オーストラリアでは「結婚している場合」と「内縁関係(デファクト)としてパートナーと同居している場合」にあまり違いはない、と考えている方は多いかもしれません。しかし、日常生活を送る上では差異がないものの、法律上の扱いがまったく同じとは言えないことに注意してください。
今回は、オーストラリアにおける「婚姻関係」と「内縁関係(デファクト)」の違いについて解説します。
結婚という手続きを経て「Marriage Certificate」を取得することで、婚姻関係にある者同士は即時2人の関係に公証力を持たせることができます。一方、内縁関係(デファクト)の場合は、2人の関係が客観的に有効なものとして認められる条件が、法律分野によって異なります。
例えば、センターリンクから内縁関係(デファクト)として認められるための同居期間の規定はないものの、移民法上ではビザ申請の際には12カ月以上の同居が求められます(各州で関係を登録している場合を除く)。家族法上では2人の間に子どもがいる場合を除き、別れたパートナーに財産分与や経済支援を要求するためには2年間の同居が求められます。
その他、家族法上の内縁関係(デファクト)として認められるための要件には、性的関係や共有資産の有無、経済的依存関係、子どもの養育の有無、第三者から2人の関係がどう見られているか、人生を共にする意志の有無などを考慮することが規定されています。
婚姻関係が破綻して離婚に至った場合、財産分与をするために家庭裁判所に訴えを起こすことができる期限は、離婚後12カ月までとされています。対して内縁関係(デファクト)の場合は、その関係の解消後2年間という期限が設けられています。
つまり、結婚している場合は離婚手続きを取らずに別居を続けることで、この訴訟を提起する時効には囚われませんが、内縁関係(デファクト)の場合は、あくまでも関係を解消した時点から2年という明確な期限が付きまといます。
遺言についても婚姻関係と内縁関係(デファクト)は異なります。
一般的に、既存の遺言は結婚もしくは離婚によって無効となります。そのため、婚姻関係にあると受益人としての配偶者の権利が守られ、離婚した際にはその配偶者への分配が無効となります。
一方、内縁関係(デファクト)の場合には規定が存在しません。そのため、新しい内縁関係(デファクト)を開始したにも関わらず以前のパートナーに対する遺言を作り直さなかった場合、別れたパートナーの手にも自分の遺産が渡ってしまう事態が起こります。
相続法上でも内縁関係(デファクト)として認められるためには、パートナーの死亡日から遡り、継続した2年間の関係が必要です。したがって、2人の間に子どもがおらず2年間に満たない内縁関係(デファクト)のパートナーに自分の財産を遺したければ、事前に遺言を作っておくことが重要です。
遺言がない場合、婚姻関係がある配偶者は遺産の受益人として認められます。内縁関係(デファクト)では、遺言のないパートナーの受益人となるには、上述の「死亡時から遡って過去2年間の関係」を示すためのさまざまな証拠を準備することが求められます。
スーパーアニュエーションについても、婚姻関係と内縁関係(デファクト)は違います。
婚姻関係にある配偶者は、2人の実際の関係がどうであれ受取人になることが可能です。
内縁関係(デファクト)の場合、故人が法的拘束力を持つ形で遺されたパートナーを受益人に指定していなければ、パートナーが故人との内縁関係(デファクト)関係を証明しなくてはなりません。故人が死亡前にナーシングホームに入居するなど別居状態となっていれば、関係証明はより難しくなります。
このように、婚姻関係と内縁関係(デファクト)は日常生活を送る上での差異がないものの、法律上の区別は確実に存在することがわかります。特に子どもがいない内縁関係(デファクト)の場合、有事の際に2人の関係の証明が煩雑になる可能性が大いにあると言えるでしょう。
なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。
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