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別居・離婚時における片親阻害行為について

別居や離婚は当事者同士にとって辛いことですが、子どもにとっても悲しい経験です。しかも当事者同士のいがみ合いに何の罪もない子どもが巻き込まれてしまうと子どもはさらに傷つくことになります。

親の一方が子どもの気持ちを巧みに操ることでもう一方の親に対し敵意や嫌悪感を抱くように仕向け、それまでの親子の関係を壊し、子どもの心を傷つけてしまう状態を「片親阻害」(または切り離し)と言います。

今回は、別居・離婚時における片親阻害行為についてご説明します。

片親阻害行為とは?

片親阻害行為の具体的な例として、以下のような行為が挙げられます。

  • 子どもの前で相手の悪口を言う
  • 離婚の原因は相手のせいだと子どもに話す
  • 自分と一緒にいない時の相手の行動を報告させる
  • 自分の味方になるよう仕向ける 等

これは子どもの気持ちよりも相手への仕返しや恨みといった、自分の感情を優先する行為です。

以前は大好きだった親のことを具体的な理由もなく突然「嫌いだ」「会いたくない」と言ったり、大人の口真似をして片親を否定したりする場合、片親が引き離し行為を行っている可能性が高いと判断できます。

どんなに気を付けていたとしても、子どもは親の相手に対するほんの僅かな否定的なコメントやそこに含まれるニュアンスを敏感に感じ取ることができます。子どもにとっては両親はそれぞれが唯一の存在であり、その存在を否定されることは子どもにとって精神的なダメージを植え付けてしまいます。

家族法上の片親阻害行為について

家族法上も、片親阻害は別離後の養育アレンジを決める際に問題となります。

子どもを相手と切り離すことで相手を傷つけ、自分に有利に交渉を進めたい、という行為は子どもの利益を最優先とする家族法上の原則を無視するものです。

子どもの健全な成長には両親との良好な関係の維持が不可欠であり、どんなに憎い相手だったとしても、子どもは自分とは全くの別人格であり、もう一方の親と子どもの関係を否定することは子どもの権利を踏みにじる行為です。片親阻害は子どもへの精神的な虐待であり、家庭内暴力であるとも言えます。

片親阻害行為が疑われる場合には、まずは当事者同士や調停での話し合いなどで解決に努めます。それでも解決できない場合には、家庭裁判所主体で精神科医やChildren’s lawyerなど専門家の介入を行い、また、子どもの学校での様子の変化など客観的な証拠を精査することで、子どもの変化が片親阻害によるものなのか、それとも別の理由があるのかを判断します。

その結果、片親阻害が原因と判断されれば、養育環境の変更や子ども本人および阻害行為を行っていた親のカウンセリング受講命令が出されることもあります。

万一、片親阻害の影響が深刻で子どもの片親に対する嫌悪感があまりにも酷い場合には、壊れてしまった親との関係改善と子どもの利益を斟酌し、その中で最善の養育環境について検討することになります。

まとめ

別居や離婚は、子どもにとっては住居や学校など環境の変化に加え、生活レベルが変わるなど心身に大きな影響を及ぼします。

そのストレスに加え、両親の一方が短絡的かつ自分本位にもう一人の親を否定して子どもを精神的に操作し自分の味方に付けようとした結果、子どもは片親を失う喪失感、罪悪感を抱えて成長していくだけでなく、それによって本人の偏った家族観を形成する要因になるなど、子どもに長期的な悪影響を与えてしまう可能性があります。

きれいごとに聞こえたとしても、元配偶者への否定的な気持ちは自身の中に留めておき、子どもの幸せを第一に考えてあげることが親の愛情であり責任であることを忘れてはいけません。


なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

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