前回は、新型コロナウィルス対策が続く中、家庭内暴力(DV)が増加している状況について説明しましたが、今回は経済的DVについて詳しく解説します。
オーストラリアでは、経済的DVは「financial abuse」もしくは「economic abuse」と呼ばれ、政府、家庭内暴力関連の研究・調査機関、相談・援助センターや金融機関などの間で、 以前にも増して注目されてきているDVのタイプの一つです。
経済的DVとは、パートナーや家族が金銭的な自由を奪う行為です。このような行為は、被害者を経済的だけでなく、精神的にも追い込むことになります。家庭によって経済的な状況が異なるため、経済的DVを受けていても、それが普通と思い込んだり、自分のせいと思い込んだり、被害を受けていると自覚していないケースが多く見られます。
また、加害者も経済的DVを与えているという自覚がない場合も多いようです。言葉による虐待と同じように、経済的DVも知らぬ間に進み、身体的虐待へエスカレートすると言われています。
できるだけ早く経済的DVを受けていると被害者自身や周りの人が認識し、どのように対処すべきかを考える必要があります。
経済的DVは、世帯収入や居住する地域に関係なく起こりうると言われています。アザや傷が見える身体的な暴力のDVと違い、経済的DVは外から見えないということと、金銭的なことで家族や友人に相談しにくいということもあり、時間が経つにつれ状況が深刻化し、被害者がさらに追い詰められてしまうことになります
自分が経済的DVを受けているか、認識していないかもしれません。次のチェックリストで、あなたのバートナーや家族は次のような行動を取っているか、確認してみましょう。
心当たりはありましたか? つらいと感じていても、「別れたらやっていけない」とか「子供がいるから」と我慢していませんか?
「もしかして、経済的DVかも」と思ったら、まずはできるだけ早く弁護士に相談してみましょう。他の法律分野を視野に入れた包括的な対処が必要であることも大いにあり得ます。もちろん、身の危険を感じたら迷わず警察(000)に通報しましょう。
DV全般に関する専門機関として、オーストラリアでは、全国ネットワークや各州などでいろいろなサポートセンターの相談窓口があります。
・1800RESPECT
National Sexual Assault Family Violence Counselling Service 1800 REPECT
Phone: 1800 737 732
日本語を希望の場合は、無料通訳サービスTIS(131450)から、日本語を希望し
「1800 RESPECT」に繋いでもらうこともできます。・MensLine Australia
Phone:1300 789 978
男性被害者向けの相談も可能。
【ACT】
Domestic Violence Crisis Service (DVCS)
Phone: (02) 6280 0900
【NSW】
NSW Domestic Violence Helpline
Phone:1800 656 463
【VIC】
Safe Steps
Phone:1800 015 188
【QLD】
DVConnect
Phone:1800 811 811
【WA】
Domestic Violence Helpline
Phone:1800 007 339
【SA】
Domestic Violence Crisis Line
Phone:1800 800 098
【TAS】
Safe at Home Family Violence Response and Referral Line
Phone:1800 633 937
Family Violence Counselling and Support Service
Phone:1800 608 122
【NT】
上記の1800RESPECTに相談。
・Family Violence Law Help
家庭内暴力と法律についての解説、各種サポートサービス等の情報案内。・Specialist Domestic Violence Units
各州や独別地域におけるDVスペシャリストサービスを無料で提供するコミュニティ法律相談センターなどの紹介。・Legal Aid
各州、特別地域における無料法律相談のLegal Aidの紹介。
・National Debt Helpline
光熱費、クレジットカート、家賃、住宅ローンなどの相談。
Phone:1800 007 007
・Salvation Army
Phone:13 72 58
・St Vincent de Paul Society
Phone: 13 18 12
※ウェブサイト内で該当の州を選び、Domestic and family violence issuesをクリック
自分で連絡を取るのが難しい場合は、身近で信頼できる人(GP、職場など)に相談し、支援センター等に代わりに連絡を取ってもらえるよう頼んでみることも選択肢の一つです。
また電話はいざという時に使えるように充電しておく、日記などで記録をつける、大事な書類はコピーしておくことも大切です。
いざ家を出なければいけない時の緊急脱出バッグのチェックリストはこちら。
底なし沼とまで言われる経済的DV。パートナーと関係を終わらせたあとでも、短期的にも長期的にも被害が続くことが多くあります。新生活をスタートするにも、貯金がなかったり、借金が残っていたりするだけでなく、強要された借金やクレジットカードの返済問題で金融機関における被害者の信用スコアが下がっていれば、後々の経済的自立を目指す際の足かせとなることもあります。
経済的DVが深刻化する前に、専門家や専門機関に相談してみましょう。
※本記事は、法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。
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