パートナービザ(配偶者ビザ)申請のために知っておくべきこと
オーストラリア政府公認移民法コンサルタントの「Access Visa(アクセス・ビザ)」では、永住ビザや一時滞在ビザなど、日々…
国際化が進むにつれて世界中の国境を越えた移動や国際結婚が増加する中、それに伴い、子どもを持ったのち、一方の親が国境を越えて子どもを連れ去ってしまうことが大きな問題となっています。一時帰国や離婚などの理由があっても、国境を越えて子どもをもう一方の親の承諾を得ないまま連れ去った場合、「ハーグ条約」の対象になる可能性も。
この連載では、国境を越えた子どもの連れ去りによっておこるさまざまな悪影響から、子どもの利益を守ることを目的として定められた「ハーグ条約」について、『外務省ハーグ条約室(日本中央当局)』監修のもと、全4回にわたって詳しくご紹介しています。
第1回は「ハーグ条約の大まかな概要」と「ハーグ条約の手続きの流れ」、第2回は「ハーグ条約適用の対象とされた場合の対策や支援」と「家庭内に問題を抱えている時の相談先」、第3回は「ハーグ条約の対象者などが受けられる日豪両国の支援」についてご紹介しました。
連載最後となる第4回は、オーストラリアにおけるDVの実情や支援についてご案内します。
オーストラリアのDV被害を含め、家族関係や帰国のトラブルに関する国際的な支援は、現在さまざま用意されています。今現在は当事者でなくとも、自分自身や未来の家族のためにも「ハーグ条約」について正しい知識を身につけましょう。
オーストラリアでは「全国でDV被害に遭っている女性の数は男性の3倍」という統計が出ています。
今回は、ブリスベンにある「Immigrant Women’s Support Service(IWSS)」に所属する日本人ケースワーカーから、オーストラリアのおける女性の被害者を中心としたDV被害の実情や支援について話を伺いました。
DV被害者の方から電話で相談を受ける際、「身体的な暴力ではないのですが」と始める方が多い印象です。また、その方には外部からの情報を得ることが難しく、パートナーから言われる内容が間違っていると気付いていない方も多く見受けられます。
よくある相談内容は以下の通り。
当事者が語学に自信がない、またはパートナーの出身国に住んでいる場合、生活上のすべての決断をパートナーに依存してしまう方も多くいます。家庭の経済状況を把握できていないことから経済的自立に不安を抱いていると、自分の意見やパートナーに対して「NO」を言うことができない、という状態がDV被害を受けている方には多く見受けられます。
特に、日本人は「自分さえ我慢すればすべてうまくいく」「パートナーには自分しかいない」と信じている方も少なくなく、家を出るという大きなステップに踏み切れない間、常に「パートナーがいつまた爆発するのか」といった不安を抱えながら、言葉を選び、緊張した生活を続けている人も少なくありません。
パートナーから危害を加えられている親を助けるために立ち向かうような子どもの場合、その子どもへの身体的な影響はもちろん、精神的打撃も大きくなります。 暴力を直視しておらずとも、叫び声や大きな音は子ども達を恐怖に陥れます。中には、現実よりも悪い状況を想像している子どももいることでしょう。
常に母親が脅され、父親から暴力を受けている様子を当たり前のように見ていれば、その子ども達にとっては、それが「父親像」になります。大好きな父親が大好きな母親を傷つけている状況を直視しなければならず、「母親を守れていない」と自分を責める子ども達もいるかもしれません。
「悪夢に襲われる」「学校での集中力が欠ける」「行動が乱暴になる」といったケースもあります。子どもたちは、学校でしか安心して自分の怒りや心情を発散できなくなっているというケースもあります。
漠然と「もうこれ以上やっていけない」「別れたいけど、どうしたら良いかわからない」という場合、DV被害者支援団体に連絡してください。DV被害を受けている方に必要な情報を提供しています。
オーストラリアでは「離婚」と「別居」は別。親権に関する考え方も日本とは異なります。日本との法律の違いを理解するためにも、法的なアドバイスは重要です。
オーストラリアには、リーガルエイドのような無料で法律相談に対応する機関があり、永住権がなくてもビザの種類に関係なく相談できます。また、オーストラリアで保持しているビザに関しても、無料でアドバイスを提供している支援団体があります。法律相談もビザのアドバイスも、リーガルエイドのような公的機関であれば、語学に自信がない人のために通訳を用意してもらえます。
こうした専門家からのアドバイスを受けて情報収集をすることで、DV被害の問題を解決するための選択肢が広がるでしょう。他にもシェルターに入居し、安全な環境で自立の準備をするという選択肢もあります。シェルターは滞在ビザの種類に関係なく利用することができます。
DV加害者からの自立の準備をしたい場合は、サポートワーカーと安全確保をした上でのセーフティプランを立てる必要があるでしょう。DV被害を受けている方によって状況は異なるため、自分や子どもの身の安全を確保できるプランが必要です。
この記事には『オーストラリアのDV被害者のための相談・支援サービス』への連絡先も記載しているので、ページ下記をご参考ください。
DV加害者から安全に離れるためには、上記のようなサポートワーカーの助けを得たり、事前にセーフティプランを作っておきましょう。すぐに実行しなくても、作成したセーフティプランに沿って練習をすることも良いでしょう。また、緊急の際に備えて、家を離れる時の持ち物をリストアップしておくことも役立ちます。
DV被害者支援団体のサポートワーカーは同じような立場のDV被害者を数多くサポートしているため、安全を確保するための情報も豊富。DV被害者支援団体のサービスを利用し、日頃から知識を高めていくことも重要です。
16歳未満の子どもがいる場合、休暇等を含め、日本へ一時帰国する際はパートナーからの承諾を得る必要があります。
子どもと共に日本に行くことを決める前に、日本国外務省のホームページにある「ハーグ条約」の情報を参考にしてください。
「ハーグ条約」は子どもを元にいた国に返すことを原則とします。この「ハーグ条約」の概要をしっかりと理解した上で、弁護士に的確なアドバイスを受けましょう。
実際に正式な承諾をパートナーから得ないまま子どもと日本へ帰国してしまい、「ハーグ条約」に基づく裁判によってオーストラリアに戻されたケースもあります。
この記事には『ハーグ条約を学ぼう』の過去の連載記事へのリンクも記載しているので、ページ下記をご参考ください。
まず、勇気を持って相談してください。DV被害者支援団体のサポートワーカーには守秘義務があるので、安心して相談して大丈夫です。相談することで視野が広がると思います。あなたの悩みが非難されることは絶対にありません。「Immigrant Women’s Support Service(IWSS)」の日本人ケースワーカーを利用した方からは、「日本語で話ができて信じてもらえた」との声があります。話をするだけでも気分が楽になるかもしれません。
健全なリレーションシップとは、同等の権利を持っているということです。お互いを尊重し合うリスペクトが、リレーションシップの当然の標準ライン。どんなカップルでも家族でも口論はあります。しかしリスペクトの気持ちを忘れなければ、暴力を振るわずに解決できるはず。口論中に「危機を感じる」「怖い思いをする」ようであれば、それは普通ではありません。
自分や家族の誰かが不安や恐怖を感じるなら、それは虐待です。他人が決めることではありません。あなたを虐待する権利は誰にもありません。問題は、虐待行為をする人自身にあります。そして、誰にでも安心して暮らせる権利があるのです。まずは相談をして、自分にどんな将来の選択肢があるのかを確かめてみませんか。
オーストラリアのDV被害者支援団体は正しい情報提供をしています。民間弁護士や移民弁護士といった専門家などから、正確な情報を収集してください。パートナーの言うことがすべてと思っているDV被害者も多くいますが、DV加害者は自分が有利になるように間違った情報を伝えている可能性もあります。正しい情報を得ることが重要なのです。その上で、最終的にどうしたいのかを決断する手伝いをするため、DV被害者支援団体のサポートワーカーは寄り添ってくれます。
「頭ではわかっていても行動になかなか踏み切れない」といったDV被害を受けている方の心理も、サポートワーカーはちゃんと理解しています。同じ内容の相談でも構いません。何度でも、DV被害者支援団体に連絡してください。サポートワーカーはあなたの決断をちゃんとリスペクトしています。悩まれている場合には、まず連絡してみましょう。
「Translating and Interpreting Service(TIS)」は誰でも無料で利用可能な通訳サービスです。
DV被害者支援団体などに電話をする際、英語に不安がある方は先にTISに電話をして「Japanese」と、日本語を必要としている旨を伝えてください。その後、日本語の通訳に繋げてくれるので、相談したいDV被害者支援団体の名前と電話番号を伝えてください。日本語通訳を通して、DV被害者支援団体の担当者と、あなたの3人で話をすることができます。
【Translating and Interpreting Service(TIS)】
ウェブ:https://www.tisnational.gov.au
電話:13 14 50
オーストラリアには国内共通のDVカウンセリングライン「1800 RESPECT」があります。24時間体制で他のDV被害者支援団体への紹介サービスなども提供しています。
また、男性のDV被害者のためのDVヘルプラインもあります。
オーストラリアの各州にあるDVホットラインに連絡すると、各州のDVシェルターへの入居相談やカウンセリングを受けることができます。州ごとに名称と電話番号が異なりますが、どの州も24時間体制で対応しています。
オーストラリアの各都市には、誰でも無料で利用可能なDV被害者支援団体があります。お住まいの州によっては、移民専門のDV被害者支援団体もあります。日本語の通訳が必要であれば、その団体に一度連絡をしてから「日本語の通訳をつけてかけ直してください」と頼んでも問題ありません。
また、QLD州の「Immigrant Women’s Support Service」には日本人スタッフが在籍し、オーストラリアへ移住した日本人のDV被害者からの相談を受け付けている他、別居のプランなどの情報も提供しています。
【Immigrant Women’s Support Service(QLD)】
ウェブ:http://www.iwss.org.au
電話:07 3846 3490
メール:mail@iwss.org.au
日本語サポートの受付時間:月火 9:00 – 16:00、金 13:00 – 16:00
オーストラリアで身の危険や命の危険を感じた時は、迷わず警察の番号「000」に電話をしてください。「パートナーから離れた場所で話をしたい」「日本語の通訳をつけてほしい」など、遠慮なく希望を伝えてください。根気の必要なことがですが、断られても諦めずに頼みましょう。
その際に、警察からDV被害者支援団体へ紹介してくれたり、直接、保護命令を発行してくれることもあります。
オーストラリアの警察の電話番号:000
オーストラリア各地にある病院やセンターリンクにも、ソーシャルワーカーが在籍しています。彼らは、あなたと子どもの安全を第一に考えた姿勢で、DV被害などの相談に乗ってくれます。
一方の親の同意のない子どもの連れ去りは、その子どもにとって生活環境が急変するのみならず、他方の親族との交流が強制的に断絶されてしまう他、異なる言語や文化にも対応せざるを得ないなど、大きな影響を与える可能性があります。
「ハーグ条約」の対象となる可能性があり、万が一、当事者になった場合のために、「ハーグ条約」について正しい知識を身に付けておくとともに、国際結婚の家族関係で問題を抱えている方や子どもを連れて日本帰国を考えている方は、無理を押さず、オーストラリア国内の社会福祉サービスを利用しましょう。
オーストラリアはでは、社会福祉サービスの多くを無料もしくは低額でも受けることが可能です。現在オーストラリアに住み、家族関係の問題に悩んでいる場合、オーストラリアの社会福祉サービスを利用して国内で問題解決を図ることにより、子どもの連れ去りや「ハーグ条約」への抵触を未然に防ぐことにつながります。
外務省ハーグ条約室(日本中央当局)による過去の連載もご参考ください。
「ハーグ条約」は、① 監護権の侵害を伴う ② 16歳未満の子どもの ③ 条約締約国間の国境を越えた移動を適用対象とし、子どもを元の居住国に迅速に返還するための手続きや、国境を越えた親子の面会交流を実現するための締約国間の協力について定めています。
「ハーグ条約」の仕組みや手続きなどで不明な点がある場合は、下記の『外務省ハーグ条約室』へ相談することができます。
【今回紹介した支援団体の参照ページ・サイト】
日本の民事法律制度の詳細について:日本司法支援センター(通称:法テラス)公式ウェブサイト
在外公館で入手できる具体的な情報提供支援の一覧:在外公館における情報提供・支援
オーストラリアには日本の大使館、領事館、領事事務所と併せて6つの公館があります。各公館では領事サービスを提供しており、オーストラリアに住む日本人からの相談を受け付けています。
オーストラリア生活において、国際結婚や国際離婚による子どもの問題のほか、何らかの事件や事故被害、DVや家族問題など困ったことがあれば、以下の在外公館へすぐに相談することをお勧めします。在外公館では、担当エリアの社会福祉サービスに関する情報も得ることができます。
※受付時間は全て現地時間です。
所在地:112 Empire Circuit, Yarralumla ACT 2600 Australia
電話:(02) 6273-3244
受付時間:月~金 9:00 -12:30、13:30- 17:00、土日祝休(緊急の場合は24時間対応)
領事窓口時間:月~金 9:00 – 12:00、14:00 – 16:30、土日祝休
メール:consular@cb.mofa.go.jp(領事部)
ウェブ:www.au.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
所在地:Level 12, 1 O’Connell Street, Sydney NSW 2000 Australia
電話:(02) 9250-1000
受付時間:月~金 9:00 -12:30、13:30- 17:30、土日祝休
メール:cgryoji@sy.mofa.go.jp
ウェブ:www.sydney.au.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
所在地:U22 / Level 2, 111 Colin Street, West Perth, WA 6005, Australia (P.O. Box 1915, West Perth WA 6872)
電話:(08) 9480-1800
受付時間:月~金 9:00 – 16:00、土日祝休
メール:consular@pt.mofa.go.jp
ウェブ:www.perth.au.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
所在地:Level 17, 12 Creek Street, Brisbane, Queensland 4000, Australia
電話:(07) 3221-5188
受付時間:月~金 9:00 – 12:00、13:30- 16:00、土日祝休
メール:consular@bb.mofa.go.jp
ウェブ:www.brisbane.au.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
ブリスベンのDV被害者支援関連ページ:www.brisbane.au.emb-japan.go.jp/downloads/dvinfo21102020.pdf
所在地:Level 25, 570 Bourke Street, Melbourne, VIC 3000, Australia
電話:(03) 9679-4510
受付時間:月~金 9:00 – 12:30、14:00- 16:00、土日祝休
メール:Japanese-consulate@mb.mofa.go.jp
ウェブ:www.melbourne.au.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
所在地:Level 15, Cairns Corporate Tower, 15 Lake Street, Cairns, QLD 4870, Australia
電話:(07) 4051-5177
受付時間:月~金 9:00 – 16:00、土日祝休
メール:jcairns@bb.mofa.go.jp
ウェブ:www.brisbane.au.emb-japan.go.jp/itpr_ja/about_cairns.html
所在地:〒100-8919 東京都千代田区霞ヶ関2-2-1
電話:+81-3-5501-8466
受付時間:月〜金 9:00 – 12:30、13:30 – 17:00(日本時間)/土日祝休
メール:hagueconventionjapan@mofa.go.jp
ウェブ:www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/hague/index.html
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