2017年11月連邦巡回裁判所において、日本食系ファストフード店で働くスタッフへの不当な低賃金支払いに関わった会計事務所に、罰金刑が言い渡されました。これは、労使関係を取り締まる国の監視機関(会計事務所を訴えた)にとって意味のある勝訴であると同時に、ワーホリを含めたオーストラリアの労働者搾取に加担した会計士など、外部のアドバイザーにも法的責任が及ぶことをはっきりと世間に示した判決でもありました。
連邦巡回裁判所は、ビクトリア州の会計事務所「Ezy Accounting 123」のクライアントで日本食系ファストフード店を経営する「Blue Impression」社によるスタッフへの不当な低賃金支払いに関わったとして、同会計事務所にAUD$53,880.00の罰金刑を科しました。それ以前に、メルボルン店で働いていたワーホリスタッフ2名に不当な低賃金を支払っていたことを認めたBlue Impression社には、罰金AUS$115,706.00が言い渡されています。これらの罰金刑は、フェアワーク・オンブズマンが起こした訴訟の結果、連邦巡回裁判所が下した判決でした。
不当な低賃金で雇われていたのは会計事務所のスタッフではなく、会計事務所のクライアントである日本食系ファストフード店のスタッフであったことから、判決は、会計士を一種の“従犯(共犯)”としました。会計士は給与計算サービスをクライアント(日本食系ファストフード店の経営者)に提供しており、これには法定賃金以下の時給であることを知りながら、ファストフード店スタッフへの給与支払いを実行していたことも含まれます。搾取されていた20代のスタッフには、ファストフード業界の報酬規程に沿った祝日・週末出勤手当や、カジュアル・スタッフに対する割り増し賃金を無視した、
最低賃金に満たない一律の時給で、給与が支払われていました。また、規程で認められているユニフォーム手当や、就業中の適切な休憩時間も与えられていませんでした(法律違反)。
オーストラリア連邦政府の直轄機関であるフェアワーク・オンブズマンは、労使関係の法律が守られているかどうかの見張り番です。雇用条件、特に最低給与の順守や各種休暇の付与が適切であるか、厳しく取り締まっています。フェアワークが扱っているのは、概ね雇用主と被雇用者間の問題ですが、今回の判決で労働者の権利が直接の雇用主を超えたところにまで及んだことで、今後への影響力は大きいでしょう。
問題の会計士は裁判の中で、不当な低賃金を受け取っていたのは会計事務所のスタッフではないと反論しました。労使関係の法律は通常、雇用主(ボス)と被雇用者(スタッフ)の関係を定めています。しかし今回の画期的判決において、John O’Sullivan判事はこのように述べました。“クライアント(日本食系ファストフード店の経営者)から給与計算サービスを任されていたEzyは、自所の事業利益よりも法の順守を優先すべきである。” さらに判事は、弱い立場に置かれていた2名のスタッフ(ワーキングホリデーでオーストラリアに滞在)が “搾取の被害者”になってしまったと指摘しました。会計士は会社の給与計算を手伝っていたことから、最低賃金に満たない時給だったことも知っており、それに対して判事は、会計士が“違法性を認識していながら”それに携わったことは“たちが悪い”と述べました。
直接の雇用主を超えて、スタッフへの不当な低賃金支払いを助けた外部のアドバイザー(会計士)にまで労働者搾取に関する責任が及んだ今回の判決は“補助的責任法”として知られています。もしあなたが、搾取の現状(とりわけ、ワーキングホリデーで働く人たちは、オーストラリアの労働関連法について知識不足だったり、人によっては言葉の壁があったりして、雇用主との関係で弱い立場に置かれている)を知りながらそれに関わった場合、多額の罰金刑が科せられる可能性があることが、今回の判決によって明確になりました。会計士のような信頼できるアドバイザーは、自身が違法行為を犯してしまうことのないよう、クライアントに法規をきちんと説明し、理解してもらう義務があります。
フェアワークのウェブサイトwww.fairwork.gov.auでは、職場での(雇用主・従業員)の権利や義務について詳しく説明しています。また電話13 13 94で、無料アドバイスを得ることもできますので(通訳が必要な場合、最初に13 14 50へ電話)、積極的にこうしたフェアワークのサービスを利用してはいかがでしょうか?
オーストラリア政府公認移民法コンサルタントの「Access Visa(アクセス・ビザ)」では、永住ビザや一時滞在ビザなど、日々…