皆さんは愛犬や愛猫を海外に連れて行った経験はあるでしょうか。
例えば、日本への帰国の際、ペットホテルに預けるのではなく気軽に一緒に旅行することができれば、きっと楽しいはず。また、永久帰国の際、ペットと一緒に帰国できれば、と思う方もあるでしょう。しかし実際には、動物を海外に連れ出すには大変煩雑な手続きを踏むことになります。
今回はペットの犬に焦点を当て、日本に向けた空輸手順について解説したいと思います。
まず、オーストラリアから日本へ行く日程を確定したら、次に航空会社に連絡を取り、搭乗予定便に犬を載せることができるかどうかを確認します。ペットは貨物として輸送されるので、貨物部分に余裕があることを確認される必要があります。また、ペット犬が、航空会社が輸送可能とする犬の条件に適合するかどうかについても航空券購入前に確認します。
条件例としては、ブルドッグやフレンチブルドッグなどは預けられない犬種とされています。他には、犬の出生から8週間以上経過していること、妊娠中ではないこと、産業用または商業用犬ではないこと、なども条件として挙げられています。
また、ペットは客室下の貨物エリアで輸送されるため、ペットを運ぶペットクレートはスーツケース同様、航空会社指定の大きさと重さである必要があります。航空会社によってはペットクレートを有料で貸し出している場合もあります。飼い主と同じ飛行機に「貨物」として載る(乗る)ものの、飼い主の航空運賃とは別にペットの運賃(輸送料金)が発生します。
また、日本国内の乗り継ぎがある場合は別途運賃が発生します。なお、国内線の搭乗予定便に犬を載せてもらえるか、スペースが確保できるかどうかについても事前の確認が必要です。
航空券を手配したら、日本の動物検疫所指定の「狂犬病予防及び家畜伝染病予防法に基づく犬の輸入に関する届出書」の準備をはじめます。この届出書は、出国の最低45日前までに提出することが規定されています。
届出書はファックスかメール、あるいは輸出入・港湾関連情報処理システム(NACCS)のウェブサイトからオンライン申請する2通りの提出方法があります。
提出後、検疫所から「動物の輸入に関する受理書」が発行されます。これは、日本到着時に提出が求められる書類となりますので、印刷して保管しておきます。
次にオーストラリアのDepartment of Agriculture(農林水産省)に輸出許可申請を行います。申請はDepartment of Agricultureのウェブサイトから「Notice of Intention to Export Live Animals(other than Livestock)」をダウンロードし、出国日などの詳細を記入してからメールで申請します。
獣医による最終臨床検査は、オーストラリアを発つ72時間以内に受けます。
先述の「Notice of Intention to Export Live Animals(other than Livestock)」に、獣医との最終臨床検査日とDepartment of Agricultureとインタビューを受ける日にちを記入します。なお、Department of Agricultureとのインタビューには獣医からの健康診断書が必須となるため、順番としては、まず獣医による臨床検査、次にDepartment of Agriculture専属獣医による検査・書類確認となります。検査の際、獣医には「Declaration of pre-export veterinary health and welfare inspection for live animals(other than livestock)」と「Form AB」のフォームを使い、犬の健康状態について記入してもらうことになります。
オーストラリアは世界でも稀にみる狂犬病が発生しないの国のひとつです。従ってオーストラリア国内に180日以上滞在していた、あるいは出生からオーストラリアに継続居住していた場合には、狂犬病の予防接種を受ける必要はありません。狂犬病の予防接種が不要であることを証明するためには、日本の動物検疫所が発行する「Form AB」という書類に記入することで十分とされます。同フォームも併せて獣医に記入してもらうと良いでしょう。記入済みの「Form AB」がある場合、狂犬病に関してはその他証明が必要ないので日本到着時の検疫がよりスムーズになります。
「動物の輸入に関する受理書」を受領したら、今度はオーストラリアのDepartment of Agricultureに赴き、輸出国政府機関発行の証明書を取得することになります。ここで記入済みの「Form AB」と「Declaration of pre-export veterinary health and welfare inspection for live animals(other than livestock)」を提出します。
まとめると、以下の通りの流れになります。
1. 日本の農林水産省から「Form AB」を入手する | Form AB:日本の動物検疫所が発行する書類で、狂犬病が発生しない国であるオーストラリアに犬が規定日数以上滞在していたことを証明するもの。NACCSウェブサイトから入手可能。日本到着後の入国手続きが短縮できるようになるため、出国前に獣医による記入を推奨。 |
2. 獣医との検診予約(最終臨床検査を受けるため)をする | |
3. Department of Agricultureのウェブサイトから以下の書類を入手する
・NOI:Notice of Intention to Export Live Animals(other than livestock) ・Declaration:Declaration of pre-export veterinary health and welfare inspection for live animals(other than livestock) |
NOI:Department of Agricultureが発行する動物の輸出許可書。この書類を用いてDepartment of Agricultureとのインタビューの日程を確定する。
Declaration:検診日に獣医が記入する書類。犬の健康状態に問題がないことを保証する。 【獣医との検診前に】 |
4. 獣医の最終臨床検査を受診する | 獣医が「Form AB」と「Declaration」を記入 |
5. Department of Agricultureとのインタビューを受ける | 「Form AB」と受理書と「Declaration」を持っていく。「輸出証明書」を入手する。 |
書類が全て揃ったらいざ出発です。なお、航空会社に犬を預けた時点から日本に到着するまで、犬と接触することはできません。飛行中に採る食事や飲み物をクレートに十分補給してから預けるようにしましょう。
日本へ無事到着したら、まず空港の係員から犬をクレートごと引き取ります。その後、動物検疫所へ行き、「Form AB」と「Department of Agricultureの輸出証明書」を提示します。日本の空港での検疫が無事終わり、書類の確認も終了すれば輸入許可が下ります。
近年では、家族の一員としてペットとの共生を求める声が増え、それに呼応するようにルールや法律を含め社会全体が変化してきています。電車内でペット連れの人を見かけることも多くなり、最近では裁判所での答弁の際にペットを抱えている人も見かけるようになりました。もっと気軽にペットと一緒に外国旅行ができるようになることも、さほど遠い将来のことではないかもしれません。
なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません
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