犯罪被害時の行動
家庭内暴力・性的暴力にあった場合の対処
オーストラリアでは家庭内・家族内暴力(Family and Domestic Violence:FDV)が大きな社会問題となっており、全国的にDV行為に対する対策が強化されつつあります。
DVに起因する死亡者数は急増しており、2022年は35人、2023年は58人、2024年は上半期で女性54人、子ども10人が亡くなっています。
DVというと殴ったり蹴ったりなどの暴行はもちろんですが、身体的暴力のほかに加えて、言葉の暴力、精神的・経済的な虐待(生活費を渡さないなど)、性的な暴力、ハラスメント、ストーカー行為やリベンジ(復讐)ポルノも含まれます。
また、近年に問題視されるようになったのは、テクノロジーによる虐待(Technology-Facilitated Abuse:TFA)です。これは、携帯電話やデジタル技術を利用したあらゆる形態の虐待を包括しています。
他に大きな問題として、オーストラリアでは多くの女性が性被害に遭っています。性的暴力には、人の意思に反して身体的な力・脅迫・強要を用いて行われる性的な行為を指し、その未遂も含まれます。また、望まない性的な発言、押しつけがましい性的な質問、性的な性質のあるハラスメントを含む場合もあります。
家庭内暴力(DV)・家族内暴力(FV)
オーストラリアでは家庭内・家族内暴力の被害が増加しています。専門家によると、潜在的なDV被害も多く、パートナー等からの仕返しを恐れて被害申告をためらっているケースの他、そもそも自分がDV被害に遭っていると気づいていないケースもあると指摘しています。
DVの暴行は被害者に直接向けられるものに限らず、被害者の所持品を破壊したり、ペットを虐待したりするもの、「何もできないくせに」など人格を否定するなどの精神的暴力、十分な生活費を渡さないなどの経済的暴力、友人とのつきあいや外出を制限するなどの社会的暴力なども含みます。
自分がDV被害を受けている、またはその恐れがあると感じたらすぐに警察に相談・通報してください。
各州のLegal Aid、Community Legal Centre、Women’s Legal Serviceなどでは、無料の法律情報やアドバイスも提供されています。
また、加害者にインターネットや携帯電話の使用まで監視され、助けを求められない被害者も多くいると懸念されています。身近でDVの被害に遭遇している心配がある場合、周りが手を差し伸べましょう。
DVに関する記事は、JAMS.TVウェブサイト上の法律家のブログでも紹介されているので、あわせてご参照ください。
内部リンク
内部リンク
内部リンク
家庭内暴力(DV)・家族内暴力(FV)にあった場合の対処
身の危険を感じたら躊躇せず「000」に電話して警察を呼んでください。緊急時でなくとも、最寄りの警察か、日本国大使館・総領事館になるべく早く相談してください。大使館・総領事館では被害者の個人情報を厳格に管理し、被害者の人権にも最大限配慮して対応してもらえます。 英語での被害申告に不安がある場合、警察で日本語での聴取が可能な担当者の手配を依頼したり、警察など公的機関で利用できる無料通訳サービスを案内することもできます。
また、子どもがDVに遭っていると思われる場合、地元当局への報告義務がある可能性があります。お住まいの州や子どもとの関係性によって異なるため、わからない場合は「1800Respect」に問い合わせてください。
- 電話による届出・相談「PoliceLink」(全豪共通):131 444
- Family Violence Law Help(日本語あり)
- 24時間対応ダイヤルとオンラインチャットがあるカウンセリング「1800 RESPECT」
- 経済的な援助「Centrelink」
- キッズヘルプライン(5〜25歳までの若者のための相談先):1800 55 1800
- ACT:(02) 6280 0900
- NSW州:1800 656 463
- QLD州:1800 811 811
- VIC州:1800 015 188
- WA州:女性 1800 007 339 または (08) 9223 1188、男性 1800 000 599 または (08) 9223 1199
- SA州:1800 800 098
- TAS州:1800 633 937、1800 608 122
- NT準州:(08) 8945 1388
性的暴力(SV)
近年、海外において日本人女性が性的暴行の被害に遭う事例が増えています。特に若者が、滞在先でのふれあいを大切にしようとする気持ちから見知らぬ人の誘いを親切と理解して、自宅に誘われたり、飲食物をすすめられたりして犯罪の被害に遭った例は少なくありません。見知らぬ人から親しげに声をかけられても、安易に信用することは禁物です。
また、外出先で出会った見知らぬ相手から飲み物をはじめ、クッキー、チョコレート、飴、くだものなどの食べ物を勧められたら注意が必要です。オーストラリアでは薬物問題が深刻化しており、クラブなどでは女性に薬物を混入したドリンクを飲ませて性犯罪に及ぶという「ドリンクスパイク」が社会的に問題となっています。
さらに、ワーキングホリデーの仕事先ファームの宿舎などで飲酒し、酩酊状態で意識朦朧となったところを性被害に遭う事案も多数報告されています。性被害に遭っても、事案の性質から被害の申告を躊躇したり、英語での被害申告に不安を感じて二の足を踏む方もいることが想定されるため、実際の被害はもっと多い可能性があります。
オーストラリアの性犯罪の特徴には、知人や友人が加害者となるケースが多いことが挙げられます。甘言につられて住宅や室内に連れ込まれ性的被害に遭わないよう、知り合いに対してでも、拒絶する際には笑顔を見せず、はっきり「No」と意思表示するようにしてください。そして、過度の飲酒や深夜帯における知人宅訪問は十分に注意してください。
取り返しのつかない被害を避けるため、海外に渡航・滞在する際には、渡航先に関わらず以下に留意し、自らの安全確保に努めてください。
- 単独行動や夜間の不要な外出は避ける。
- 過度な肌の露出を避ける。
- 知らない人に勧められた飲食物を安易に口にしない。
- 過度な飲酒は控える。
- 家のドアをノックされても、ドアを開ける場合には防犯チェーンを掛けたまま相手を確認する。
- ドミトリーやシェアハウスなど複数人と暮らしている場合は、必ず施錠し、就寝前なども必ず戸締まりを確認する。
- ホテルのスタッフや、水道・電気の修理人らしき人でも、頼んだ覚えがなければフロントに確認する。
- 知らない人や出会って間もない人の車に乗らない。
- 少しでも不審に思ったときははっきりと断る。
- 友人・同僚・勤務先関係者など信頼できそうに思える相手であっても、嫌なことははっきりと意思表示をする。
- 中身が分からない飲食物は口に入れない。
- 身の危険を感じたら躊躇せず「000」に電話して警察を呼ぶ。
性的暴力(SV)にあった場合の対処
不幸にも被害者となってしまった場合、速やかに最寄りの警察か、日本国大使館・総領事館に相談してください。大使館・総領事館では被害者の個人情報を厳格に管理し、被害者の人権にも最大限配慮して対応してもらえます。
英語での被害申告に不安がある場合、警察で日本語での聴取が可能な担当者の手配を依頼したり、警察など公的機関で利用できる無料通訳サービスを案内することもできます。
自分のことを恥ずかしがったり、責めたりしないでください。性的暴行は決して暴行を受けた人のせいではありません。
可能であれば、病院・診療所・各州にあるRape-crisis Centreなどの医療機関を受診してください。スタッフが適切な医療処置をしてくれ、カウンセリングを受けられるところもあります。