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シドニー発豪ドル見通し(11 December 2017)

<主なイベント・日程>

12/11(月)日本マネーストックM2、米10月求人件数
12(火)独12月ZEW景況感指数、英11月CPI、米11月PPI
13(水)黒田日銀総裁挨拶、米11月CPI、米FOMC、OPEC月報
14(木)豪州11月雇用統計、中国11月鉱工業生産・小売売上高、スイス中銀理事会、英中銀理事会、ECB理事会、米11月小売売上高、米新規失業保険申請件数、EU首脳会議
15(金)日本Q4日銀短観、米11月鉱工業生産、独CSU党大会

 

 

<マーケットの焦点>

先週も忙しい週となりました。前週末には米上院が税制改革案を可決。月曜日から過去最大規模の米韓軍事演習が行われ北朝鮮は重大な軍事挑発と非難。また米最高裁判所はトランプ政権の中東6か国に対する入国禁止令の適用を認めました。火曜日にはパウエル次期FRB議長公聴会が行われました。ロシアゲートではモラー特別検察官がトランプ大統領と家族の口座情報を銀行に求めトランプジュニアを議会公聴会に招聘しています。水曜日にはトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都に認定し米大使館を移転すると発表し市場に衝撃を与えました。またBrexit関連では清算金の合意への歩み寄りや英国とアイルランドの国境問題解決への進展など、総じて前進が見られました。 金曜日に期限到来の米暫定予算案は予想通りに2週間延長措置が可決され、同日発表された米11月の雇用統計は平均時給が予想の0.3%に達しない0.2%でしたが、その他は総じてポジティブな内容でした(失業率4.1%、NFPR+22.8万人)。 これらの多くのイベントを通過して市場の動きは前週末比でNYKダウは上昇、日経平均は小幅反落、中国株は小幅反落、欧州株は上昇でした。OPEC総会後反落した原油価格は57ドル台を回復しましたが商品相場はやや軟調。 為替市場ではドル高・円安が鮮明になりました。ドルインデックスは先週末の92.81から93.84に上昇。ドル円は11月末以来の113円台半ばに上昇し、ユーロは1.17台、ポンドは1.33台に下落しています。 今週はFOMCが焦点ですが利上げはほぼ確実で、むしろ経済予想における来年の利上げ回数予測が注目されます。現在FRBの最大の懸念事項は低インフレですが、前回の平均値である来年3回の利上げにネガティブな見方が増えればドルを圧迫することになります。 またエルサレム問題では週末も中東各地で抗議の運動が激化しています。トランプ大統領の選挙公約とはいうもののこの唐突な実行を疑問視する声は高いです。発足後1年を迎えるトランプ政権の成果が乏しく、逆にロシア疑惑はじめ多くの問題を抱え支持率は30%前半で低空飛行するトランプ政権の国内向けアピールとの見方があるのも確かです。 北朝鮮は早速「世界の平和を乱すのは米国」と非難し、今後北朝鮮問題への各国の賛同を取り付けるのが困難になるとの見方があり、米国が国際社会の信頼を失ってより孤立化する恐れがあります。 今回のエルサレム問題ではティラーソン国務長官、マティス国防長官共に反対の意向であったとも言われており、今後さらにトランプ政権での人事的混迷に発展する可能性があります。 先週の動きを見てもかかる懸念事項にもかかわらず、雇用統計はじめ堅調な米経済や株高、更には今週のFOMCでの利上げ観測からドルは上昇しました。 しかしFOMCでの利上げはいわばDONE DEALであり、むしろ上記リスク要因が表面化すれば思わぬドルの急落を招く可能性には注意したいところです。

 

 

<豪ドルマーケット>

今週の豪ドルは上値の重い展開でしょう

先週のレンジ: AUDUSD 0.7501-0.7654 AUDYEN 84.68-86.20

今週の予想レンジ:AUDUSD 0.7450-0.7650  AUDYEN 84.00-87.00
先週はRBA理事会はじめ各種経済指標が発表になり”豪州週間“となりました。 RBA理事会では16か月連続の金利据え置きとなり、「低金利が引き続き豪州経済を支える、持続可能な経済成長に向け姿勢に変更はない」と足元やや緩和的スタンスの継続が示されましたが「豪ドル高はインフレと成長を鈍化させる可能性」は従来の文言を踏襲。 ただ「経済成長に伴って物価は上昇、非鉱業部門への投資は改善が見込まれる」と前向きな発言もありました。発表された指標では10月小売売上高が+0.5%と強め、Q3GDPは前期比+0.6%、前年比+2.8%とやや予想を下回りましたが、個人消費が+0.1%と不冴えであったのが気がかり。またQ3経常収支は-91億ドルと依然高水準で、10月貿易収支はかろうじて+1億ドルと12か月連続黒字を維持しましたが、黒字幅縮小は鉄鉱石価格の下落が影響したようです。 先週のRBA理事会の結果や景況は予想の範囲内でしたが、やはり米ドルの上昇が豪ドルへの圧力となています(豪ドルは米ドルの受け皿)。 資源産業の豪ドル買い需要も米ドル高にはかなわないと言ったところです。 ただ上記のように米ドルの一方的な上昇も予想しがたく、年末に向けては下値では資源産業はじめ輸出筋や投資家の押し目買いが活発化し、一方76セントや86円越では売り圧力が強まる展開が予想されます。

 

 

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Joe Tsuda のプロフィール

東京銀行(現 東京三菱UFJ)のバーレーン支店で為替・資金ディーラーとしてスタート。ロンドン支店為替チーフディーラー、本店オプションデスク勤務後、1990年外資系銀行(米系、スイス系)に移り為替・資金業務に携わる。

1995年に来豪し第一勧業銀行(現 みずほコーポレート銀行)の為替ヘッドとして2007年まで活躍。

現在 AT FUND PTY LTD, Sydneyのダイレクターを務める傍ら、日本の投資家に日々市場メッセージを発信している。豪州金融市場に友人も多い。為替歴30年。趣味:ゴルフ、テニス、ワイン賞味、ネコと遊ぶ


☆FXトレーディングにはFXマガジン「侍ディーラーが相場を切る」をお勧めします。
詳しくはhttps://foomii.com/00130をご参照ください。

☆現在セントラル短資FXブログに執筆中!(毎週木曜日担当、ヤフーファイナンスに同時掲載)
http://www.central-tanshifx.com/

☆日経新聞月刊誌”日経マネー”に定期寄稿
ご注意!本レポートは著者の作成時点における見解により作成されており、内容等の正確性を期しますが、それを保証するものではありません。投資等のご判断は皆様ご自身でなされるようお願い申し上げます。

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