2024年12月10日、オーストラリアで家族法改正案が両院を通過し、多くの改正法が今年6月10日に施行となります。
その中でも注目すべき改正内容について解説します。
今回の改正法の中でも最も重要な改正は、家庭内暴力が財産分割の決定に影響すること、特に経済的虐待も家庭内暴力である、ということが明文化されたことです。
経済的虐待の例として、以下を含む行為が挙げられます。
6月からは、家庭内暴力の影響が分割比率を決める判断理由に追加されるため、暴力や虐待の被害者は客観的な証拠提出をすることで、裁判所が家庭内暴力の存在を判断できます。
その結果より多くの財産を得ることができるようになると考えられます。
現在の財産開示義務については、家族法ルールにおいて規定されていますが、6月からは家族法そのものに規定されることで、財産分割の交渉において資産や負債の隠匿を防止し、『包み隠すことのない完全な開示義務』の順守がより強調されることになります。
財産分割の比率を決める際、これまでは過去の判例などが判断要因となっていたことで一般の人にはわかりにくいという批判がありました。
裁判所がどういった判断基準を使うのか、客観的かつ透明性の高い手順を明文化することで、公平かつ公正な分割となる判断基準が明確になります。
財産分割において、子どもが住む場所を確保することを最優先にすることが求められ、子どもと住む親が家を得られるよう、または家を借りることができるよう十分な資産の分配をする、といった配慮がされることになります。
ここでも、子どもを最優先にすることが分割方法において重要な判断基準となります。
これまでペットについては、私的な交渉でどちらが引き取るかなどが決められてきましたが、合意ができない場合には裁判所がオーダーを出すことが可能になります。その際にはペットの世話を誰が主に担ってきたか、虐待行為の有無、子どもを含めた家族とペットの関係性などが考慮されることになります。裁判所はまた、財産分割の訴訟手続きにおいて、個々のケースの状況、特に家庭内暴力が存在するケースでは、敵対的ではない形での手続きを認める裁量権を持つことでより柔軟な対応が可能となります。
家庭内暴力が財産分割を決める要素になることは大きな前進ではありますが、具体的に家庭内暴力が分割比率にどの程度の影響を与えるのか、改正法施行後の裁判所の判断を待つことになります。
いずれにしても、訴訟手続きがより利用者に使いやすくなることで、経済的に虐げられている被害者が訴えを起こすためのハードルが少しでも下がることは有益と言えるでしょう。
なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。
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