今週の主な予定、イベント
1/4(月)
通常国会召集、大発会、中国12月財新製造業PMI、独12月CPI、ユーロ圏12月製造業PMI、米12月ISM製造業景況指数
5( 火)
独12月失業率、ユーロ圏12月CPI、米12月自動車販売台数
6(水)
米12月ADP雇用者数、米11月貿易収支、米12月ISM非製造業景況指数、FOMC議事録
7(木)
豪州11月貿易収支、ユーロ圏11月失業率・11月小売売上高、米国新規失業保険申請件数、カナダ中銀総裁講演、地区連銀総裁講演(シカゴ、リッチモンド)
8(金)
豪州11月小売売上高、米国12月雇用統計、地区連銀総裁講演[サンフランシスコ、リッチモンド)
2016年豪ドル相場見通し
1.2015年の豪ドル相場レビュー
2015年豪ドルは年初の高値82セント台から一時9月に69セント台に、また対円でも98円台から8月、9月には82円台まで下落し、特に対ドルでは現在も軟調推移している。
2015年の豪ドルは一言でいえば「軟調推移した」いうことだが、これは去年のみの動きではなく2013年からのダウントレンドが継続したととらえるべきだろう。
「2014年末の昨年の見通し」において
キーワードは:“米ドル動向と米金融政策、中国経済動向、商品相場、欧州経済回復の有無、豪州住宅バブルとRBAの金融政策” と申し上げたが注目ポイントは大体当たっているだろう。
ただメインシナリオ以上に豪ドル安が進行したのが実情だ。
昨年のシナリオとして、以下のメイン/サブシナリオを予想した。
1. メインシナリオ―予想レンジ AUDUSD 0.75-0.95 AUDYEN 90-110
年前半軟調だが後半から持ち直すとした。年前半は米ドル堅調、商品相場軟調、RBAの利下げ観測から年間安値を付けるが、年後半は世界経済回復期待、中国経済ソフトランディングシナリオや、商品相場底入れ、さらに住宅バブルや豪ドル安による輸入インフレ懸念からRBAが金融引き締めに転じる可能性もあり豪ドル回復のシナリオを取った。
2. サブシナリオ―大幅下落予想―予想レンジ AUDUSD0.60-0.80 AUDYEN 60-80
世界経済拡大予想を打ち消すようなリスク要因発生、商品相場大幅下落で豪州資源産業に壊滅的打撃、国内景気減速からRBAは史上最低水準を更新して利下げを継続し、投資通貨としての豪ドルの魅力減退。
結果としてはメインシナリオとサブシナリオの中間的な結果となり、特に年後半の回復予想とは程遠かった。
ただ豪ドル/円相場についてはドル/円相場の堅調ゆえに、悲観的サブシナリオには至っていない。今年の豪ドル軟調の背景としてはいくつかの要因が挙げられる。
1)米ドルの堅調(豪ドルは米ドルの受け皿)
米国と他国との景気格差・金利格差がドル高をサポート。ドルインデックスは一時100台と2003年9月以来の高値に。日米欧三極の金融政策では米国が2014年10月量的緩和を終了し、今月(12月)に利上げを開始、一方日本では同じく2014年10月日銀が予想外の追加緩和を実施(黒田バズーカ第二弾)、またECBは2014年6月中銀預金金利を-0.1%に引き下げABS購入計画を発表。日欧ともに追加緩和観測あり。このように米国と日欧の金融政策の逆行性が米ドルをサポートした。
2)商品相場の軟調
2011年に311の高値を付けたCRB Indexは資源ブームの終焉が顕著となった2014年以降急激に下落し現在176近辺の最安値圏にある。原油、鉄鉱石価格ともに2014年以降下げ足を速めた。
3) 中国経済・株式不安
中国の経済成長率は2012年以降7%台に減速し、新常態を打ち出した今年は7%を割り込む見込みだ。一昨年11月以降6回の利下げを実施したが、昨年8月には4.6%の人民元切り下げを行い中国発の世界同時株安が起きたが、その後市場の安定を取り戻しつつある。
4)豪州経済減速とRBAの金融政策
2014年以降鮮明となった資源ブームの終焉から住宅産業・個人消費中心の非資源産業へのシフトを図りつつあるが、2013年以降成長率は潜在成長率3.25%を大きく下回る2%台となっている。一方キャッシュレート史上最低の2.0%の緩和政策が住宅バブル懸念を生みつつある。RBAは2011年11月4.75%から金融緩和を実施し2013年8月8回目2.50%で一旦利下げを終了したが、昨年再び2回の利下げを行い2%の史上最低レベルとした。
5)根強いリスク回避
2013年から始まる豪ドル下落の背景にリスク回避相場の存在が無視できない。リスク選好時に豪ドル資産に流入したホットマネーはリスク回避時に急激に流出する。
2014年前半はウクライナ紛争、2014年後半から2015年前半はギリシャ危機、そして2015年半ばからは中国不安、ISと常にリスク要因が付きまとった。
2.2016年の豪ドル相場見通し
これらの状況を踏まえながら今年の豪ドル相場を考えてみたい。
おそらくこの5つの豪ドル不安材料の展開が今年の豪ドル相場の方向性を決定づけるであろう。
1.メインシナリオ(予想確率70%)―豪ドル底入れから反発
予想レンジ:AUD/USD 0.68-0.85 AUD/YEN 83-100
年前半は米ドル堅調、商品相場の軟調、RBAの追加緩和観測から豪ドル軟調地合いが継続するが、年後半は米ドル反落、中国経済ソフトランディングシナリオ、欧州経済回復期待から商品相場底入れに。年後半はRBAの金融引き締め観測浮上。
2.サブシナリオ1(予想確率20%)-豪ドル続落シナリオ
予想レンジ:AUD/USD 0.55-0.75 AUD/YEN 60-80。
米ドル続伸、中国経済ハードランディングシナリオ、欧州経済後退懸念、商品相場続落、RBAの緩和政策継続、豪ドルの投資通貨としての魅力さらに減退。
3.サブシナリオ2(予想確率10%)-豪ドル急騰シナリオ
予想レンジ:AUD/USD 0.80-0.95 AUD/YEN 90-105
予想を上回る世界経済回復期待が強まる(中国、欧州、米経済は拡大継続)、需給バランス改善から商品相場の大幅上昇、豪州の資源ブーム再来、RBAの金融引き締め。
各項目を予想してみたい。
1) 米ドル相場-反落の可能性
年前半は米利上げ開始でドル堅調地合いを維持するが、ドル高と金利上昇が米経済の足かせになる。11月の米大統領選挙に絡んで政治色の強いドル高けん制も。人民元下落から中国人民銀行は元買い介入を行い、見合いとして米債売却を進める局面も。米国と他の主要国の景気格差・金利格差は縮小へ。欧州経済は徐々に回復。日本経済は景気・消費者物価低迷が継続。しかし原発再開(エネルギー輸入抑制)、旅行収支増などから経常収支の黒字幅拡大となり円売り需要後退。しかし景況悪化に加えて財政悪化で「日本格下げの円売り」には要注意。
2)商品相場
昨年11月発表されたOECDの世界経済成長見通しを見ても世界経済は今年、来年と緩やかに成長する。(2015年2.9%、2016年3.3%、2017年3.6%)
年前半はここまでの軟調地合い継続するが、年後半は中国のソフトランディングシナリオや欧州経済回復期待から商品相場は底入れ・反転へ。大手資源の生産調整から資源産出国の需給バランスが徐々に改善へ。原油価格が反発に転じる場合には主要国のインフレ期待値に大きな影響を及ぼすことになろう。
3) 中国経済・株式不安
中国の経済成長率自体は6%前半に漸減。しかし一人っ子政策撤廃や構造改革、規制撤廃から質の伴った経済発展に進みソフトランディングシナリオをサポート。一方昨年の人民元切り下げや不動産・株価バブル懸念のような予期せぬ経済・金融上のアクシデントの可能性はリスク要因として常に留意する必要があるだろう。更に海洋問題や少数民族対策を含めて国際紛争や内政不安に陥る可能性は忘れてはならない。
4)豪州経済とRBAの金融政策
今年豪州経済は+3.6%と今年を上回る成長予想となっている。しかしここ数年、年間を通じて成長率の下方修正が常態となっており来年についてもあまり楽観視はできない。世界経済動向に大きく影響を受ける豪州経済である。基本的には資源産業から非資源産業への移行を目指すが、商品相場が回復地合いとなれば再び新たな景気拡大のエンジンを得ることになる。一方原油価格の反発や住宅バブル懸念の再燃となれば、年後半RBAの金融引き締めの可能性も排除できない。
5)リスク回避
リスク回避相場にあってはリスク通貨豪ドルの売り圧力が急激に高まる。
現在最大のリスク要因は中国不安であるが、今年も中国発の新たなリスク回避の可能性は否定できない。また米国の金融引き締め開始に伴い新興国経済・金融市場への影響も懸念されるところ。その他地政学的懸念(ウクライナ、中東(IS)、東シナ海など)を含めて懸念材料には事欠かない。
Have a nice week in advance !!!
Junax Capital, Sydney
Joe Tsuda
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