病気・怪我をした際の行動
メンタルが落ち込んだ際の対処
住み慣れた環境から異国の地で暮らすと、体にも心にも大きな変化が伴います。日常生活における習慣や食事、言語、気候、文化などさまざまな違いを経験するなかで、これまで日本では経験したことのない不安や不調を感じることは珍しくありません。
しかし、心身の不調はそのままにしておくとオーストラリア生活にも支障をきたすほど、重篤化することもあります。オーストラリア滞在中に体や心が危険信号を発していないか、不安を覚えたらまずはセルフチェックしてみましょう。
海外生活における心の不調
海外生活は、日本にいる時よりもストレスが多くかかっていると言われています。人間関係の問題、言語の壁、異文化での疎外感など、自分の心身が苦しくなったり、落ち込んでしまったり、そのストレスになっていることは何かに気づくことが大切です。
オーストラリアでは、ストレスがあった時に心理カウンセリングを利用することは一般的で、自分の悩みが深刻になる前に早めに相談するメンタルケアにも積極的です。
そのメンタルケアにもさまざまな方法があります。大事なのは自分の体質をよく理解し、自分特有の気分に対して、どこにいても予防的に生活できるようになること。事実を受け止め、客観的に自分の悩みや思考の傾向から、解決方法を導いてよりよい人生を送ることが大切です。
以下の項目に該当する場合、心に負担がかかっている可能性が高いため、メンタルケアや心理カウンセリングの受診を検討することをお勧めします。
- イライラして怒りっぽくなった。
- 不安でソワソワし、物事に集中できなくなった。
- 気持ちがゆううつで、何事も興味がわかず億劫になった。
- 周りの視線が気になるようになった。
- 寝つきが悪くなったり、夜中や明け方に目覚めるようになった。
- 頭痛や腰痛、肩こりなど体の調子が悪くなった。
- お酒を飲む量が異常に増えた。
- 体重の減少または増加が激しい。
上記のような状態も、自分だけでは「大丈夫」と思って見過ごしてしまうことが多いものです。周囲の人で「大丈夫かな」と思ったら、以下の項目にも注意してみてください。
- 欠勤/欠席、遅刻、早退が増えた。
- 仕事や勉強の能率が下がり、ミスが目立つようになった。
- 周囲の人との付き合いを避けるようになった。
- 周囲の人が自分の悪口や噂を言っていると話すなど、周囲の人の言動を気にするようになった。
- 服装や身だしなみが乱れ、不潔になった。または極端に清潔になった。
- お風呂や歯磨きなど、毎日できていたことが億劫になった。
厚生労働省では、働く方のためのストレスセルフチェックも提供されています。
気分が落ち込んだ際の対処
心身のエネルギーが減っている時は、無理をせず“何もしない”ことも大切です。以下のように日常の中のちょっとしたセルフケアでも、心の不調を和らげてくれます。
- 海外での食生活は自分が思っているよりも偏食になるため、食べ慣れている和食を取り入れるなど、栄養バランスの良い食事を心がける。
- 不安や眠れない時にお酒に頼ることは避ける。
- 一日15分程度は体を動かして緊張をほぐす。
- 就寝前の喫煙、飲酒、カフェイン摂取は避ける。
- 朝起きたら日光を浴びて体を起こす。
- 働きすぎたり、無理を続けないようにする。
- 好きな音楽を聴く、ヨガをする、深呼吸をするなどして、ゆっくりと気持ちを落ち着かせる。
- 家族との時間、友人とのおしゃべり、スポーツ、散歩、読書、ショッピングなど自分にとって楽しいことや自分のために使える時間を作る。
- 海外では気づくと孤立していることも珍しくないため、周囲との交流を持つように心がける。
- 日本にいる家族や友人と一日の出来事について話したり、電話やメールをする。
- 困ったら周囲の人に相談して適切なサポートを受ける。
- 身近にいる人に相談しにくい時は、専門家に相談する。
オーストラリアのメンタルケア
オーストラリアでは多くの医療専門家が、メンタルヘルスサービスを提供しています。メンタルヘルスについて助けが必要な場合は、まずかかりつけのGP(一般開業医)に相談するのがよいでしょう。GPでもメンタルヘルスについて相談することができ、必要であれば、継続的な治療や、臨床心理士(Psychologist)、精神科医(Psychiatrist)、その他のメンタルヘルスサービスへの紹介もしてくれます。
精神科医は医師としての訓練を受けており、薬を処方することができます。臨床心理士は医師ではないので、薬を処方することはできません。しかし、どちらもさまざまなタイプのカウンセリングや心理療法を用いることができ、患者にとってより良い考え方や行動を身につける手助けをしてくれます。不安な時には自分だけで抱え込まず、メンタルヘルスケアのプロフェッショナルへ相談してみましょう。
精神科医へ受診すべき症状
- 症状が重い。
- 日常生活に支障をきたしている。
- 症状が長期間続いている、または繰り返し再発している。
- 他の治療法では効果が見られない。
- 自傷行為を行ったり、自殺を考えるようになった。
臨床心理士に相談する必要があるかもしれない状況
- 不安、抑うつ、ストレスの多い生活を送っている。
- 精神的健康に関する問題を抱えている。
- 人生において困難を感じ、対処するためのサポートが必要だと感じている。
- 自分の精神的健康について、専門家による評価を受けたいと考えている。
- 人間関係や職場・家庭での問題からくるストレスで、日常的に気持ちが重く、精神的に不安定になりやすい。
心理カウンセリングは、ワーキングホリデーの海外旅行保険やOSHC(学生強制保険)でも気軽に受けられます。
GP作成の紹介状があれば、メディケア(国民健康保険)やOSHC(学生保険)などの保険によって、医療資格のあるカウンセリングは年20回までカバーされます。また、クリニックによっては海外旅行保険やプライベート医療保険も適用されます。
永住者はGP作成のメンタルプランがあれば、メディケア(国民健康保険)で、診療費は全額カバーされます。
日本とオーストラリアの違いが原因で悩んでいる場合や、英語での相談に不安がある場合は、日本語で話を聞いてくれて気軽に相談できる、日本語対応の心理カウンセリングもあるので、GPにも相談しづらい場合は、日本語対応の心理カウンセリングを利用するのもよいでしょう。
メンタルケア関連サービスの連絡先
緊急時のメンタルヘルスの対処
自分や周囲の人が危機的状況にあり、今すぐ助けが必要な場合は、「000」に電話してください。また、ライフライン「13 11 14」に電話することもできます。どちらも年中無休24時間対応です。
オーストラリアには、精神疾患を持つ人々やその家族、介護者のための支援や教育を提供している組織や、うつ病、不安症、自殺願望などでサポートが必要な人のために、ライフラインが24時間体制で危機管理カウンセリングを提供しています。
ライフライン
電話:13 11 14
SMS:0477 13 11 14
その他のメンタルサービス
- Suicide Call Back Service
- Beyond Blue
- MindSpot(緊急時以外のアドバイス提供)
- Head to Health(緊急時以外のアドバイス提供)
- メンタルケアのヘルプライン一覧
- 外務省 海外安全ホームページ「孤独・孤立及びそれに付随する問題でお悩みの方へ」
- 厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」
- 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」
周りの人が長く落ち込んでいる場合の対処
自分が精神的な問題を抱えていることを認めるのは難しいことです。相手が自分の気持ちを打ち明けることに抵抗があったり、助けを求めることに前向きでない場合は、次のようなサポート方法があります。
- 心配し、支えていることを伝える。
- 尊敬と尊厳をもって接する。
- 相手の気持ちについて話す。
- かかりつけのGPなど、本人が安心できる人に相談すれば気持ちが落ち着くかもしれないと勧める。
- 援助を申し出て、信頼できる相談相手を見つけ、予約や面談の手配をする。
- 医療専門家から得た情報を共有する。
- eメンタルヘルス情報源にアクセスするための情報を提供する。
相手の精神状態が悪化したり、自傷他害の危険があると思われる場合は、専門家に相談してください。
また、家族、友人、介護者・支援者もまた、身近な人が精神衛生上の問題を経験することによって影響を受けます。介護者・支援者となる自分も、ストレス下にある可能性が高いことを忘れないでください。介護の一部は、自分自身をケアすることです。セルフケアの時間をとることで、身体的な消耗を防ぎ、精神疾患を持つ人のケアに伴う考えや感情、ストレスに対処することができます。