先日久しぶりに日本に帰省しました。1年ぶりの日本だったにもかかわらず、「帰国する」という感覚はなく、まるで「海外旅行」しているかのような日本滞在でした。皆さんも、こんな経験ありませんか?
①耐えられない蒸し暑さ
日本は殺人的な蒸し暑さです。その日の大阪の日中気温は36℃。表に出るなり汗ダラダラで溶けそうなのに、まわりを行き交う人々が涼しい顔をして長袖のスーツや制服を着ていたことが不思議でなりません。特に女性は化粧も崩れていない、汗も流れていない…。本当に同じ生き物なのか疑問。
地元の友人に「暑すぎない?」と訊いたら「毎日暑いよ」と返ってきましたが、まったく暑そうに見えない顔で言うのでにわかに信じられません。東京以東の暑さはまだマシでした。
②人口密度と民族比率
もともと田舎育ちなので都会の人の多さに慣れません。オーストラリア出身で現在日本在住の友人、N君曰く「オーストラリアの方がスペースはあるよね。東京でひとりになるのがとむずかしい」とのこと。彼は日本の一人暮らしの部屋が狭いと嘆き、犬を飼えないと嘆き、近くにビーチがないと嘆いていました。
空港を出るともうほとんど日本語しか耳に入ってこないのも不思議な気分でした。シドニーで歩いていると常にさまざまな言語を耳にしますよね。
ファッションの流行が目に見えるのも日本ならではでしょうか。水着や裸足で出歩いている人は見かけません。また、日本に慣れたN君は天気予報を見てビニール傘を持参。もう何カ月も傘を差した覚えのない私が旅行で傘を持っているはずもなく、予報通りの雨の際はN君の傘に助けられました
③交通もろもろ
電車やバスの時間の正確さには感動します。新幹線がホームを通り過ぎる速さにはビビりました。1年前まで住んでいたはずなのに、複雑な東京の地下鉄路線を思い出すのに時間がかかるという。
車内が静かなのでソワソワ。前述のN君に車内で普通に話しかけたら「今ちょっと電車の中なんで後にして」と一蹴されました。まさかの立場逆転です。
道路で横断歩道を渡っていると、車にひかれかけました。これはオーストラリアの友人も危険だと声を大にして言っていましたが、オーストラリアと違って日本では車が優先されているようです。歩道を歩いていると自転車にベルを鳴らされる体験も久々。
地下鉄ではバリアフリーが少なく不便を感じたことも。シドニーの公共交通機関で重い荷物を運ぶときは手助けし合いますが、日本では視線を感じるだけ。ちょっとさびしい……。
④大衆酒場と食文化
オーストラリアもジュースよりワインが安いくらい大衆酒場が身近な存在ですが、日本は“アルコールを飲まなければいけない”場所があることが少し特殊かと。お昼にグループで浅草のホッピー通りへ行くと、各自必ずアルコールを注文しないと入れない店も見かけました。
いわゆる“飲み会”の席で年長者にお酒を注ぐ習慣とは別に、「女性から男性に注ぐ」という慣習を説明されたN君の友人のオーストラリア人女性は、難色を示していました。後から様子を訊くと、「もちろんグラスが空になったら注いであげるのは自然なことだし、あの場ではN君やあなたの印象を悪くしたくなくてビールを注いだけれど、ここがもしシドニーなら私は一言物申していたと思う」とのこと。
ベジタリアンのメニューがある店も増えてきましたが、事前に探しておかないとパッとは見つけられません。グループにアルコールが飲めない人とペスクタリアンの人がいたので、全員が楽しめるという点では、オーストラリアの方が選択肢が多いと思いました。
⑤タバコの規制
日本を訪問したオーストラリアの友人たちから、よく文句を聞く日本の喫煙事情。怒られる勢いで「いかにタバコが人体に害であるか」を熱弁されたこともありました。分煙や喫煙室なんて仕切りもなく屋内禁煙のオーストラリアからすると、日本の喫煙率にはびっくりのようです。私も久々に同じ室内でタバコを吸われることにびっくり。
⑥コンビニが便利
シドニーの物価に慣れていると、コンビニのおにぎりが安くて涙が出そうになります。アイスや惣菜パンや野菜ジュースも欲しくなります。トイレもあって借りられるし、気軽に便利な文字通りコンビニエンス。さらに日本はどこも店の営業時間が長く、危険が少ないので、夜ぶらぶらするにはもってこいです。反面、野菜と果物は高いですね。加えて食品を含めた加工品の原料には、「これ何?」というような人工物がやたらと含まれているように思えます……。
⑦社寺と蝉、生活に根付くもの
帰省中は、浅草寺や民間信仰を始めとした多くの社寺に立ち寄りました。友人と歩きながら自然に社寺を詣り、おみくじを引き、夕方の縁日を眺め、露店で食べ歩き、川辺で風鈴や虫の合唱を楽しみ、銭湯に行きました。浴衣の人たちが下駄をカラコロ鳴らしながら歩いていました。こういう日本の風物詩が大好きです。
日暮れになるとヒグラシが鳴き始めるのですが、「カナカナ鳴いてるの、ヒグラシだよ」とニュージーランドの友人に教えても「どれ? セミの声は同じに聞こえる」と言われて困りました。「アレ、今鳴いた、アレ!」とがんばって説明しようとしたのですが、「わかんない」と笑われて終わり。それでも、あの声を聞くと「日本の夏だな〜」と思います。
以上、自分の帰省中に改めて感じた日本とオーストラリアにおけるちょっとした感覚や習慣の違いでした!
文:武田彩愛(編集部)