オーストラリアで私は上着を着て「寒い寒い」と口ぐせのように言っているのに、友人たちのインスタグラムは半袖を着て「暑い暑い」とつぶやいている。日本と真逆になっているオーストラリアの季節と暦のギャップにいまだに慣れない……。
8月後半に入り、少しずつ日照時間が長くなっていることで春の兆しをやっと感じるようになって思うのは、桜が見たいということ。日本では当たり前のように見ていた桜。日本から離れてみて、より春=桜が自分の中に深く根付いていたことに気がついた。
オーストラリアに来て間もないころ、バス停で話しかけてくれたオーストラリア人のおばあさんから、「日本って桜がすごく有名でしょう? でもジャカランタも美しいし、日本でいう桜みたいなものよ。恋しくなったらジャカランタを見ればいいよ!」と言ってくれたけれど、でも、桜が恋しい。青空の中に映える淡いピンクが美しい、あの景色が見たい。桜を見ないと春を感じることができない!
どうにも春=桜のイメージがついてしまっているので、オーストラリアで桜が見れないか調べてみた。日本語で「桜 オーストラリア」と調べると、意外とオーストラリアにも桜を鑑賞できる場所がいくつかあることにまず驚いた。
また、出店や和太鼓演奏など日本に関するイベントを桜を見ながら堪能できる桜まつりも毎年開催されている。「桜を見ながら日本のお祭り気分も味わえるなんて…気になる!」ということで桜まつりを調べてみた。NSW州で特に有名な桜まつりだと、
・Sydney Cherry Blossom Festival(Auburn Botanic Gardensで毎年8月下旬に開催)
・Sakura Matsuri Festival(Cowra Japanese Gardenで毎年9月下旬に開催)
があるそう。「これは行かなきゃ!」と思ったのも束の間、今年は新型コロナウイルスで、どちらも開催中止になったと注意書きが。残念ではあるけれど、今の状況下、居住者や訪問者の安全面を考慮しての決断とのこと…。
ただし、「Cowra Japanese Garden」では、今年は桜まつりの開催はないが、桜の鑑賞は可能。園内の桜は見ごろの9月下旬から10月上旬まで鑑賞でき、日本にて剪定技術を学んだ専任の庭師が管理する日本庭園も見どころのひとつ。桜だけではなく、施設全体で「日本の和」を堪能できるスポット。
Cowraと日本は第二次世界大戦時におきたカウラ事件をきっかけに深い関わりがあり、「Cowra Japanese Garden」から日本兵が収容されていた捕虜収容所の跡地を結ぶ道には日本から取り寄せた桜が植えられ桜並木(Sakura Avenue)になっている。この跡地の近くにある「Japanese War Cemetery(日本人戦没者墓地)」は、1963年にオーストラリア政府から日本に割譲され現在も日本の領土となっている場所として有名。
オーストラリアと日本の友好の証として造られたということで、より興味がわいた。オーストラリアで見る初めての桜はここにしよう。見ごろの9月下旬が待ち遠しい……。
【Cowra Japanese Garden】
場所:Ken Nakajima Place, Cowra NSW 2794
入場料:15ドル~20ドル
ウェブ:https://www.cowragarden.com.au
フェイスブック:https://www.facebook.com/CowraJapaneseGarden/
このほかNSW州の桜の鑑賞スポットとして、ブルーマウンテンズがあるLeuraが有名とのこと。メインストリートには500mほどの八重桜の並木があり、八重桜やしだれ桜が見られる「Everglades Historic House & Gardens」でも9月下旬から中旬までが見ごろで桜を見ることができる。※毎年10月上旬に開催される「Leura Gardens Festival」については開催中止。詳しくはこちら
桜まつりは次回に持ち越しになったけれど、日本から離れていても桜が見れること、日本の文化がオーストラリアの地で味わうことができることが知ることができてよかった。オーストラリアで「やりたいこと」が増えると、もっとオーストラリアを好きになれるから。次回は桜まつりを楽しみながら、桜を鑑賞できるといいなあ。
最後にオーストラリアにきて1週間目のときにバス停で話しかけてくれたおばあさん。私のつたない英語力に合わせてゆっくり話してくれて、色々と教えてくれてありがとう。桜の代わりにとはいかなかったけれど、ジャカランタの季節になったらきれいな薄紫色の景色を見に行くね。
(文/吉田友理)