オーストラリアは長年、海外留学を目指す人々にとって人気の留学先として安定した地位を築いてきました。独立行政法人日本学生支援機構が2022年に実施した「日本人学生留学状況調査」によると、オーストラリアへの日本人留学生の数は6,187人で、アメリカ、カナダに次いで3番目に多いとされています。
しかし、最近の連邦政府の政権交代やポストコロナ期以降の労働市場、経済、住宅事情の変化により、留学生への対応が変わってきています。
本記事では、最新のオーストラリアの留学生政策についてまとめています。
2020年初頭から始まった新型コロナウイルスのパンデミックは、オーストラリアの留学生市場に大打撃を与えました。それにより、教育機関など留学関連産業の財政にも深刻な影響がもたらされました。
パンデミック中、オーストラリア政府は国内にいる留学生に対して就労時間数の制限緩和など柔軟な政策を導入していましたが、ポストコロナ期が安定した時点から一転し、留学生政策の見直しを行い、急速に引き締めへと方向転換をしました。
以下はその一例です。
通常、学期中は2週間で40時間までの就労制限が付いていた留学生にも無制限で働ける許可が出ていましたが、コロナ禍明けの早いうちに就労制限が再導入されました。
新たな就労時間制限は2週間で48時間までとなりました。(一部の大学院生とその家族は除く)
学生ビザの申請要件が厳格化されました。
英語基準の引き上げや、従来の「Genuine Temporary Entrant(GTE)」の流れを汲む「Genuine Student Test」という新しい審査基準が導入され、経済的な証明や志望理由と申請者の身上に関する審査がより厳格化されました。
最近では、日本人の学生ビザ申請が却下されるケースが増加しており、これまで比較的容易だった学生ビザ申請にも慎重な対応が求められています。
連邦政府は国際教育セクターの「健全性と持続可能性」を確保するため、学生登録数に上限を設ける計画を発表しました。
教育機関関係者は、このような過度な政策変更によって、オーストラリアが人気のある留学先としての地位から失墜することを懸念しています。今後も継続して協議の場が設けられる予定であり、その動向に注目要です。
多くの留学生が卒業後に申請する流れができている卒業生ビザですが、その申請要件が大幅に見直されました。
オーストラリアの経済発展に貢献できる人材の確保を求め、若年層や特定の分野の専門職に対して優先順位が設けられます。最大の変更は、卒業生ビザの申請適格要件を現行の「50歳未満」から「35歳以下」に引き下げた点です。(ただし、博士課程やリサーチ修士課程の学生、およびHong Kong and British National Overseasパスポート保有者は、現行の年齢要件の適用が継続されます)
その他、英語基準の引き上げ(すでに改正済み)、ビザ期間の短縮化など、留学生にとっては厳しい方向への変更ばかりが見受けられます。
年齢要件の改正は本年7月1日より施行予定ですが、さらに微調整が加えられる可能性が無きにしも非ずです。
以上のように、オーストラリアの留学生政策はコロナ禍を契機に大幅に見直され、より厳格な方向へと展開しています。
この急進的な政策転換により、留学生を含む多くの関係者からは混乱の声が上がっています。特に卒業生ビザの年齢引き下げに対する反発には、政府は一部を撤回する措置を取りました。これら一連の変更が本当に政府の思惑通りの結果をもたらすのか、今後の焦点となるでしょう。
なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。
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