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シドニー発豪ドル見通し(26 March 2018)

<主なイベント・日程>

3/26(月)地区連銀総裁講演(NY、クリーブランド、クオールズ副議長)
27火)佐川元国税庁長官証人喚問、米3月消費者信頼感、アトランタ連銀総裁講演
28(水)米Q4GDP確報値、米2月中古住宅販売、アトランタ連銀総裁講演
29(木)米2月個人所得収支、新規失業保険申請件数、フィラデルフィア連銀総裁講演、米債券市場短縮取引
30(金)日本2月雇用統計、欧州・米・オセアニア市場“グッドフライディー”休場

 

 

<マーケットの焦点>

先週はトランプ保護主義懸念の高まりから主要国の株価は下落しました。
ドル軟調も手伝って商品相場は堅調でCRB Indexは200台に乗りましたが、なかでも原油はサウジアラビアのイラン非難や原油削減継続発言を受けて直近の高値66ドル近辺まで上昇しました。
ドル円は株価下落によるリスク回避の円買いにより2016年11月、つまり米大統領選前の104円台に下落。ユーロ円129円台、ポンド円148円台、豪ドル円80円台など、再び円全面高の様相です。

先週のFOMCでは予想通り今利上げサイクル6回目の利上げが行われFFレート誘導目標は1.50-1.75%に25bp引き上げられました。しかしこれは既に織り込み済で、むしろメンバー予想の大半が今年の利上げ回数を3回(4回説も有力であった)としたこともドルの失望売りを誘いました。
しかし市場が注目したのはやはり米中関係を中心とする貿易摩擦の行方でした。 米国は中国の知的所有権侵害への制裁として主要輸入品目に対する25%の輸入関税賦課を発表し、中国は報復措置及びWTO提訴も辞さない姿勢です。
また日本は結局鉄鋼・アルミ製品への関税賦課除外先に認定されませんでしたが、米国は明らかに関税問題で圧力を掛けて日本を自由貿易協定(FTA)交渉の場に引きずり出そうとの戦略のようです。
トランプ政権は鉄鋼・アルミ製品への関税賦課をぶち上げて、ペンシルベニア州に本社のあるUSスチール社援護で同州の補欠選を勝ち取る算段でしたが、僅差で民主党に敗れました。
トランプ政権はティラーソン国務長官に続いて先週もマクマスター補佐官(国家安全保障担当)やロシアゲート関連のトランプ弁護士団のジョン・ダウド主任弁護士も失っています。 外交関係ではポンペオ元CIA長官を国務大臣に、元国連大使のボルトン氏を補佐官に任命するなど、対外強固派の採用が目立ちます。
劣勢と言われる11月の中間選挙に向けて、更にトランプ政権の保護主義化、対外強固化が懸念されます。
保護主義や対外排斥主義は世界貿易にとって逆風となり、ひいては世界経済をシュリンク(縮小)させることは間違いのないところです。
国内では火曜日の佐川元国税庁長官の証人喚問を控えて、財務省文書書き換え問題も佳境に入ります。今朝の日経新聞調査では安倍政権の支持率は前回から14ポイント下がって42%となるなど、先週あたりから安倍首相の求心力が急低下しています。
今週の日本の政局次第では、アベノミクスのリバース、つまり株安=円高が急伸する可能性が否定できません。
年初はゴルディロックス経済(適温経済)が継続するとの楽観論が強く、世界経済の順調な拡大と更なる株価の上昇期待が強かった訳ですが、たかだか3ヵ月を経過して、市場を取り巻く環境は非常に厳しくなったと言わざるを得ません。
今週も株安、円高圧力の高まりが予想されます。

 

<豪ドルマーケット>

今週の豪ドルは引き続き上値の重い展開でしょう

先週のレンジ: AUDUSD 0.7672-0.7785 AUDYEN 80.50-82.59

今週の予想レンジ:AUDUSD 0.7600.0.7800  AUDYEN 79.50-82.50
先週豪ドルは再び軟調推移しました。
発表された3月RBA議事録では「失業率の改善が賃金上昇につながっていない点や高水準の家計負債」に対する懸念が示されました。
ただ豪ドル軟調の主たる原因はやはりトランプ政権による保護主義で、中国をはじめとする諸外国の報復措置により、世界的な貿易戦争へ発展する懸念が強まっていることでしょう。
特に中国は豪州最大の輸出先であり、中国貿易の縮小は直接豪州からの資源や食料輸入の減少を意味します。
また3月のRBA理事会では18か月連続で金利を史上最低レベルの1.5%に据え置きましたが、RBAは利上げの緊急性を全く感じておらず、金利据え置きは更に1年程度は続きそうです。 米国はじめ主要国が出口に向かう状況で、豪州と主要国との金利格差の縮小、あるいは逆転現象は高金利豪ドルの投資的魅力を減退させます。
足元悪材料が非常に目立つ状況に変わりはありませんが、4月になり本邦機関投資家の新規外債投資需要がどの程度回復するのか注目されます。

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Joe Tsuda のプロフィール

東京銀行(現 東京三菱UFJ)のバーレーン支店で為替・資金ディーラーとしてスタート。ロンドン支店為替チーフディーラー、本店オプションデスク勤務後、1990年外資系銀行(米系、スイス系)に移り為替・資金業務に携わる。

1995年に来豪し第一勧業銀行(現 みずほコーポレート銀行)の為替ヘッドとして2007年まで活躍。

現在 AT FUND PTY LTD, Sydneyのダイレクターを務める傍ら、日本の投資家に日々市場メッセージを発信している。豪州金融市場に友人も多い。為替歴30年。趣味:ゴルフ、テニス、ワイン賞味、ネコと遊ぶ


☆FXトレーディングにはFXマガジン「侍ディーラーが相場を切る」をお勧めします。
詳しくはhttps://foomii.com/00130をご参照ください。

☆現在セントラル短資FXブログに執筆中!(毎週木曜日担当、ヤフーファイナンスに同時掲載)
http://www.central-tanshifx.com/

☆日経新聞月刊誌”日経マネー”に定期寄稿
ご注意!本レポートは著者の作成時点における見解により作成されており、内容等の正確性を期しますが、それを保証するものではありません。投資等のご判断は皆様ご自身でなされるようお願い申し上げます。

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