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国際化が進むにつれて世界中の国境を越えた移動や国際結婚が増加する中、それに伴い、子どもを持ったのち、一方の親が国境を越えて子どもを連れ去ってしまうことが大きな問題となっています。
子どもの連れ去りは、その子どもにとって生活環境が急変するのみならず、他方の親族間との交流が強制的に断絶されてしまう他、異なる言語や文化にも対応せざるを得ないなど、大きな影響を与える可能性があります。
この連載では、国境を越えて子どもが連れ去りによっておこるさまざまな悪影響から、子どもの利益を守ることを目的として定められた「ハーグ条約」について、『外務省ハーグ条約室(日本中央当局)』監修のもと、全4回にわたって詳しくご紹介します。
一時帰国や離婚などの理由があっても、国境を越えて子どもをもう一方の親の承諾を得ないまま連れ去った場合、「ハーグ条約」の対象になる可能性も。特に以下に当てはまる方は、意図せず当事者になってしまうことのないよう、「ハーグ条約」について正しい知識を学んでおきましょう。
「ハーグ条約」は、正式名称を「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(Hague Convention on the Civil Aspects of International Child Abduction)」と言い、1980年にオランダのハーグ国際私法会議で採択された国際的な条約です。国境を越えた子どもの不法な連れ去りによって起こる、さまざまな悪影響から子どもの利益を守ることを目的として成立しました。
日本において「ハーグ条約」が発効されたのは2014年で、現在の締約国は日本を含めて101カ国(2020年11月現在)です。
次の動画に「ハーグ条約」の仕組みが分かりやすく説明されているので、さっそく観てみましょう。
(動画が表示されない方はこちら)
以下は、動画の内容を整理した「ハーグ条約」の基本的な適用条件と用語の説明になります。
「ハーグ条約」に関する法的手続きは、子どもの元いた国に残された(子どもの監護の権利を侵害された)親が、「ハーグ条約」の適用条件に基づいて中央当局に申請をすることから始まります。残された親がオーストラリアに在住している場合は、「オーストラリアの司法長官省」を通して申請するか「日本中央当局のハーグ条約室」に直接申請することができます。
上記の図は、その申請後の流れを表したものです。子どもの両親である当事者同士の話し合いで友好的に問題を解決できると望ましいのですが、解決が難しいのであれば、子どもの外国返還裁判の手続きを進めることになります。
以下の図は、その裁判手続きの流れを示しています。
裁判を行う場合、外国への子どもの返還を望む親は、外国返還裁判が行われる東京家庭裁判所か大阪家庭裁判所のどちらかに申し立てをする必要があります。
通常、裁判手続きは迅速に進み、裁判所が判断する前に裁判所内にて調停が行われることも多くあります。調停では、「子どもを元いた国に返すか否か」以外のこと(婚姻費用、子どもの監護、面会交流など)についても、裁判官を交えて両当事者間で柔軟に話し合うことができます。
その結果、両当事者が子どもの返還・不返還に合意できた場合、「ハーグ条約」に関する法的手続きは終了します。
しかし、調停でも両当事者のあいだで合意が見られない場合、裁判所によって「子どもを元いた国に返すか否か」が判断されます。
子どもの外国返還裁判では、以下のような事柄が判断されます。
ここで注意したいことは、子どもの外国返還裁判は「子どもを元いた国に返すか否か」について判断する手続きであり、「子どもの監護権や親権を誰が持つのか」について判断する手続きではないということです。
「ハーグ条約」では「子どもの監護権や親権を誰が持つのか」については、「子どもが元いた国で話し合うことが子どもの福祉に適う」とされています。そのため、子どもの外国返還裁判において、子どもを元いた国にまず返すことが原則とされています。
そうした裁判所による「決定」と呼ばれる判断にどちらかの当事者が不服であれば、次の裁判第2審へと進む「即時抗告」を行うことになります。
次の架空の例で、意図していたか否かに関わらず、オーストラリアから日本へ子どもの連れ去りに当たるケースを見てみましょう。
このように、ホリデーや一時帰国などを理由に、もう一方の親がオーストラリアからの出国を承諾していたとしても、その帰国予定日を過ぎてオーストラリアに帰国しない場合、連れ去った親は子どもを日本に「留置」していると見做されることもあります。16歳未満の子どもを連れてオーストラリア国外へ渡航する際には注意しましょう。
その他、子どもを連れた日本への帰国を決意する背景には、さまざまな事情があることでしょう。しかし、オーストラリアで法的な手続きを終えないまま日本に戻った場合、日本で新たに直面する法的な問題も多々あります。
子どもに悪影響を及ぼさないためにも、子どものもう一方の親の同意なく日本に戻ることを決断する前に、親の責任として「ハーグ条約」の仕組みや手続きなどを知っておきましょう。
「ハーグ条約」は、① 監護権の侵害を伴う ② 16歳未満の子どもの ③ 国境を越えた移動を適用対象とし、子どもを元の居住国に迅速に返還するための手続きや、国境を越えた親子の面会交流を実現するための締約国間の協力について定めています。
「ハーグ条約」の仕組みや手続きなどで不明な点がある場合は、下記の『外務省ハーグ条約室』へ相談することができます。
次回の連載では、子どもを持つオーストラリア在住の方、オーストラリアへの移住を検討している方が知っておくべき「ハーグ条約」について、さらに詳しい情報をお伝えします。
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または、オーストラリアの在外公館(大使館・総領事館)でもオーストラリアに住む日本人からの相談を受け付けています。海外暮らしにおいて、国際結婚や国際離婚による子どもの問題のほか、何らかの事件や事故被害、DVや家族問題など困ったことがあれば、こうした機関へすぐに相談することをお勧めします。※受付時間は全て現地時間です。
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