その他の緊急時の行動

住むところがなくなってしまった場合

近年のオーストラリアでは、需要に対して供給できる住まいが不足し、空室率の低さから家賃が高騰しています。特にパンデミック以降、大都市では住まい不足と家賃の高騰が長く続いている状態です。

不動産価格も高騰していることから、日本に比べて家の売買が盛んで、シェアハウスで複数人が滞在している物件でも、オーナーがその物件を売却することは珍しくありません。物件の売却決定後に「物件を売ることになったから退去してほしい」という旨を伝えられるケースもあります。

また、住まいの契約期間が切れるタイミングで、次の入居者が決まっていたり、オーナーの都合などから契約を更新することが叶わない場合は、その物件から退去しなければなりません。

前述のように空室率が低いため、住まい探しは簡単ではなく、退去期間までの間に次の住まいが見つからない可能性もあります。また、オーストラリアへ来たばかりのワーキングホリデーメーカーや留学生など短期滞在ビザの場合、アパートのような賃貸契約の審査が通ることはまれなため、シェアハウスに住むことが一般的です。シェアハウスを借りる際は、予約金・敷金詐欺、許可なしに部屋の又貸しなどのトラブルも多いので、シェアハウス探しには注意が必要です。

自分の所有している物件ではない虚偽の物件情報を掲載し、現地に住むオーナーを装って海外送金させる詐欺の手口もあります。物件の内見をしないまま支払いを済ませると、その後オーナーと音信不通になり、実際に現地に行ってみると物件が存在しなかったり、すべて虚偽で別の人が住んでいるというケースも報告されています。

住むところを失わないための注意

通常、オーナーがテナントに退去を希望する場合、解約通知(Termination Notice)を出すことが義務付けられています。オーナーがテナントに退去してほしい理由を言う必要はありませんが、解約通知を出す時期にはルールがあります。

  1. 有期契約(Fixed Term Agreement):終了日の30日前までに通知しなければならない。テナント側が借家契約を守らなかった場合、裁判所に提訴された場合を除く。
  2. 定期契約(Ongoing Periodic Agreement):退去希望日の90日前までに通知しなければならない。テナント側が借家契約を守らなかった場合は14日前まで。
  3. 終了命令(Termination Order):解約通知書に記載された日に退去しない場合、オーナーは審判所に訴えることが可能。

特に理由なく退去を求められた場合、上記のように有期契約(Fixed-term)なら30日前、定期契約(Periodic)なら90日前のテナントへの通知が必要です。テナントが14日間以上の家賃を不払いしている場合、オーナーはテナントに退去を求めることができますが、解約通知を受けても支払うべき家賃をすべて支払うか、合意した返済計画を立てれば退去する必要はありません。テナントの正当な権利を主張して、オーナーと交渉することも重要です。

現在の契約期間の終了が迫っている場合は、なるべく早めにオーナーやヘッドテナントに更新に関して確認し、仮に更新ができない場合であっても、次の住まいを探すための期間を十分に確保できるように心がけましょう。

友人間や口コミなどで間借りする場合にも、オーナー側と部屋を借りる際にできる限りの合意を一筆取り付けておくと良いでしょう。 書面がないと万が一のトラブルの際にも、立場が弱く不利になりがちです。シェアハウスの契約時の書類は、すべて大事に保管しておきましょう。

Tenant、Sub-tenant、Lodger、Boarderなど、自分が法的どのような立場にあり、どのような法的保護を受けられるか、賃借人組合「Tenants’ Union」に、テナントの権利が記されているので確認しておくことをおすすめします。

また、詐欺などにより実際の該当物件に行ってみると住むところがなかった、という事態を避けるために、特別な理由がない限り物件のインスペクションをしてから契約するようにしましょう。

物件のインスペクションができない場合、以下のようなことがないか注意しましょう。

  • 立地条件が良いにもかかわらず相場より家賃が安い。
  • オーナーやヘッドテナントが直接会うことを拒む(海外に在住しているなど)。
  • 早く現金を振り込まなければ他の人に貸すと送金を急かす。
  • オーナーとのやり取りは主にメールのみ。
  • 物件のインスペクションよりも先に現金を振り込むように誘導する。

住まいのトラブルに関して、自分では手に負えなくなってしまった場合やオーナーと代理で交渉してもらいたい場合は、各エリアの相談センターや弁護士に相談してみましょう。

組合は、各州の住宅賃貸法に基づいてローカル機関から電話で法的アドバイスを提供しています。各地域によって問い合わせ先やサービス内容が違うので、ホームページから自分の地域を検索してみましょう。テナント向けの無料の法律相談も受け付けています。

住むところがなくなった際の対処

オーストラリアには、ホームレスになる可能性のある人、またはホームレスになってしまった人、急遽一時的な宿泊施設が必要な人のための緊急宿泊施設(Urgent Accommodation)があります。

緊急に宿泊施設が必要な場合は、最寄りのコミュニティ司法省(Department of Communities and Justice:DCJ)に連絡してください。DCJは、危機的状況にある人々や緊急住宅を提供する州の主要な機関です。

以下のような人々は施設を利用することができます。

  • ホームレスまたは家を失う恐れのある人
  • 社会住宅や手頃な賃貸住宅を必要とする低所得者
  • アボリジニおよびトレス海峡諸島
  • 家庭内暴力を受けている人

 

他にも、シェルター、食料、健康、その他の重要な支援サービスを見つけるためのオンライン検索ツール「Ask Izzy」があります。質問に答えると今いる地域に最も適したホームレス支援サービスを探してくれます。無料かつ匿名で利用でき、個人情報は収集されません。住まいをなくして途方に暮れてしまったら、遠慮せずにツールを利用してみましょう。

または、オーストラリア全土にある民間の慈善団体でも、ホームレスの人々を支援しています。緊急・暫定的な宿泊施設として、長期的なコミュニティハウジングとして、下宿や食料を提供している他、さまざまな支援サービスを受けることができます。

弁護士が必要な場合には、弁護士協会などの公的機関から専門分野の弁護士を紹介してもらうことをお勧めします。日本と異なり、オーストラリアの弁護士は専門分野に分かれて活動しています。

また、Legal Aid、Community Legal Centreなどの弁護士センターでは、刑事・民事にかかわらず、無料もしくは廉価で相談に応じているので、弁護士に相談してみるのもいいでしょう。

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