オーストラリアで生活していると、ビーチはもちろん、裸足のままスーパーマーケットやガソリンスタンドに出入りしていたり、バスや電車に乗りこんできたりする人々をよく見かけます。犬の散歩、散髪、パーティーなどなど、地元の人々は裸足でどこへでもお出かけ。“人口の約85%がビーチから50km圏内に住んでいるオーストラリア独自のビーチ文化”によるものとも耳にしますが、ビーチから離れていても裸足。理由を尋ねてみると、当たり前のような顔をして「裸足の方が気持ちいい」「ちょっとそこまで行くだけなのに面倒」「暑い日に靴を履く意味が分からない」と返されます。
あるオーストラリアの友人は、日本に滞在していたときですら隙をみては裸足の状態でした。裸足禁止のレストランをあきらめたことが何度かあるし、誰かのお宅にお邪魔すると、「あの人、靴を忘れていったよ」と連絡がくるそう。足の裏に何か刺さっても、靴を履く気はさらさらありません。そんな友人は子どものころ、よく靴を失くして親に怒られていて、そのうち靴を履くこと自体しなくなったようです。
要するに、裸足の理由は人によってさまざま。単に面倒だから裸足かもしれないし、ハイヒールを履きなれていなくて脱いだのかもしれないし、雨の日に靴が汚れるからという人も実際にいました。友人のように、靴を失くしたくなくて最初から裸足の人だって他にいるかも。
冬の日にダウンコートを着ている人もいればノースリーブの人もいて、雨の日にやたらと大きい傘を差している人もいればビショ濡れで平気そうな人もいる……、そんな光景はオーストラリアじゃ珍しくもありません。同じように、裸足で歩いている人を見ても眉をひそめる人がどこにもいない、”自分は自分、他人は他人”という民族性が大きいのだろうなと思います。「どうして裸足なの?」と訊くと当たり前の顔をされるのも、裸足どうこうより「どうして他人がしてること気にするの?」ということかなと。「自分が心地いいなら理由はいらない」というのが、私の考える”オーストラリア人が裸足で出歩く理由”なのでした。
文:武田彩愛(編集部)