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相続、財産分割を理由とする外国人への不動産譲渡について

今回は、相続、財産分割を理由とする外国人への不動産譲渡について解説します。

外国人がオーストラリアの不動産を購入する場合

ご存じの通り、当地で永住者以外の外国人が不動産を購入する際には、通常Foreign Investment Review Board(FIRB)による認可が必要で、購入できるのは国内の不動産供給を妨げないよう投資向けの新しい居住用住宅に限定されています。2023年7月1日時点のFIRB申請費用は、100万ドル以下の物件で14,100ドルとなっています。

また、購入時に支払う印紙税には外国人追徴税が課せられ、購入した物件を賃貸に出すことが奨励されます。合理的な理由なく賃貸に出さない場合、ATO(国税庁)から空室税が課税され、VIC州の物件であれば州の空室税の課税対象ともなります。

このように外国人として当地で不動産を購入する際には、物件価格に加え、多額の追加費用が必要となります。

限定的に条件付きで当地に長期居住するビザを持つ外国人が既存の物件を自宅用として取得することも認められてはいますが、ビザが切れたり、自宅として使用しない場合には6か月以内の売却が必要になります。

相続や財産分割によって外国人が既存の物件の譲渡を受ける場合

上述の例以外でも、相続や財産分割によって外国人が既存の物件の譲渡を受けるケースがあります。

例えば、当地に親族がいない日本人永住者が遺言でオーストラリアの自宅を日本に住む親族に遺す場合、2021年以前はFIRB認可は必要ありませんでした。しかし、2021年1月に法改正がなされ、遺言で外国人に不動産を遺す場合FIRB認可を得ることが義務付けられました。

申請のタイミングは、管財人の分配手続きが終わり名義変更を行うことが明らかになったタイミング、または実際に名義が外国人相続人に変更されてから30日以内となっています。遺言書に記載がなければFIRB申請費用は相続人本人が負担することになり、申請しても認可が下りるかどうかの保証はありません

一方遺言不存在で、法律に従って外国人近親者に自宅が相続されることになる場合、FIRB認可は必要ありません。これは自身の意思とは関係ない法の作用による相続であることが理由です。

離婚による財産分割により不動産が外国人配偶者に譲渡される場合

また、離婚による財産分割により不動産が外国人配偶者に譲渡される場合は、財産分割がどのように決められたかによってルールが異なります。

もし当地の家庭裁判所で財産分割について争い、裁判所のオーダーによって永住権を持たない外国人配偶者が不動産を受け取る場合には、FIRB申請は必要ありません。これは遺言不存在の場合と同じで自分の意思に関係なく、法の作用(裁判所命令)によって決定する譲渡だからです。

逆に、双方の間で交渉し合意した結果の譲渡であれば、自分の意思が関わる決定ですのでFIRB申請が必要になります。

外国人の相続や財産分割を理由とした既存の物件を取得する場合

上述の通り、相続や財産分割を理由とした既存の物件の取得は可能ではあるものの認可が下りるかどうかがわからないばかりか、2023年12月には既存の物件のFIRB申請費用の大幅な引き上げが行われることが発表されました。

政府の発表によると、100万ドル未満の物件の申請費用はこれまでの3倍の42,300ドル、100〜200万ドルの物件の場合84,600ドル、200‐300万ドルの物件は169,200ドルとなります。

さらに、賃貸に出す条件を満たすことができない場合にATOに支払う空室税についても、既存の物件の場合、税額は申請費用の2倍に増額することになります(100万ドル未満の物件の場合、84,600ドル)。

これは昨今の賃貸物件不足を受け、これまで限定的に認められていた既存物件を保有しようとする外国人の取得コストを引き上げ、賃貸市場へ出さない物件に対する罰則を強めることで、外国人に新築物件の購入、貸出を促すのが狙いです。

FIRB申請費用の引き上げに加え、不動産取得にあたってはATOへの登録、空室税申告など外国人として多くの義務が発生するだけでなく、売却時にも税の優遇措置は受けられません。来年1月からは売却時に支払う非居住者のCGT源泉徴収についてもルールが変更となり、現行の物件価格750,000ドル以上に12.5%の源泉徴収というルールから、金額に関係なく非居住者の売却には売却価格の15%が課税されることになります。

不動産を保有する外国人に対する課税強化政策は今後も続くと予想されますので、不動産取得を考える場合に専門家のアドバイスは不可欠でしょう。


なお、本記事は法律情報の提供を目的として作成されており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。

Yamamoto Attorneys(山本法律事務所)

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