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オーストラリア法律相談:離婚時の財産分与について

本コラムではこれまでに、オーストラリアの離婚に関する情報として、オーストラリアで離婚する際の条件オーストラリアでの財産分割における別居後の遺産の扱いをお伝えしてきました。

この記事では、オーストラリアでの離婚に関してよくある質問「財産分与」に関して回答します。例えば以下は、当事務所へ頻繁にご相談がある質問の一つです。

【よくある質問】
オーストラリアで離婚する際の夫婦の財産分与に関して、よく50/50だと聞きますが実際のところは?(48歳主婦)

家族法上のディファクト(内縁)関係が破綻した際、資産分配の規定は婚姻関係の場合と若干異なります。今回は、婚姻関係の規定に限定して「財産分与」の質問に回答します。

オーストラリアで離婚する際の財産分与について

婚姻関係の破綻により資産分配についての問題が争われる場合、裁判所は以下の4つのステップに沿って審査します。

  1. 分配対象財産の見極め
  2. 対象財産に対する夫婦それぞれの貢献の見極め
  3. 対象資産の分配の際に考慮されるべきことの見極め
  4. 分配の結果が公正で衡平であるかどうかの確認

ステップ1:分配対象財産の見極め

財産分与の問題は、まず分配対象財産を確定することから始まります。ここで財産分配を考察する際に言及される「婚姻期間」とは、一般に「婚姻日から離婚日の期間」ではなく、「婚姻日前の同居を始めた日から別居を始めた日までの期間」を指すことに注意してください。

分配対象財産とは基本的に、この婚姻期間中に構築・購入された財産(不動産、スーパーアニュエーション、車、銀行預金、有価証券、家具、調度品、服飾品など)のすべてが対象となります。財産が配偶者どちらかの単独名義のもの、共同名義のものの他、名義がなく所持しているだけのもの、他州や外国に存在しているものも分配対象となります。もちろん、どちらかの配偶者が経営する事業の評価額も対象となります。

婚姻期間中に夫婦が能動的に形成した財産の他にも、同期間中に贈与・相続した財産や、支払われた懸賞金や宝くじなども含まれます。

ステップ2:対象財産に対する夫婦それぞれの貢献の見極め

次に、対象財産を構築するために夫婦のそれぞれが行った「貢献」がどのようなものであるかを認識・確認し、それをパーセンテージに置き換えます。

ここでの「貢献」とは、直接的貢献と間接的貢献に二分され、直接的貢献を「特定資産の購入価格の支払いやある費用の負担」とすれば、間接的貢献は「それらの金銭的負担を可能にするためのサポート」を指します。いわゆる「内助の功」とされる仕事(炊事、洗濯、掃除、家のメンテナンス、子どもの世話・養育、学校行事への参加、家族としての社交など)がそれにあたります。

このようにして夫婦それぞれの実際の貢献をパーセンテージに置き換えたものが、対象財産の分配率になります。主たる稼ぎ手となる配偶者と、家事をあずかる配偶者の貢献は、同等の価値があるとされます。ただし、婚姻期間が比較的短い場合(一般に5年程度以下の結婚は短いとされています)で、片方の配偶者の金銭的支出が極めて多い場合や、子どもがいないケースなどでは分配率に差がつくことも多くあります。

ステップ3:対象資産の分配の際に考慮されるべきことの見極め

次は、ステップ1と2で確認されたことに調整を加えます。

ステップ1と2は言わば、実際に存在する資産の確認と、それらに対する両当事者の過去の貢献を確認するという、その存在事実が客観視しやすい事項を用いての確認作業でした。その作業の結果に生じた財産分配率に対して、まだ財産分配を左右する事項が他にないかどうかを確認する作業が、ステップ3となります。

この事項において最もわかりやすい例には、子どもやその他の家族の世話や自らの健康状態がありますが、他にも、当事者間に特有の要因を挙げることができます。この要因は物的証拠で証明することが一般に難しいことが多く、軽視されたり見過ごされたりしやすいことであるため、法令で具体的に示されています。「家族法令第75(2)条」が該当する条項です。

家族法令第75(2)条

  • 当事者の年齢や健康状態
  • 自分、その他の人物、未成年の子どもの扶養責任(婚外子も含む)
  • 当事者が(財産分与とは別に)近未来的に受けることが予想される収入(遺産、年金、手当てなど)
  • 別のパートナーからの資金的援助の有無

主に上記の事項があります。他、配偶者扶助の必要性が検討される場合に考慮される以下のような要素も含まれています。

  • 婚姻のために就労から遠ざかることを余儀なくされた特殊事情(文化的背景など)
  • 扶助を受けることでその当事者が社会復帰・自活していくことが容易になるか否か

このように、婚姻関係が単なる経済的な結びつきではなく、精神的な結びつきと共同生活中のさまざまな境遇における相互間の結束で成り立つものであることを家族法令が認めているのは、興味深いポイントでしょう。

ステップ4:分配の結果が公正で衡平であるかどうかの確認

ステップ3で加えられた調整の後の分配率が、個々の状況を鑑みて適正で公正であるかどうかを全体的に考察するのが、ステップ4の作業です。

同じ分配率でも、分配対象の絶対金額によって最終的な分配金額は大幅に変わってきます。最終的な分配金額が実際的に「生活不可能」である金額となる場合には、ステップ4の作業で分配率が調整されることになります。

ステップ1のとおり、たとえ資産がすべて一配偶者の名義であったとしても、家族法上では他方配偶者の権利を認めています。これを徹底するため、法律のもとでは当事者双方の「完全かつ正直な開示」が原則とされています。

その上で、日頃から資産状況を把握しておくことが、正当な財産分配をするための最も重要であることは言うまでもありません。


なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

Yamamoto Attorneys(山本法律事務所)

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