クリスマスが近づくと誰もが自然と友人や家族へのプレゼントについてあれこれ考えるものです。わたしも日本に住むシドニー出身の友人宛に何か送りたいと考え、オーストラリアゆかりのものをプレゼントすることに決めました。これは、キャンベラ出身の友人が聞かせてくれた彼女の体験がきっかけになりました。
彼女が以前にインドを旅行中、道ばたで突然のホームシックになったことがあるそうです。今まで一度も感じなかったのに、と不思議に思いながらホテルに戻ったところで、ハタと理由に気づきました。ユーカリの木があったからだそうです。どこにあるか意識して見ていなくても、そのユーカリの香りや葉ずれの音が、彼女をホームシックにしたのでした。
彼女が言うには、身近にあるほんの些細なものがシドニーを思い出させてくれるとのこと。そこで、贈りものはシドニーにある植物を使ったものにしようと即決定。もともとクラフトに興味があったこともあり、オーストラリア固有の植物のリースや押し花、テラリウムはどうだろうと思いつき、さっそく準備開始! 偶然、ハウスメイトは大学構内の緑地管理などを担当するガーデナー。彼女とボタニック・ガーデンへ行き、どんな種類の花がシドニーにあるのか教えてもらったり、ネイティブ・フラワーを安く調達するために早朝のフラワー・マーケットへ行き、ひと束4ドルで購入したりしました。
ところでここで問題が…。常識的な方はすでに気づいているかと思いますが、栽培用・消費用の植物を輸入する場合、検疫の対象になります。つまり、簡単に送ることができないのです。こんな周知の事実を、どういうわけかすっかり忘れていました…というわけで、路線を変更してユーカリとティーツリーのハンドクリームやレモンマートルのハーブティーなど、シドニーの香りを送ることに落ち着きました。それでも一応、オーストラリアの植物からできているものなので、なんとか当初の目的は達成されたことになると無理やり自分を納得させたりして…。
色々と妥協しましたが…、準備の過程でオーストラリアの植物に詳しくなり、土と緑にあふれているシドニーを歩くことが、前よりずっと楽しくなりました。どこにでもある土や植物も各国固有のものだと考えると、今日いくら世界を近くに感じていても、自分の足で行かない限り得られないことはじつに多いと改めて思います。
結局日本に送ることをやめた植物は、手持ちの本にブーゲンビリア、ジャカランダ、メラルーカ(ティーツリー)を挟んで押し花にしました。
ネイティブ・フラワーは、バルコニーに2週間ほど逆さ吊りにしておいたあとリースにして、準備を手伝ってくれたハウスメイトたちにプレゼントしました。テラリウムも年内に作りたいところ。
オーストラリアの植物は美しく多様です。ボタニック・ガーデンはもちろん、サバーブのマーケットではバンクシアのアロマ・ポットやユーカリの種子のポプリを販売していたり、植物を使ったクラフトのワークショップもよく催されています。
皆さんもオーストラリアにいるうちに、こうした場所へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
文:武田彩愛(編集部)