事故発生時の行動
水難事故
出典元:Surf Life Saving
サーフィンをはじめとしたマリンスポーツが盛んで水泳大国でもあるオーストラリアは、水辺の多い日本と同じく水難事故の多い国と言えます。
毎年200〜300名超が溺死し、その多くがライフセーバーのいないビーチや、監視されていない時間帯のビーチ、もしくは遊泳区域以外の水辺で発生しています。他にも、人気の観光地であるQLD州の滝や湖では、観光に訪れた邦人の水難事故が報告されています。川や湖での水遊び、監視員のいないビーチでの海水浴には十分な注意が必要です。また、サメの被害による死亡事案も多数発生しています。
最新の海象情報を入手した上で自分の技術以上の無理をせず、安全なマリンレジャーを心がけてください。
また、溺水した若者の多くが男性であり、アルコールやドラッグ摂取後に河川や海岸で溺れています。ドラッグに手を出さないことはもちろん、アルコールを摂取した後に監視のないところで泳ぐことは控えましょう。
オーストラリアのライフセーバー(Lifesaver)について
ビーチまたはプールのボランティア監視員のことで、ライフガード(Life Guard、Beach Inspector)はそれを職業とする人のこと。海水浴で溺れる危険性はサメに襲われるよりもはるかに高く、海で活動するボランティア団体「Surf Life Saving Australia」は、毎年年間平均1万人以上の人々の命を救ってきました。
ライフセーバーの最大の目的は、水難事故を未然に防ぐことです。オーストラリアの海は、その海流の影響で真夏でも水温が低く、流れが速いという特徴があります。そして、ビーチの水難事故原因の48%が引き潮(Rip Currents)であり、打ち寄せた波の戻り路に発生する沖へ向かう潮流に流されて溺れたことが原因です。
そうした事故防止のため、ビーチでは潮流にあわせて砂上に赤と黄の2色の旗を立てて、海水浴の安全区間を海岸利用者に知らせています。赤と黄色の旗は、その日時に泳いでも安全なエリアを示し、ライフガードやライフセーバーが人々の安全を守るために監視しています。旗に挟まれた区間はパトロールエリアと呼ばれ、ライフガードが常に見守り、誰かが水中で助けを必要とする場合に助けに来てくれます。
通常、海岸利用者の多い9月から3月までの毎週末はライフセーバーがビーチをパトロールし、他の日はプロのライフガードがパトロールしています。オーストラリアのすべてのビーチにライフガードがいるわけではありません。海水浴場として開設されていないビーチは、引き潮、大きな波、浅い砂州、海洋動物などの危険なポイントがあり、監視員が不在で安全が確保されていないため、泳ぐことはお勧めできません。
「Beachsafe」のウェブサイトやアプリで、パトロールがある最寄りのビーチを調べておきましょう。
ライフセーバーの旗の見方
出典元:SLSA Beachsafe
- 赤と黄色の旗:この旗が立っている区間は安全に遊泳可能
- 赤の旗:危険・遊泳禁止
- 黄色の旗:注意・危険な状態
- 緑の旗:この旗が立っている場所は安全に遊泳可能
オーストラリアの引き潮(Rip Currents/Rips)
出典元:Surf Life Saving
オーストラリアのほとんどのビーチで見られる危険なポイントが、引き潮です。海水が外洋に向かって流れ出すポイントに発生する速い流れのことで、水難事故の中でも遊泳中に引き潮に巻き込まれて溺れる人が多くいます。
深くて暗い色の海水で、砕波が少ないか全くないポイントや、波が砕けた先の水面が茶色く変色して泡が立っているようなポイント、ゴミや漂流物が浮遊しているポイントは、引き潮のおそれがあるので注意が必要です。
水難事故に遭わないために注意すること
出典元:Surf Life Saving
オーストラリアのビーチで安全に過ごすためには、ライフセーバーの赤と黄色の旗の間を泳ぐのが最善です。
- 1人での海水浴やレクリエーションは避ける。
- 遊泳区域以外の水域で遊泳しない。
- 赤と黄色の旗の区間から出て遊泳しない。
- 遊泳中はライフセーバーの指示に従う。
- 遊泳中は他人に抱きつくなどの遊泳上危険な行為をしない。
- 夜間の遊泳は避ける。
- 監視員のいないビーチで泳がない。
- 子ども一人で水遊びをさせない。
- 幼児や泳げない学童には必ずライフジャケットを着用させ、保護者が付き添い目を離さないようにする。
- 魚とりや釣りでは転落などのおそれがある場所に、水泳や水遊びでは藻が繁茂している場合。
- 水温の変化や水流の激しい場所、深みのある場所などに近づかない。
- 事前に気象情報を把握し、風雨・落雷といった天候不良時や河川の増水のおそれが高い時には、海や河川で過ごすことは控える。
- 海では天候の変化や波の高さに注意を払い、離岸流や高波が発生するおそれ が高い時には海に入らない。
- 体調が悪い日や飲酒した後などは、水に入らない。
- 日差しを避け、十分な水分補給をする。
また、オーストラリアには遠浅のビーチが多く、知らないまま勢いよく潜ると海底に身体をぶつける恐れがあります。そうした浅瀬のビーチには「Shallow Water(浅瀬に注意)」のサインがあるはずです。
海辺には通常、ライフセーバーの旗の他にも「Large Waves(高波注意)」や「Marin Stingers(クラゲ注意)」など、黄色の背景を使ったシンボルで海の危険を知らせてくれるサインが立てられています。海辺に着いたら、まずは周辺にあるサインを確認するようにしましょう。
ビーチで知っておくべき標識は以下で確認しておきましょう。
溺れた時の対処
万が一、引き潮に巻き込まれて岸から引き離されそうになった場合のために、以下の対処法を覚えておきましょう。
- 落ち着いて、パニックにならない。
- 「力を抜けば人は浮く」ことを覚えておく。
- 仰向けに浮いて待つ(引き潮に乗って岸に戻れる可能性もあるため)。
- 助けを呼び、注意を引く。
- 救助されるまで待つ。
- 引き波に逆らって泳ごうとしない。
- 泳ぎが得意で疲れていないなら、岸と平行に泳ぐか、砕ける波に向かって泳ぐ。
水の比重は1ですが、人の比重は0.98。人間は空気を吸うと、体全体の2%だけ水に浮くようにできています。仰向けに浮く「背浮き」をすると顔がその2%になり、その状態で浮いて助けを待つことが可能です。この時、体が縦になっていると水面から出る2%は頭になり、鼻と口が水没してしまいます。
「背浮き」のコツは、顎を上げて体を反らして空を見て、ヘソを突き出すこと。うまく浮けない場合、星の形のように足を開き、両手を頭上に広げて大の字になるとバランスが取れて浮かびやすくなります。
溺れている人を見かけた時の対処
オーストラリアでは、毎年およそ5人が救助活動中に命を落としています。救助の場面では、常に自分の身の安全が最優先であることを覚えておきましょう。
溺れた人を見たときは、見失わないように注意しつつ、海水浴場の監視員、ライフセーバーやまわりの人などに助けを求めてください。溺れた人を助けるために、水に入るのは危険です。
まずは自分の安全を確保し、身の回りの浮くもので浮力を確保させます。ライフジャケットや浮き輪などのフロート遊具、紐を結んだ大きめのペットボトルやクーラーボックスなどでも浮力を確保することができます。ペットボトルは、中に水を少し入れると狙った位置に投げやすくなります。
近くにAED(自動対外式除細動器)がある場合、溺れた人が救助された時のために、すぐ使える状態にしておきます。
溺れている人を救出したら、まずは反応を確認し、楽な姿勢に寝かせて毛布やバスタオルなどで全身を包んで、できるだけ風に当たらない状態を作ります。
人が溺れているサインには以下のようなものがあります。
- 後ろから波をかぶり、前髪が顔にかかりながらも浜に向かおうとしている。
- 頭が後ろに反り、手で梯子を上るような動作。
- 浮いたり沈んだりしながら、水面に顔を出して空気を吸おうとしている。
- 顔を水面に出そうと、両手で水を叩くような動作。
- かろうじて水をかいて、息を吸おうと水面をもがくような動作。