシェアメイトが台湾人と韓国人なので、家でも職場でも英語を話す割合が必然的に多くなります。休日も一緒に過ごすことが多く、シドニーで生活していた頃よりも、確実に英語を話す機会は増えました。
正直、ファームでの収入は思っていたよりもよくなかったですね。週3でしか働けなかった頃には、家のレントを払って、食費を差し引いたら、ほんのわずかしか残りませんでした。
私が働いているストロベリーファームのピッキングの場合は、多くて週5回の勤務になりますが、オンシーズンでは忙しくて休みがない状態にもなるそうです。多くの人はセカンドビザを取得するためにファームで働いていると思うのですが、88日勤務がセカンドビザの最低基準なので、経済的にもビザ取得のためにも、シーズンを見極めて応募するのが重要かもしれません。
賃金の計算は何をするかによって変わります。例えばトリミングの場合には、1メートルでいくらというレートが決められていて、それも週によって変わります。ピッキングの場合は収穫した重さによって異なります。仕事は肉体労働なので、やはり女性よりも身体能力が優れている男性の方が稼げると思います。
生きていくうえで本当に大事なことを感じられるようになりました。
例えば、毎朝5時半に起きて、朝日を見ながら仕事をする生活を送っているわけですが、ふとした時に「一日はこうやって始まっていくものなんだ」と感じるようになって。暖かな陽射しを浴びながら、「今日も絶対いい日にしよう」という気持ちで一日をスタートさせています。
そういうことって、日本にいた頃には感じたこともなかったし、それもファーム生活ならではの経験なのかなと思います。
8月頃まではファームで働いて、セカンドビザ申請の条件を満たしたら、バイロンベイに移ろうかと思っています。そのあとのことはまだ具体的に決めていませんが、その時に感じたフィーリングを大事にしていきたいです。
元々、日本では化粧品の販売業をしていたり、学生の頃からサロンのヘアモデルをやらせていただいていた経験はあったのですが、ラッキーなことにシドニー滞在中にも、インスタグラムを通してファッションモデルのオファーをいただけました。思わぬところにチャンスは転がっているんだなと感じたので、そういった機会をいただけた場合には、積極的になんでもチャレンジしていきたいですね。
数年前までは心斎橋のデパートで化粧品を販売していたのが、今や畑仕事をしているわけで、自分でもそのギャップに驚きます。それでも、意外としっくりきている部分があるのも面白いなと。未来は自分次第で創っていけるんだってことがわかったので、これからもワクワクするような人生をこれから歩んでいけたらなと思います。
取材・文・写真:德田 直大
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