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2016年11月30日NSW州でStrata Schemes Development Act 2015という法律が施行され、90以上もの新しい規定が設けられました。
中でも注目されたのはPart 10で、それまでは集合物件に大幅な改築や建て替えを施したり、一棟売却を行ったりする際には物件所有者全員(100%)の合意が必要とされていたところを、Part 10で、所有者の75%の合意があればそうした行為が可能となることが規定されたからです。
Part 10導入の背景には、建物の老朽化などで改築が妥当に必要とされているにもかかわらず一人のオーナーの頑な反対でとん挫したり、計画反対者の同意を得るために多大な時間やコストが生じたりする事情がありました。
さらに、特にシドニーを中心とした都市部で人口が急激に増加している中、より効率的なタウンプランニング(都市計画・整備)を行っていくためとした理由もありました。実際、過去3年間、国内外の様々な開発業者がこのPart 10を活用して開発を手掛けようとする実態を目にしてきました。
では、25%未満の少数派になってしまったら、自分の物件を強制的に売らされるということなのでしょうか。
確かに結果として自分の意思に反して売却に合意することが余儀なくされるという意味合いから「強制的に売らされる」ことになるともいえるでしょう。しかし、だからと言って追いはぎのような暴挙に晒されるわけではありません。
この新しい法律の適用を受けるかどうかは、まず所有者会議で決められる必要があります。所有者の過半数が採択に同意しなければこの法律の適用を受けることはありません。過半数に達し新法の採択が決定した場合には、その後のプランが公平かつ公正に行われるかどうかの確認も含めて裁判所の許認可を得るプロセスが始まることになります。
同法律は、少数派の人々の権利保護に関する規定も設けています。すべての所有者に最低60日間意思決定のための猶予が与えられ、また、例えば売却の場合には、最低でも対価として市価が支払われる上に妥当な費用の補填が保証されると規定しています。
また、究極的には、こうした一人一人の処遇が、与えられた状況下において、公正かつ公平に行われているかどうかを判断するのは裁判所であるとも規定しています。
ここで誤解されないようにしたい点は、この法律が導入されたからと言って、たとえば、一棟売却を行うためにPart 10で規定しているプロセスを踏まないといけないということでも、売却に裁判所の許可が必要であるということでもないということです。
すべての所有者が売却に賛成することができる方法を見出すことができるのであれば、何も時間やコストをかけて裁判所で協議する必要性はないということです。
さらに付け加えれば、この新法は成立してから今日に至るまで、裁判所での争議の対象とされたことがほとんどなく(注:2019年8月8日の関連判例を例外として)、同法の運営の有効性が十分試されるに至っていません。つまり、この法律があらゆる状況下で適用可能であるのかどうかは今後検証されていく段階にあるということです。
同法は表面的にはすべての「ストラータ(区分所有権)」物件に対応するものと定義しています。しかし、果たして実際にそうでしょうか。住宅物件の階下にオフィスや店舗が混在したストラータ物件などもありますが、そうした物件ではそれぞれの物件の所有者の利害は同じといえるでしょうか。
同じ建物の中であっても、そこでビジネスを営んでいる人と住居として住んでいる人とでは、引っ越しに対する抵抗度がかなり異なるのではないでしょうか。また、市価も状況によって異なるかもしれません。
今後こうした協議が裁判所でなされていくのではないでしょうか。
つまり、この法律は今後修正されていくことが大いに考えられ、現段階ではみなの動きが注視されているということです。いずれにしても、「強制的に売らされる」とした懸念を持った場合には早い段階で弁護士に相談し、状況確認をし、そして自身の権利が守られるために早めに行動を起こすことをお勧めします。
※本記事は、法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。
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