自然災害発生時の行動
洪水
オーストラリアでは干ばつ、豪雨、サイクロンなど、世界的な異常気象の影響を受け、広範にわたる浸水被害が起きます。洪水は熱波に次いで人的被害をもたらすオーストラリアの自然災害で、1900年から2022年までにオーストラリアの自然災害による死者のうち洪水による死者は約20%を占めています。
乾燥した大陸ですが、オーストラリアでは日本と同じくさまざまな洪水が起こります。また、サイクロンの影響で被害を受けることも少なくありません。QLD州、NSW州、WA州の内陸部では、河川の氾濫が一度に数週間から数カ月にわたって数千平方kmに影響を及ぼすことがあります。
- 河川洪水:水路(湖沼・河川・小川・貯水池・運河・ダムなど)が増水し、堤防を越えて近隣の低地に流入して発生。オーストラリアで最も一般的です。
鉄砲水:雨が降ってから6時間以内に発生し、雷雨などの短時間の豪雨の後に、雨水が屋根やコンクリート表面から急速に流れる都市部で発生することも多いです。
河口域の洪水:淡水と海水が混在する湖、ラグーン、湿地帯などの水域で、沿岸と河川の影響によって発生。
沿岸の洪水・浸食:高潮・大波などの海洋の影響によって発生。特に、「キングタイド(king tides)」として知られる高潮が、低地に小規模な洪水をもたらすことがあります。
洪水警報(Flood warnings)
出典:オーストラリア気象局
オーストラリア気象局は、特定の場所で確実に洪水が予想される場合、各州のその流域や流域内の場所に対して洪水警報(Flood Warnings)を発令します。警報のカテゴリは以下のように分けられています。
- 小洪水(Minor Flooding):水路に隣接する低地が浸水し、家畜の避難や設備の撤去が必要になる場合があります。狭い道路が閉鎖され、低地の橋が水没する危険性も。
中洪水(Moderate Flooding):小洪水の基準に加え、一部の家屋からは避難が必要となる場合があります。農村部では浸水面積が大きく、家畜の移動が必要となります。主要な交通路が寸断される可能性も。
大洪水(Major Flooding):中洪水の基準に加え、広大な農村地域および都市地域が浸水します。土地や町が孤立し、主要な交通路が閉鎖される可能性が高く、洪水の影響を受ける地域の人々は避難しなければならない可能性も。
併せて河川水位の基準も発表されるので、日頃から覚えておきましょう。
- 河川水位(Observed River Height) :河川水位を測定した水深を示しています。ほとんどの場合、その地域の基準点を基準として測定されます。多くの干満地域やいくつかの内陸部では、海抜メートルまたはオーストラリア高度基準(AHD)で表されます。
- ピーク時河川水位(Peak River Height):指定地点において、洪水時に観測された最も高い水位を示します。
- 予測河川水位(Predicted River Height ):洪水警報で予測されている河川水位です。実際の洪水の水深は、氾濫原によって異なります。
オーストラリア各州の洪水警報は、全国警報概要(National Warnings Summary)から確認することができます。
- National Warnings Summary
- オーストラリア洪水リスク情報ポータル(Australian Flood Risk Information Portal )
洪水発生時の対処
自宅のある地域が、どのような洪水に見舞われやすいかを知っておきましょう。河川が増水している場合は事前に警告が出るかもしれませんが、豪雨による鉄砲水が発生した場合は、数時間から数分で洪水が起こる可能性があります。
降雨被害で緊急に救助が必要な場合には「132-500」(SES)、怪我など生命の危険 に関わるような場合は「000」(警察)にすぐに電話してください。
洪水警報が発令されたら、最寄りの救援センター(州ごとに名称が異なります)への最も安全なルートを確認し、道路が水で閉鎖される前に避難を始めましょう。洪水の中を歩いたり、運転したりすることは非常に危険です。
- 屋外の車、自転車、ゴミ箱、薬品などは高い場所に移動する。
- 家具・衣類・貴重品、ベッドやテーブルの上、屋根のあるスペースに上げる。
- 防災グッズを準備する。
- 暖かい衣類・常備薬・貴重品・重要な書類・スマートフォンと充電器・写真・思い出の品などを防水性の袋に入れる。
- 冷凍庫や冷蔵庫は、ドアを開けたまま空にしておく。
- 電気、水道、ガスを止める。
- トイレの便器や排水口に土嚢を置き、汚水の逆流を止める。
- 家に鍵をかけ、最も安全な避難経路を通って避難する。
避難の際に注意すべきこと
- 絶対に車で洪水に入らないこと。重さ約1トンの小型車も、毎秒1mの速さの激流の中では、水深わずか15cmの浸水で移動してしまいます。60cmの浸水では、完全に浮いた状態になります。
- 氾濫水には下水が含まれている可能性があります。排水溝や暗渠、膝丈以上の深さの水は避けてください。
- 落下した電線には近づかないこと。
- 家族や友人に、自分の居場所と行き先を知らせておくこと。
避難後に注意すべきこと
- 当局が安全だと言うまで帰宅しないこと。
- ガスや電気は、専門家のチェックを受けるまでつけないこと。
- 浸水した食品は食べないこと。
- 水道水は、安全が確認されるまで沸騰させてください。
- 保険金請求のために、被害状況の写真を複数の角度から撮っておきます。
緊急時に安否を知らせる場合は、本サービスを通して安否確認から発信することが可能です。他にも赤十字が全国的な登録・照会サービス「Register.Find.Reunite」を運営しています。被災した大切な人と連絡が取れない場合も利用することができます。
参考:ABC緊急ニュース